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「Yチェア」として親しまれ、北欧家具のシンボリックな存在となっているCH24。
1949年、ハンス J.ウェグナーが〈CARL HANSEN & SØN/カール・ハンセン&サン〉のためにデザインして以来、世界中の人々から愛されています。
今回は〈CARL HANSEN & SØN〉のマスターピース、「Yチェア」の魅力をご紹介します。
1949年、無名のウェグナーとともに革新的な椅子を製作
1908年、家具職人のカール・ハンセンは、デンマークで小さな工房をスタート。当初から妥協のないクラフトマンシップへのこだわり、そして新しいデザインを追求してやまない優れたデザイナーとの協働。この2つを信条として家具を製作していました。
やがて1949年、2代目のホルガー・ハンセンは、まだ無名だったウェグナーに椅子の製作を依頼。これをきっかけにCH24(Yチェア)、CH25、CH20 エルボーチェア、CH88など、数々のウェグナーの名作が〈CARL HANSEN & SØN〉から世に送り出されることになりました。
以来〈CARL HANSEN & SØN〉は、「ウェグナー作品を最も多く手がける家具メーカー」として広く知られています。
シンプルで美しいフォルム。人々が「Yチェア」に見せられる理由
言うまでもなく、〈CARL HANSEN & SØN〉のマスターピースは「Yチェア」。
世界で最も売れている椅子の一つです。発売以来70年近く続くロングセラーで、とくに日本での人気には目を見張るものが。その理由は、独特のデザインにあります。
背もたれはそのままアームへ続き、しなやかな曲線を描きます。シンプルで柔らかなフォルムが印象的。
和のインテリアにも、モダンなインテリアにも、またコンクリート打ち放しにも。有機的なたたずまいで、どのような空間にもさりげなく溶け込みます。
今でこそベーシックなイメージのある「Yチェア」ですが、発売当時は多くの人々がその斬新なデザインに衝撃を受けたそうです。
ストレスのない座り心地をつくる、クラフトマンシップ
「Yチェア」を愛用する人々は、「使ってから本当のよさがわかる」と言います。
シートはゆったりと広く、腰を下ろすとかすかに体が沈み込むも、しっかりとしたホールド感が。背もたれは背中の軸をさりげなく支え、アームに手を添えると、手先は自然とテーブルの上に落ち着く。長時間座っていてもストレスを感じることのないよう、緻密に設計されていることがわかります。
この座り心地を実現するのが、クラフトマンシップです。
「Yチェア」には100以上の製作工程があり、そのほとんどが職人の手しごとによるもの。
職人は削る・組み立てるはもちろん、120mのペーパーコードを丁寧に張り、シートを手作業で仕上げていきます。ペーパーコードは専属の職人が張り替えてくれますが、状況によっては30年張り替えなしで使い続けられることも。
「Yチェア」ならではの”座り心地”と”耐久性”は、職人の手しごとによって実現されているのです。
まとめ
「Yチェア」は長く使い続けるうちに、シートは座る人の体になじみ、脚やアームなどの色合いが深まり、全体的に重厚感が増していきます。このように「育てていく」ことも愉しみの一つ。
椅子だけに限らず、照明や建築などマスターピース(名作)として世に残る作品には、共通点があります。
シンプルで美しく、心地よい。そして、住まいに豊かさをもたらす。
これは、私たちが暮らしに求める普遍的なテーマです。「一生使う家具」を求めるなら、20年、30年先も愛し続けることができる「Yチェア」を検討してみてはいかがでしょう。一脚置くだけで、部屋の空気を変えてくれるはずです。
創業100年を超えるデンマークの家具メーカー。ハンス・J・ウェグナーをはじめ、名だたる巨匠のアイコニックな名作を製作。東京・大阪にフラッグシップ ストアがあります。
<著者>中野 瀬里乃
大学卒業後、出版社・フリーライターを経て、2013年リノベーション会社CRAFTへ入社。自社HPやオウンドメディアにてリノベーション・不動産・建築・インテリア関連の事例紹介やコラムを多数執筆。