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「遠くから眺めても美しく、近くで見ても期待を裏切らない。そして扉を開けた時にも美しい。アムスタイルらしさは、これに尽きると思います」
ピアノ塗装の鏡面の深み、ディテール、扉を開けた時の美しさ。シンプルがゆえに、洗練されたシルエットが際立つアムスタイル(amstyle)のキッチン。オーダーキッチンメーカーとして、独自のセオリーを貫き通してきました。
今回は、アムスタイルの創業者である清水社長にお話をうかがいます。
「たたずまいが美しく、扉を開けても美しい」
アムスタイルを代表する鏡面キッチン。まわりの照明や家具をおだやかに投影しながら、滑らかな光沢を放ちます。眺めていると、グランドピアノに対峙したような高揚感が。
「”アムスタイルの鏡面は映り込みが深くてやわらかい”と言われています。とくに黒い鏡面はピアノと同じ塗装技術を採用し、美しさと高級感を追求しましたから、お客さまが見てもすぐに違いがわかる」と清水社長。
そこで”アムスタイルらしさ”について問いかけると、清水社長ははっきりとした口調でこう答えてくれました。
たたずまいが美しいこと。
扉を開けた時も美しいこと。
「遠くから眺めても美しく、近くで見ても期待を裏切らない。そして扉を開けた時にも美しい。アムスタイルらしさは、これに尽きると思います。多少コストがかかっても妥協はしません」
「”ふた手間”が仕上がりを大きく左右する」
白いピアノ塗装は変色しやすいため、耐久性の高い塗料をオリジナルで開発。白はどちらかと言えば背景になる控えめな色彩。にもかかわらず、アムスタイルの白いキッチンは静かなる存在感を放ちます。実は塗料の塗り方にこそ、アムスタイル流のこだわりがあるのです。
「まず基材の表面の平滑度を高めるための下地処理の後、しっかりと硬化するまで一ヶ月ほど寝かせておく。さらに中塗りの段階でサンダー掛けとバフ磨きを行います。この”ふた手間”が、仕上がりを大きく左右するんです」
鏡面塗装の映り込みの深さ・やわらかさは、まわりの空気を変えてしまうほど。たとえば窓辺にレイアウトすると、窓の景色が流れ込んでくるような透明感が広がります。
「置き家具をつくることができる職人じゃなければ」
先述したように、”開けたときの美しさ”もアムスタイルを語るうえで欠かせません。
「通常なら内側はコストが削られやすい部分です。しかし内側こそキッチンの真価があらわれる。私たちは絶対に手を抜きません。扉に合わせてキャビネットの材質や色をセレクトし、化粧板の貼り継ぎの位置にも徹底的にこだわっています。
またハンドルをはじめとした”目に見えるパーツ”はすべて自社製作。提携している工場の大半が、過去にキッチンの製造実績のない会社です。なぜかと言うと、職人にキッチン製作のクセがないほうがいいから。置き家具をきちんとつくることができる職人じゃないと、アムスタイルのキッチンを製作できません」(清水社長)
設計の意図を正確に伝えるため、かなりの精緻な図面を描いているそうです。
「図面に細かく描き込むと、職人もきちんと応えてくれます。創業当時からのお付き合いの方も多く、みなさんと一緒に成長してきたような気持ちです」
「動作部のパーツは、最高ランクしか使わない」
またレールやヒンジなどの動作部のパーツはヨーロッパの製品を使用し、その中でも『最高ランクしか使わない』という点もアムスタイルのこだわり。お客さまの予算にかかわらず、これを標準仕様としています。
たとえばスタインウェイのような最高級ピアノが、コストダウンのために部品のランクを落とすことはまずありません。その時点でもはやブランドは損なわれてしまうからです。アムスタイルも同様、ビス一本でも妥協してしまったら、それはアムスタイルのキッチンではない。清水社長の言葉からは、そんなプライドが感じられました。
インタビュー後編に続きます。
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創業1993年。独自のスタイルを発信し続け、業界内でも異彩を放つキッチンメーカー。東京・代官山と福岡・赤坂の2カ所にショール―ムも。
<著者>中野 瀬里乃
大学卒業後、出版社・フリーライターを経て、2013年リノベーション会社CRAFTへ入社。自社HPやオウンドメディアにてリノベーション・不動産・建築・インテリア関連の事例紹介やコラムを多数執筆。