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TIME & STYLE(タイム アンド スタイル)を”家具屋さん”と言ってしまうと、どこかしっくりこない気がします。
自社工場で丸太を製材し、オーダーに合わせて木材を選び、家具に仕上げていく。その過程において手作業は8割。家具屋さんであると同時に、ものづくりの会社なのです。
「日本的な佇まいの家具を、職人の手しごとでつくりたい」
洗練されたシルエットを生み出す『手しごと』へのこだわりを、創業者である吉田龍太郎社長にうかがいました。
「日本の伝統的なものづくりをリファインすること」
ーーーTIME & STYLEさんの家具には、工芸品のような趣がありますね。シンプルで空間に溶け込むけれど、近づくほど際立つ。とにかくディテールがキレイです。
吉田社長
ありがとうございます。僕たちが意識しているのは、日本の伝統的なものづくりをリファインすることです。本質を変えずに、現代の生活に合うように少しだけ手を加えていく。
『日本の伝統的なものづくりや技術を見つめ直したい』というのが、僕らのものづくりのテーマです。
「伝統を、現実的に『使いたい』と思ってもらえるカタチに変えていく」
ーーーデザインではなく、”伝統技術ありき”で、ものづくりをなさっているんですね。漆器やガラスなどのテーブルウェアも、日本全国各地の伝統技術を持つ職人と一緒につくられているとか。
吉田社長
はい。僕やスタッフが地方で出会った職人と一緒に仕事をしています。たとえばこの行灯は、那須楮(なすこうぞ)からつくられた手すきの美濃和紙を使っています。機械すきの和紙のほうがパリっと張れるんですが、20年30年するとボロボロになってくる。一方で、那須楮の和紙は200年300年経っても保つことができます。
日本のモノは、時間が経つほど”よさ”があらわれてきます。先ほど”リファインする”と言いましたが、本質を受け継いでいかなければ次につながりません。建前の伝承ではなく、現実的に「使いたい」と思ってもらえるカタチに変えていくこと。これが『日本にしかできないモノづくり』になっていくのではないでしょうか。
「”職人の感覚で仕上げていく”という意味では、8割が手作業」
ーーー木工の家具は北海道旭川の自社工場で製作されているそうですが、手作業はどのくらいの割合ですか?
吉田社長
”職人の感覚で仕上げていく”という意味では8割が手作業です。
ーーー8割…。 そこまで手作業でやる必要があるんですか?
吉田社長
もちろん荒取りは機械を使いますが、面取りはかならず手作業です。機械で面取りをすると、刃物があったったところに微妙なラインができてしまうんですね。普通ならここに軽くペーパーをあてて終わります。
でも、僕らはどうにかR(曲線)とフラットな面を有機的につなぎたい。だから手作業で広範囲の傾斜をつけて、Rにつなげているんです
ーーーたしかにテーブルやソファのフレームを触ると、Rが奥まで続いていることがわかります。手のひらにぴったりと添うような…。
吉田社長
日本のモノのよさは、手仕事の仕上げにあります。世界中で家具の機械化が進む今、「どこで差が出るの?」といったら仕上げなんですね。
僕たちは日本的なたたずまいを、職人の手しごとでつくっています。昔ながらのシンプルなものづくりをしているだけなんですが。でもこれが、TIME & STYLEの一番の特徴です。
「僕らの家具づくりは、とてもアナログです」
ーーー『木は一本一本にクセがある』と聞いたことがあります。工場の職人さんは、その木のクセによって使い分けたりしているのでしょうか?
吉田社長
ええ。昔の宮大工さんは「木を買わずして山を買え」といって、東西南北のどの傾斜に立っていた木のクセまで考えて使っていたそうです。僕らも木のクセや木目方向などを知ったうえで「どう使うか」を考える。これが品質にも大きく影響してくるんです。
だから、オーダーが入ったら、ひとりのお客さまのために製材します。職人がお客さまのご注文情報を見て「この椅子ならこの材料でこの寸法で、この木目で…」と木取りをしていくんですね。僕らの家具づくりはとてもアナログなんですよ。
「丸太ごと買って製材すれば、一本を100%使えるんじゃないか、と」
ーーーところで、わざわざ丸太から購入して、自社で製材されているのはどうしてですか?
吉田社長
去年までは製材所から大きな板材を買っていました。でも製材品は”木の厚み”がある程度決まっています。たとえば厚い天板が欲しくても、木取りできない。その場合は、木材を接ぎ合わせて接着することになっていました。
しかし考えてみると、TIME & STYLEの工場は山林が豊かな北海道にある。そこで『丸太ごと買って製材すれば、一本を100%使えるんじゃないか』と思ったんです。今では、北海土産のナラやアカマツを丸太ごと購入し、節の硬い部分は天板裏の補強材に、皮はバイオマス燃料として薪のかわりに使っています。
今流通している木材は「上手く使っても(丸太の)3割」と言われているんです。ほとんどは消却されるか、チップ材になる。丸太ごと買えばムダがなくなるし、自分たちが欲しい寸法を効率的に採ることができますから。
「将来は、丸太の購入~家具製作まで自社でできるようになりたい」
ーーー正直、TIME & STYLEさんのスタイリッシュさからは想像できないお話です。もっと工業的につくられているのかと思っていました。昔ながらの手しごとにこだわるだけでなく、新しいことにもチャレンジされていますね。
吉田社長
ええ。最近『バイオ乾燥』を取り入れました。通常は丸太を製材して、土場で1~2年放置して暴れさせ、樹液を出す。そこから高温の人工乾燥機に一ヶ月ほど入れ、含水率を7%くらいまでに落とします。でもこれだと、木の細胞や組織が壊れやすくなるというデメリットがありました。
理想は10年くらいかけて天然乾燥させることですが、そんなに待っていられない。そこで『バイオ乾燥』を使ってみることにしました。木でつくられた乾燥室で、木と木の間に貝殻の石灰質を入れて40℃程の低温をキープする。そうすると、天然乾燥に近い状態で含水率を落とせます。
まだはじめたばかりで、実験的なところもあります。でも1~2年後には、今乾燥させている材料をTIME&STYLEの家具に使うことができるはず。将来は、丸太の購入~家具製作まで自社でできるようになりたいですね。
〈後編に続きます〉
後編では、TIME & STYLEのデザインのこだわり、スタイルを変えることへの葛藤についてお話してくださいました。
*そのほかの社長インタビューは、こちらからご覧ください
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熟練した職人たちが「手しごと」で家具を製作。洗練されたモダンなデザインからは想像できないほど、昔ながらのものづくりにこだわっています。
<著者>中野 瀬里乃
大学卒業後、出版社・フリーライターを経て、2013年リノベーション会社CRAFTへ入社。自社HPやオウンドメディアにてリノベーション・不動産・建築・インテリア関連の事例紹介やコラムを多数執筆。