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賃貸マンションは築年数が古いほど、借り手がつきにくくなってきます。
一方では、一棟まるごとリノベーションしたマンションが人気です。ここ数年でも三菱地所レジデンスや三井不動産リアルティ、野村不動産の一棟リノベーションマンションが話題となりました。
つまり入居者にとって、そのマンションが魅力的であれば、新築もリノベーションマンションも関係ないということ。
「リノベーションは新築と同じ価値がある」と考えて間違いないでしょう。
古くなった賃貸マンションは、どこの会社に相談する? 大きく3つのタイプに
「古い賃貸マンションを親から相続してしまった」「空室が目立ってきた」。老朽化したマンションに悩むオーナーさんは、世の中にたくさんいます。
そんな悩めるオーナーさんが最初に知るべき、3つの選択肢をご紹介します。
〈1〉買取専門会社に売却する
賃貸マンションを買取専門会社に売却する方法です。オーナーさんが直接売却交渉をするケースが多いようです。買取専門会社はオーナーさんから買い取った後、マンションをリノベーションし、分譲販売もしくは賃貸に出します。「売って終わり」なので、オーナーさんのご負担はほとんどなし。急いで売却したい場合に有利です。
*代表的な会社/リビタ 三菱地所レジデンス 東急電鉄
〈2〉仲介会社に売却を依頼する
仲介会社に依頼し、賃貸マンションの買い手を見つけてもらう方法です。買い手が見つかり次第、売却。仲介会社からのアドバイスにより、キレイにリノベーションする場合もあります。売値は市場価格に左右されますが、交渉次第では〈1〉よりも高値で売れることも。「売却に時間がかかりやすい」というデメリットも知っておきましょう。
*代表的な会社/ブルーアセットパートナーズ
〈3〉リノベーションで資産価値を高める
賃貸マンションを売却することなく、オーナーさん所有のまま一棟リノベーションする方法です。リノベーションは大掛かりになるため費用はかかりますが、周辺物件と差別化できることから、高い家賃設定が可能に。長期保有することで、確実に収益を確保できます。またリノベーションは建替え費用の約1/2と、収益的にも断然有利です。
*代表的な会社/CRAFTの一棟リフォーム
一棟リノベーションのメリットとデメリット
続いて、マンション一棟リノベーションの〈メリット〉と〈デメリット〉をまとめました。しっかりとメリットとデメリットを理解した上で、「売却するか」「建て替えるか」「一棟リノベーションするか」を検討しましょう。
〈一棟リノベーションのメリット〉
●建て替えの約1/2のコスト
鉄骨造やRC造のマンションの建て替えは、解体費用を含めると億を超えます。一方、リノベーションなら約半分の費用で新築のように。コスト面から、リノベーションを選択するオーナーさんは多いようです。
●空室率の改善
外観からエントランス、室内まですべてが新築のように魅力的に変わります。築年数が古くても、見た目の印象がよいため、借り手から選ばれやすくなります。
●グレードアップ
セキュリティシステムや宅配ボックス、大きな収納、対面キッチンなど、現代のライフスタイルにフィットする設備を導入。全体的なグレードアップを図れます。
●賃料アップ
リノベーション前に比べ、賃料アップを期待できます。周辺の新築賃貸物件と同じレベルの賃料設定が可能。〈デザイン・間取り・設備〉で競合物件と明確に差別化できていれば、内見して「ちょっと家賃オーバーだけど、ここで暮らしたい」という方は多くいます。
●ターゲットを絞りやすい
「女性に借りてほしい」「若い夫婦に暮らしてほしい」「しっかりお勤めしている人がいい」。ターゲットのニーズに合わせて間取りや仕様・設備を決めるため、オーナーさんが理想とする入居者を集めやすくなります。
●耐震性や劣化、防水などの見直し
劣化によるクラックや雨漏りなど建物全体を見直すため、お子さまやお孫さまに受け継ぐことが可能です。新耐震基準以前の建物の場合は、耐震性のチェックを行い、必要があれば構造補強を行います。
●相続税対策に
ボロボロで収益性の低いマンションを相続し、困っているお子さまは少なくありません。一棟リノベーションによって収益性を高めておけば、お子さまは、そのまま収益を得られます。(リノベーションしても、固定資産税評価額・相続税評価は据え置きです)
さらに、リノベーションで現金をキャッシュアウトするため相続税が下がります。相続税対策としての即効性は確実。リノベーションで使った現金は、相続したお子さまが家賃収益から回収します。
〈一棟リノベーションのデメリット〉
●それなりのコストがかかる
建て替えの約1/2のコストとはいえ、やはり一棟マンションリノベーションには費用がかかります。こだわればこだわるほど費用が上昇するため、〈既存を活かす〉〈やりたいことに優先順位をつける〉などしてコストバランスを図りましょう。
●それなりの労力もかかる
こちらも建て替えほどではないものの、立ち退き交渉をしたり、リノベーションの打ち合わせをしたりとそれなりの労力がかかります。一方で「自分の持っているマンションが変わっていくのがたのしい」というオーナーさんも多いようです。
●リノベーションたからといって安泰ではない
一棟リノベーションしても、ターゲットとマッチしていなければ期待したほど効果がないことも。たとえば単身者が多いエリアなのに、ファミリー向けのマンションに一棟リノベーションしても借り手はつきません。リノベーション会社としっかりとターゲティングをしましょう。
また掃除やメンテナンスなど管理体制にも力を入れ、長く暮らしてもらえるようにオーナーさんが努力することが大切です。
賃貸マンション一棟リノベーションの事例1
賃貸マンションの老朽化が進み、メンテナンス費用が負担になっていたオーナーさん。建て替えを検討していたものの、コスト面を比較した結果、リノベーションを選びました。
外観からエントランス、室内すべてを一新。ターゲットは若いファミリーやカップル。オープンキッチンを導入したり、白を基調としたナチュラルなデザインにするなど、奥さまの好みに配慮しています。
エントランスホールは、できるだけ広さを確保しました。ベージュのタイルと木目の格子を組み合わせ、帰宅のたびにラグジュアリー気分になるようなデザインに。女性やお子さまに安心な防犯カメラ、共働きに人気の宅配ボックスとった設備も導入しています。
賃貸広告を出してすぐに申し込みが相次ぎ、満室が続いているそうです。
【関連記事】
〈一棟丸ごとリノベーション〉オーナーさんの声 vol.2
■物件データ■
エリア:横浜市
総戸数:13戸→8戸
築年数:32年
構造:鉄骨ALC造
間取り:1LDK
リノベーション総面積:550m2
各部屋平米数:46~53m2
リノベーション価格:9000万円
賃料:11万円前後
ターゲット:カップル・ファミリー(2~3人)
一棟リフォーム・リノベーションデザイン事例 #00424
こちらの物件の詳細をご覧いただけます。
賃貸マンション一棟リノベーションの事例2
お母さまから相続した元社員寮のビル。最上階はオーナーさんのお住まいに、下の階を賃貸に一棟リノベーションしました。
「私たちも暮らしたくなるような賃貸にしたい」「よい方に借りてほしい」というご希望から、基本ターゲットはファミリーやカップルに。1世帯あたり40m2前後の広さを確保し、カフェ風インテリアでまとめています。
クラシカルな框ドアや、人気のアイランドキッチンを採用。腰壁にはグレーのモザイクタイルを貼ってアクセントにしています。キッチンの背面にバスルームと納戸をまとめ、家事がしやすそうな印象に。デザイン性と家事動線に配慮した間取りとなっています。
こちらも募集後、1階のテナントスペースを含めてすぐに満室となりました。
【関連記事】
〈一棟丸ごとリノベーション〉オーナーさんの声 vol.3
■物件データ■
総戸数(賃貸部のみ):8戸→4戸 築年数:30年
構造:RC(鉄筋コンクリート)造
間取り:1LDK(賃貸部分)
リノベーション総面積:370m2
各部屋平米数:39.5~45m2
リノベーション価格:7000万円
賃料:10万円前後 ターゲット:単身・カップル・夫婦(1〜2人)
エリア:豊島区
一棟リフォーム・リノベーションデザイン事例 #00456
こちらの物件の詳細をご覧いただけます。
賃貸マンション一棟リノベーションの事例3
リノベーションを前提に、築35年の社宅を購入したオーナーさん。地元の不動産会社に協力を得て「1LDK希望」「ピクチャーレールが欲しい」といったエリアのニーズを調査し、プランにとりいれました。
1LDKながらも、引き戸を開放するとワンルームのような開放感が。普段は広い空間でゆったりと過ごし、パートナーが先に休むときや、来客時などは引き戸を閉めて独立させることが可能です。ほかにも、寝室とひと続きのWICや食事ができるカウンターキッチンなど、若い世代のライフスタイルに合わせたプランをご提案しました。
こちらもリノベーションして10年以上経過していますが、入居者が転勤などで退去してもすぐに埋まる人気物件です。
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〈一棟丸ごとリノベーション〉オーナーさんの声 vol.1
■物件データ■
エリア:大田区
総戸数:9戸 (リノベーションは8戸)
築年数:35年
構造:RC(鉄筋コンクリート)造
間取り:1DK~1LDK
リフォーム総面積:315m2
各部屋平米数:35m2
リフォーム価格:6000万円
賃料:10~11万円
ターゲット:単身・カップル・夫婦(1~2人)
一棟リフォーム・リノベーションデザイン事例 #00246
こちらの物件の詳細をご覧いただけます。
まとめ
一棟リノベーション会社の見つけ方をご紹介しました。
一棟リノベーション会社は、大きく〈買取再販型〉〈収益重視型〉〈プラン・デザイン重視型〉の3つに分かれます。「仕上がりはそれなりでいいから、とにかく収益を重視したい」のか、「管理が楽しくなるような魅力的な賃貸マンションにしたいのか」。それにより依頼すべき会社が違ってきます。たとえば、「素敵なプランを提案して欲しい」と思うなら、設計力のあるリノベーション会社に依頼すべきです。
いずれにしても通常のリノベーションとは異なり、一棟まるごとリノベーションは金額が大きくなってきます。こだわりのある賃貸住宅をご希望のオーナー様は、CRAFTへご相談ください。資金計画も含めてサポートいたします。
<著者>CRAFT 編集部
一級建築士・二級建築士・インテリアコーディネーター・一級建築施工管理技士・二級建築施工管理技士・宅地建物取引士が在籍。さまざまな知識を持つプロフェッショナル集団が、リノベーションや物件購入についてわかりやすく解説します。