目次
ご両親から相続した、築32年のマンションをリノベーションしたIさん。入居者への立ち退き交渉、30年続けて来たケーキ屋さんの閉店。2年前から計画し、じっくりと無理なく進めてきたそうです。
街のシンボルとなるような、モダンなマンションの一室でお話をうかがいました。
新築よりもコストを抑えられるから、リノベーションを選択
CRAFT(以下C):前回は、ちょうど1階のケーキ屋さん閉店2日前にお邪魔させていだきました。地元の方でとても賑わって、Iさんもお忙しそうでしたね。こちらをリノベーションすることになったきっかけを教えていただけますか。
Iさん:両親が建てたのですが、築32年で老朽化していました。「店をそろそろ閉めようかな」と思っていたこともあり、「リノベーションか、新築か」を考えるようになったんです。
でも調べてみると、新築は思っていた以上にコストがかかることがわかりました。それなら予算内で済むリノベーションでキレイにしよう、と。
「暮らしやすいだろうな」というアイデアが、プランに詰まっていた
C:Iさんのように、一棟マンションの建て替え費用を知ってリノベーションを選ばれるオーナーさんは多いです。
Iさん:そうなんですね。それでクラフトさんと、大手1社に見積りをとりました。でも、クラフトさんのほうが細かいところまで考え抜いたプランを提案してくれたんですよね。エントランスの広さや、WICや水まわりなど。「暮らしやすいだろうな」というアイデアが、プランに詰まっていました。
C:図面からも、快適さが伝わってきたんですね。
Iさん:ええ。それからクラフトさんは「要望を聞こう」という姿勢を感じられたんです。私の希望をムリだと決めつけるのではなく「こういう方法ならできますよ」と。そういう点が信頼できました。
「安いから」借りたいのではなく、「魅力的だから」借りたくなる物件に
C:もともと11部屋あったところを6部屋にしているため、住戸あたりの広さは、かなり広くなりましたね。
Iさん:単身者やご夫婦の方、両方をターゲットとして計画していただきました。1LDKなんですが、寝室の引き戸をオープンにするとワンルームのように開放的です。ほかにも寝室続きのWICや、バス・トイレ別など、若い方のライフスタイルに合わせた間取りに変えました。
C:キッチンコンロは3口もあり、女性にポイントが高いですね。こうした気配りのある仕様は、どのように決めていかれたんですか?
Iさん:クラフトさんのご提案もありますが、前の入居者の方を見ていて気がついた点もあります。
ある日、用があって入居者の男性のお部屋を尋ねたんです。するとその方はちょうど料理中で、フライパンを床に置いていたんですね。「これは危ないな」と。単身者でも「料理をするならキッチンは大きい方がいい」ということがわかりました。
C:実際に入居者の方の暮らしぶりをご覧になって、気がつかれたことがあるんですね。エントランスにはオートロックと宅配ボックスもありますし、一人暮らしの女性や、共働きのご夫婦に喜ばれるのではないでしょうか。
Iさん:家賃が「安いから」借りたいのではなく、多少高くても「魅力的だから」借りたくなる物件にしたかったんです。ですから、設備関係はできるだけ妥協しませんでした。
若い世代を想定し、明るく楽しい雰囲気にデザイン
C:リノベーションされて、全体的な印象が大きく変わりました。とくにエントランスはかなり広くなりましたね。白いタイルがさわやかで、以前のまま残したガラスブロックも素敵に調和しています。
デザインについては、どのようなご希望がありましたか?
Iさん:若い世代を想定していましたから、「明るくて楽しい雰囲気がいいのではないかな」と思いました。私自身の好みとは少し違うので、クラフトのデザイナーさんに相談しながら決めました。
C:すごく気になったのが、玄関前のアクセントウォールです。モザイクタイルで部屋番号が表記されていて、フロアごとに色が違うんですよね。しかも、お部屋の出窓のカウンターのタイルと、色がそろっています。
Iさん:最初は白いタイルを提案していただいたんですが、話が進んで、カラーを入れることにしたんです。
少しコストアップになるけれど、外出時にいつも目にする場所ですし、「入居者の方に楽しんでいただけたらいいな」と。
C:一方で、外観はダークグレーでクールな印象です。周辺に同じ色合いのビルがないので、目立ちますね。
Iさん:外観もエントランスもあまりにも変わったので、ご近所の方に「新築したの?」と言われています(笑)。「リノベーションだよ」と言うと、とても驚かれますね。
立ち退き交渉は、相手の立場に立ってじっくりと進めていった
C:ちなみにリノベーションをする前じゃ、11部屋すべて満室だったそうですね。〈立ち退き交渉〉はオーナー様が抱えるお悩みの一つですが…どのように進められましたか?
Iさん:「2年後にリノベーションする」と決めてから、第三者を通じてすぐに入居者の方にお伝えしました。とにかく退去していただくことが第一優先なので、提示された条件は受け入れるようにしました。1部屋でも残っていると、工事ができませんから。
C:入居者の方の立場に立って、時間をかけて交渉を進められたんですね。
Iさん:ええ。誰でも急に「出て行ってください」と言われたら困りますからね。なかには20年以上もお住まいの方もいましたから。顔を合わせるたびに申し訳なく思いました。お店が終わった後、ケーキを持って行ったりもしていましたね。
余裕を持って早めに動き出したこともあり、もめることなくご退去いただけました。
できる・できないは別として、希望はすべて伝えることが大切
C:ケーキ屋さんの閉店後はしばらくのんびり過ごされていたようですが。これからは、新しいマンションのオーナー様として忙しくなりますね。先ほど、熱心に草むしりをなさってましたね。なんというか、「管理をたのしんでいらっしゃる」という印象でした。
Iさん:掃除や不具合のチェックなどは私がやる予定です。すぐ近くに住んでいるので、こまめに来て綺麗な状態をキープし、気持ちよく暮らしていただきたいと思っています。
C:クラフトで賃貸マンションを一棟リフォームしてみて、いかがでしたか?
Iさん:「クラフトさんとは相性がよかった」と感じています。最初に会った段階で、営業さんもデザイナーさんも「話しやすそうだな」と思いました。なんでも気軽に言えちゃうんですよね。
それに、希望を聞きつつ、コストバランスを図ってくださったので助かりました。スタートは「できるだけ予算を抑えたい」と思うんですが、やっていくと「あれもこれも」となってコストが上がってしまうんです。
C:どんどん理想が膨らんでしまうものなんですね。
Iさん:はい。クラフトさんはポイントは受け入れながらも、ほどよくストップをかけてくれました。できる・できないは別として、希望はすべて伝えることが大切だと思います。イメージしていた姿と違うものになったら、がっかりしますからね。
インタビュー後記
家賃は、近隣の新築物件と同じ価格帯で設定。「この金額で借りてもらえるのかな」という気持ちも、正直なところあったそうです。そんな Iさんの心配をよそに、募集をスタートして間もなく入居者が決まり、今では満室に。
「入居者の方に、明るく楽しく過ごしてもらいたい」
そうしたIさんの想いは、住まいの”こだわり”として明確に現れています。結果として、それらは借り手に「豊かな暮らし」をイメージさせ、新築物件に負けないくらいの魅力を持つことになりました。
■物件データ■
エリア:杉並区
総戸数:11戸→6戸
築年数:32年
構造:RC(鉄筋コンクリート)造
間取り:1LDK+W
リノベーション総面積:353㎡
ターゲット:単身・夫婦・カップル(1~2人)
※こちらの詳しいプランは、「デザインリフォーム・リノベーション事例 #16027」よりご覧ください。
<著者>中野 瀬里乃
大学卒業後、出版社・フリーライターを経て、2013年リノベーション会社CRAFTへ入社。自社HPやオウンドメディアにてリノベーション・不動産・建築・インテリア関連の事例紹介やコラムを多数執筆。