物件データ
リフォームを前提に、1人暮らしにちょうど良い広さの中古マンションを購入したDさん。「こういった雰囲気が好き」とデザイナーに見せてくれたのは、開口枠や巾木、窓枠に木材が使われた、古い洋館のようなお部屋の写真でした。そこで、ご希望の開口枠や巾木はもちろん、クロゼットの扉、建具をアンティーク塗装。表面に木目模様や凹凸、色むらが現れた焦茶の木は、空間全体をノスタルジックな雰囲気で包みます。天井は仕上げ材を撤去し、コンクリート躯体の表面にある凹凸を活かしながら白く塗装しました。フローリングは一枚ずつ手作業で削り込まれたオークをヘリンボーン張りに。自然な経年を演出しています。
BEFORE写真
素材使いを工夫してクラシカルな雰囲気に。
水まわりのレイアウト変更で使い心地もアップ
「キッチンを見せたくない」というご要望があったことから、キッチンを移動してスペースを確保し、間仕切り壁を設けました。既存は洗面室・浴室・洗濯機置き場が一緒になっていましたが、洗面室と浴室を分け、洗濯機置き場を洗面室に移動。荷物が少なかったことから、収納は必要最低限に留めています。開口枠や巾木、クロゼットの扉、建具はアンティーク塗装で統一。焦茶の色むらや木目模様の凹凸は、実際に経年したような味わい深さです。LDKは天井を上げて躯体をあらわし、直塗装。床はスクラッチ加工を施したオークのヘリンボーン張りで、クラシカルな空気感をつくりました。
リビング・ダイニング
ご希望は、古い洋館のようなクラシカルで趣のある佇まい。Dさんからいただいたイメージ写真のような茶色い開口枠を設けるため、リビング・ダイニングの入り口に壁を新設し、開口部を木でフレーミング。表面に木目の凹凸や茶色の濃淡を残しながら塗装し、古い額縁のような趣に加工したことがポイントです。居室の入り口にふさわしい、クラシカルで厳かな雰囲気に。
リビング・ダイニング
天井材を撤去し、天井高をアップしました。躯体に直塗白く塗装し、コンクリートの表面の凹凸を見せ、自然の経年変化をさりげなく空間に取り込んでいます。クロゼットは海外の既製品を使ってコストダウンしつつ、扉をアンティーク塗装で色むらを出し、紅葉色のような仙徳色のツマミを取り付けて趣ある表情に。窓から注ぐ自然光は白い壁や天井に拡散し、室内にほどよい明るさをもたらします。
リビング・ダイニング
オークをヘリンボーン張りにしたフローリングは、クラシカルな印象。ほどよく使い込まれた風合いを出すため、一枚いちまい手作業で削り込まれています。窓際にグリーンを飾ることをご希望だったため、バルコニー沿いには清掃性の高いタイルを採用。同じ空間にそれぞれ個性的な床を張っていますが、テイストを揃えることで統一感を出しつつ、ほどよいリズムを生み出しています。
キッチン
もともとオープンなキッチンは、「隠したい」というご要望があったため、移動して間仕切り壁を設けました。スタイリッシュなコンパクトキッチンを設置し、正面の壁は白いタイルを目地なし突付けにしてさわやかに。キッチンもその他の空間とテイストを揃えるため、照明は丸いブラケットライトを採用。厚めのガラスから優しい光が注ぎ、天井の裸電球とともにレトロな空気をつくっています。
洗面室・浴室
壁はキッチンと同じタイルをダークグレーの目地で貼ることで、印象を大きく変えました。馬目地に貼ったタイルのリズム感が強調され、壁自体が洗面室・浴室のアクセントに。タイルの半端が出ないよう、スペースの小さな敷居部分は芋目地に。据え置き型の浴槽はタイルのレトロな雰囲気とマッチし、古い映画に出てきそうなバスルームに仕上がっています。
エントランス
右手のWCのドアは、クロゼットと同様に輸入の既製品にアンティーク塗装を施してコストバランスを図りました。茶色の色むらや真鍮のドアノブ、ゆらぎのあるガラスはクラシカルな空間づくりに役立っています。床は窓際と同じタイル。一枚いちまい色合いやサイズ、形が異なるベージュのタイルは、抽象画のようなあたたかさで見る人の心を和ませてくれます。
素材を使い分け、懐かしさのある空間に
イメージする空間に近づけるため、素材の使い方や配置にこだわりました。例えばリビング・ダイニングのフローリングは、オークの無垢材にハンドメイドでスクラッチ加工が施され、ほどよく色落ちした柔らかな質感。ヘリンボーン張りにすることでよりクラシカルに。エントランスと窓際には色合いや形、サイズの異なるタイルをデザイン貼りにし、心地よいリズムをつくりました。壁に同じタイルを使った洗面室・浴室は、目地の違いで全く異なる雰囲気を演出しています。
フルリフォームで快適性をアップ
築年数の古いマンションほど、現代のライフスタイルに合わないことが多くあります。実際こちらのお住まいも約半世紀以上の年月が経っていため、天井が低く、洗面室・浴室・洗濯機置き場が一カ所にまとめられているなど、全体的に使い勝手が悪い印象でした。そこで天井高を上げ、洗面室と浴室の間を間仕切りして使いやすくフルリフォーム。洗濯機置き場も洗面室側に移動しました。
アンティーク塗装でクラシカルに
既製品の建具や巾木を使ってコストバランスを図りつつ、Dさんのイメージするアンティークな風合いを表現しています。建具やミラーの額縁、開口枠やクロゼットの扉は、海外の既製品に色むらを残しながら塗装し、実際に経年変化したような風合いを表現しました。木目模様の凹凸や、色褪せたような風合いはシンプルな空間に奥行きをもたらします。