物件データ
海外赴任中は賃貸に出していたマンション。帰国後しばらくはご夫婦で暮らしていましたが、3LDKという細かく分かれた間取りは暗く、2人暮らしには部屋が多すぎる状態でした。「ワンルームのように伸びやかに暮らしたい」というご希望のもと、壁を撤去し、1LDKという部屋数に絞りました。寝室には間仕切り壁を設けつつ、天井まで立ち上がらせずにLDKとつながりを持たせたことがポイントです。プライベートの空間をはっきりと区分しているものの、ひとつながりの天井が、ご希望の“ワンルーム”のような開放感を演出しています。窓際の逆梁を利用してデスクカウンターを設け、小上がりとして床を一段上げるなど、お二人のライフスタイルから生み出したオリジナルのプランです。
BEFORE写真
1LDKのシンプルな間取りで、
大きなLDKを新設。一角に小上がりも
1LDKとWICの最低限の間取り。LDに面した2部屋を取り込むことで、大きなLDKを設けました。天井はできるだけ上げ、ダクトが通り動かせない部分をグレイがかったグリーンで塗装し、デザインポイントに。どのようなアイテムも馴染むようなシンプルなテイストに仕上げていますが、過ごしていると無垢のフローリングや石壁といった自然素材のぬくもりが伝わるようなやさしさも備えています。LDKの一角に、ちょっとした小上がりを設けたこともポイント。斜めの上がり框や間接照明がモダンな印象です。
LDK
窓の一部を遮っていた洋室をオープンにし、明るく大空間のLDKを設けました。海外生活や旅行で集めた絵画や小物、また奥さまが趣味でつくった作品が馴染むよう、シンプルで上品な雰囲気に。大きな窓から冷気が入りやすかったため、床は床暖房を採用。床暖房に対応したウォールナットの挽き板で木のぬくもりも感じられるように。
LDK
奥さまの念願だったオープンキッチン。リビングから寝室まで見通すことができ、ご夫婦で別々のことをしていても気配を感じることができるようになりました。キッチンカウンターの腰壁には、外装床に使われるざらざらとした石のようなタイルを貼り、ややハードに仕上げています。背面は家電収納を設けて、一部はお気に入りの食器の飾り棚に。ご希望の“生活感のないキッチン”を実現しました。
寝室
リビングとの間仕切り壁は高さ175cmとかなり低めです。プライベートをきちんと区切りながら、天井のつながりがワンルームのような開放感を実現しています。ダクトが通らない部分のみ天井を上げ、ラワンベニヤを貼りました。正面の壁には、塗装用の壁紙〈ルナファーザー〉を張って、ペンキで塗装しています。
小上がり
逆梁を利用して設けたデスクカウンターの前に、小上がりを設けました。ソファに座ったゲストと目線が合い、話しやすい高さに設定。畳ではなく、あえてサイザル麻というさっぱりとした素材をセレクト。上がり框とTVボードがクールに重なり、間接照明が軽やかさをプラス。和風のイメージが強い小上がりですが、素材やデザインでモダンな印象に仕上げました。
廊下
左は、寝室とLDKの間仕切りに続く石壁。切りっぱなしの素朴さと、乳白色のやさしい色合いが帰宅をあたたかく迎えてくれます。手前の下がり天井は、すこしグレイがかったグリーンに塗装。先へ進むとやや上がり、さらに進むとより高く。歩くごとに少しずつ天井が上がり、視界が開け、広がりを感じさせる仕掛けです。右に見えるグリーンの壁は、廊下からキッチンが見えない寸法を探りました。
トイレ
「暗くて落ち着いたトイレに」というご主人さまのご希望があったため、黒を基調としたシックな空間を目指しました。スポットライトを壁際に取り付け、壁をふかしてタイルを貼り、強い陰影をつくっています。さらに、凹凸の間の壁にミラーを走らせ、暗さの中に表情を感じられるように。ミラーの上下にはマットなメラミン化粧板を貼り、狭い空間ながらもさまざまな質感を散りばめています。
低い天井を利用して、空間をフレーミング
天井をできるだけ上げたことにより生まれた高低差を、どのようにうつくしく見せるかが課題でした。ダクトのせいで一番低くなった天井は、ややグレイがかったグリーンに塗装。横に厚みのある壁を設け、天井と同じ色で塗装しL字にフレーミングしました。寝室とキッチンをぐっと引き締めています。
なくせない逆梁は、
デスクや飾り棚として
窓の両サイドの逆梁は構造上なくせないことから、梁上に木製の天板を設け、一方はデスクカウンターに、もう一方は飾り棚として活用しました。奥さまは窓際の明るい空間で、趣味のバッグづくりに専念できるように。構造上の制限をうまく利用したプランにより、マイナス面を払拭しています。
効果的なライティングで趣ある陰影を
スポットライトや間接照明でライティングし、シンプルな空間に趣をつくりました。これまで集めた絵画や小物を、溶け込ませています。小上がりの下には間接照明を入れ、浮かび上がるようなイメージに。ご夫婦の思い出のペンダントライトが木製ブラインドにやさしい光を落とし、天井に華やかな模様を描きます。