物件データ
ご実家の鉄骨造一戸建て。事務所として使われていた2階をリフォームして暮らすことになりました。Mさんの理想は、モダニズム建築のようにミニマムでレトロな雰囲気。そこで天井を上げて開放感をつくる一方、格子戸や鴨居(引き戸の上枠)を低めに設定し、和のスケール感を演出しました。素材感やスケールは和の趣を意識し、暮らし心地は現代のライフスタイルに合わせて開放的に。白をベースに、千本格子戸やローズウッドの化粧柱などで懐かしい空気感をプラスし。照明も、やわらかくボリュームのある光の白熱灯にこだわっています。これから家族構成やライフスタイルが変わることを想定し、ゆったりとくつろげるLDKや書斎、将来子ども部屋としても使える予備室を設けました。今回のプランのポイントとなったのは、春には豊かに花開く桜の木。LDKから桜が眺められるように、窓の形やサイズを工夫しています。ご自宅で桜を眺めながらお酒をたのしむなど、家で過ごすことが格段に多くなったそうです。
暮らしに必要な設備を設けつつ、
将来の家族構成を想定した間取りに一新
新たにキッチン・バス・洗面室、バルコニーを新設。断熱材や防音材、床暖房を入れるなど、快適に過ごせるように性能を高めました。将来の家族構成の変化を想定して間取りを計画しています。また、ヒアリングを繰り返すうちにモダニズム建築のようなミニマムな雰囲気がお好きだということが発覚。ここから一気にデザインテイストが決定しました。漆喰の壁や塗装の天井など白を基本に、サペリやローズウッド、スプルスなど質感ゆたかな木をプラス。とくに、LDKの入り口には本来必要のない柱を設け、ローズウッドで化粧して大黒柱のような趣をつくったことがポイントです。
LDK
フローリングは赤褐色のサペリ、壁は白い漆喰、天井は白く塗装。白をベースに木の質感をちりばめてレトロにまとめました。さらに天井を上げて開放感をアップ。引き戸や鴨居(引き戸の上枠)は低めにして重心を下げ、梁の凹凸に意識が向かないようにしたこともポイントです。ダイニングに隣接する書斎の間仕切り壁には、小さな障子の小窓を入れました。窓のない書斎でも、障子越しにLDKの明るい自然光を感じるように。書斎側にはFIXガラスを入れ、防音性を高めています。
LDK
玄関の正面に、戸当たりとなる化粧柱を設けました。大胆な強い木目、深い色味のローズウッドで化粧し、コーナーを面取り。朴訥とした民芸調のたたずまいは、シンプルな空間に力強いインパクトを与えています。また”玄関を入ってすぐにLDK”というように、ムダな廊下をつくらずスペースを有効活用。将来家族が増えることを想定して設けた子ども部屋(予備室)は、必ずLDKを通って向かう動線にしました。
ダイニング
既存の窓は、開口を広げて大小の引き違い窓に変更。一面の大きなガラス越しに、桜やさまざまな樹種の緑を眺められるようになりました。窓枠はサペリを使用。見付け寸法を厚目にし、額縁のようなイメージに仕上げています。桜の木の正面はFIXの丸窓にして、こちらも桜を愛でるための贅沢なピクチャーウィンドウに。新たに設けたバルコニーの手すりは、スチールの格子でシャープに。景色を邪魔しないよう、桜の枝を避けて計画しています。
キッチン
インテリアの一部となるモダンなI型キッチン。正面の壁は深緑のタイルをフランス貼りにし、印象を深めています。長さの異なるタイルを交互に並べる伝統的な貼り方で、丸いライトとともにレトロなイメージを演出。ゆらぎのあるタイルの表面には窓の景色が映り込み、さわやかな気分が広がるようです。右手には腰壁を立ち上げ、入り口側とはっきり区分。Mさんは”もともと料理をしない”ということでしたが、こちらに越してからは家でお酒を飲むことが多く、キッチンに立つ機会が増えたそうです。
千本格子戸
LDK入り口の2枚の千本格子戸は、伝統的なモジュールと工法にこだわって福井県の建具屋さんにオーダーしました。下部の鏡板は、木目の緻密なスプルスを使用。質感を残しながらサペリのような赤褐色に塗装しています。大黒柱とも言える太い柱に、昭和の面影をただよわせる格子の引き戸が調和。ミニマムな空間に心地よい時代性をもたらします。また冷暖房効果のために、上部にはFIXガラス、格子部分にはスリガラスを入れました。上部のガラスから視線が通り、心地よい抜け感が生まれています。
玄関
玄関にゆとりを持たせるため、2方向に引き戸を設置。開放するとL字に視界が開けるようになっています。いつもは引き戸を開けたまま、ゆったりと使えるスペースに。来客時は片方だけ閉めて目隠しするなど、シーンに合わせた使い方ができることもポイント。上がり框はR(曲線)にし、どちらのドアからでも出入りしやすいように工夫。框は黒皮鉄、土間は黒に近い墨入りモルタルで仕上げ、ざっくりとした風合いが伝わる空間に。昔ながらの素材やデザインにより、帰宅するたびにほっとする懐かしさを感じます。
断熱材や吸音材で快適性をアップ
一階がピロティとなっており、”床が冷えやすい”という心配がありました。そこで新たに断熱材を入れ、床暖房を設置。さらに3階で暮らすご両親の生活音が響かないよう、天井に吸音材を入れています。窓は全てペアガラスに変更。ストレスなく暮らせるように住まい全体の快適性をアップ。またサペリの無垢フローリングや漆喰の壁などの自然素材によって、居心地のよさも高まっています。
素材とスケールで
和の趣を
天井を上げて開放感のある空間がご希望。一方で、低めの鴨居をキッチン~子ども部屋まで連続させることにより、重心を下げて和のスケール感を演出しました。また鴨居が天井と壁を区切り、梁から意識をそらしてくれることもポイント。WICと子ども部屋の引き戸も、床に合わせてサペリを使用しました。素材感やスケールは和の空気感をイメージし、現代の暮らし心地に合わせて開放的に。好みとライフスタイルをバランスよくまとめています。
桜の木を愛でる贅沢な丸窓
目の前に大きな桜の木、というロケーションを活かせるように窓をプランニングしました。既存の腰窓は丸窓に変更。正面の桜の木を美しく切り取り、春の訪れを幻想的に伝えてくれます。既存の掃き出し窓は、開口を広げてガラスを大きくしたことにより、ダイニング側からも桜が見えるように。LDKのどこにいても、豊かな景色をたのしめます。左右にはデッキを立ち上げ、ご近所から目隠し。バルコニーで気兼ねなく過ごせるようになりました。