物件データ
マンションにお住まいのYさんは、市内に事務所を構えていました。しかし同じマンション内に所有する住戸が空いたため、こちらに事務所を移すことに。数年前にクラフトがご自宅をリフォームしていたことから、今回の用途変更も手掛けることになりました。事務所としての使い勝手や、居心地のよさにこだわってプランニングしています。玄関~応接室に直接入ることができる動線を意識して間取りを変更。応接室とデスクワークの間にある程度の距離を持たせ、ワンルームのような開放感がありながらも仕事に集中できるようにしています。また、最上階で天井に余裕があったことから、天井を上げて勾配天井にレッドシダーを張り、伸びやかな空間に。オフィスにふさわしい落ち着きやリラックス感、ビジネスパートナーを招くのに適した洗練された雰囲気をつくることができました。
パブリックとプライベートのゾーニングにより、
快適なオフィスに。クライアントへの配慮も万全
仕事関係の来客が多いことから、徹底して心地よさにこだわりました。クライアントが利用するトイレや洗面室は廊下に面した場所に設け、その奥にはWICや、大量の書類を収納する書庫といったプライベートのスペースを設置。また、パブリックスペースには床暖房を入れています。床に書類を広げて作業をすることもあるため、継ぎ目の溝が極力小さなフローリングを張り、凹凸で紙が引っかからないように配慮しました。書庫の窓にはカーテンの代わりに不透明のインナーサッシを取り付け、寒さ対策も行っています。
応接室
壁には3種類のタイルを組み合わせて貼り、空間のアクセントにしました。Yさんとデザイナーが、ご家族をイメージしながらいくつものパターンを検討。勾配天井にはダウンライトを設置。天井に貼ったレッドシダーの幅を照明ボックスと揃えることで、消灯時に器具が目立たないように設計しています。LEDは調色が可能なタイプを選択。仕事をする時はできるだけ明るく、くつろぐ時間は明るさを落とし、落ち着いた雰囲気で過ごせるようになりました。
事務所
繁忙期は奥さまが仕事を手伝うため、壁際には2人分のデスクカウンターを造作。パソコンのモニターやキーボードをゆったりと置けるように、奥行を90cmと広めに設定しています。正面の壁は白く塗装したコルクを採用しました。ぶつけて傷をつける心配が少なく、ちょっとしたメモを貼ることもできます。
打合せスペース
ダイニングテーブルとチェアは、結婚当初に購入した思い入れのあるもの。使い続けるうちに傷がつき、塗装の艶もなくなるなど経年劣化が感じられました。今回のリフォームで塗装補修を行い、購入時の美しさを取り戻しています。玄関と打合室を緩やかに仕切るのは、透かし積みのブロック壁。両面に間接照明を入れることで、明るさや奥行きを演出しています。
事務所~キッチン
デスクカウンターには、サーバーのサイズに合わせるなど用途に合った収納を設けました。複合コピー機やシュレッダーは、デスクカウンターにも玄関にも近い場所に置き、メーカー担当が来たときにメンテナンスがしやすいようにレイアウトしています。向かいの打合室は、接客対応にも、ちょっとした食事をするにも重宝する空間。その奥にあるキッチンは引き戸で仕切り、来客時にバックヤードが見えないようにしています。
玄関
玄関の土間にはベージュの大理石を貼りました。玄関ホールまで連続して貼ることで、奥行きを感じさせるとともに、応接室に視線を誘っています。壁際には大量の靴をすっきりと収めることができる収納を設置。同じウォールナット色で、手すりも取り付けています。珪藻土の壁が汚れることを防ぐと同時に、年配のクライアントも使いやすくなりました。
トイレ
ガラスモザイクタイルは、自宅をリフォームした際にも気に入って採用しましたが、今回は壁全面をグラデーションに仕上げることで、クライアントに楽しんでもらえるように。天井には天然素材の黒いクロス、壁は深みのある紫~淡い紫~足元は白いタイルへと変化していきます。床には白の大理石調タイルを貼りました。遊び心あふれるトイレとなりました。
セラミックスクリーンで
間仕切り
玄関と打合室の間に、セラミックスクリーンを設けています。焼き物のブロックを、隙間をずらしながら積むことで、ブロックの曲線的なフォルムの持つ意匠性や、絶妙な透け感を表現。空間のアクセントにしました。緩やかに仕切ることで、室内を見せずに光を通し、ゆったりとした空間を演出しています。上部には間接照明を設置。明るさや開放感を高めました。
自然素材に囲まれた心地よい空間
勾配天井にはレッドシダーの羽目板、床はチークの挽板フローリングを張りました。クリア塗装にすることで、メンテナンス性をアップ。壁や天井は、ご自宅にも採用した珪藻土としました。調湿効果を期待できます。エアコンはフラットな埋め込み型にし、扉は壁と同色にしてリビングと馴染ませるなど、シンプルを追求することで、自然素材の持つ表情を引き立てています。
仕事に集中できる環境づくり
住居から事務所へ用途変更するにあたって、キッチンを縮小。お湯を沸かしたり、電子レンジを使ったり、お客様にお茶を出したりすることを想定し、過不足ないサイズを選びました。また、必要がなくなった浴室や洋室のスペースには書庫を新設。大量の書類を整理しながらしまえます。キッチンを中心に回遊できる便利な動線はそのままに、仕事に取り組みやすい環境をつくりました。