物件データ
お子さまが独立したTさん。住み替えを検討していましたが、長年暮らしてきたマンションにも愛着がありました。そこで、同じマンションの川を臨む一室を購入し、クラフトでデザインリフォームすることに。2人暮らしのため、既存の3LDKからゆとりある1LDKに間取りを変更。もとあった和室をなくしてLDKを大きくし、窓の外に広がる景色を身近に感じながら過ごせるようにしました。またデザインへのこだわりが強いご夫婦は、クラフトのモデルルームの素材感に惹かれていたとか。そこでリビングの床はスプーンカットのヨーロピアンオークとし、壁はモルタルの左官仕上げに。また洗面台は職人が時間をかけて磨く「人研ぎ」とするなど、職人の技が感じられる素材を採用しています。
BEFORE写真
暮らしをスムーズにする裏導線
マンションの前を流れる川に向かって大きく開けたLDKを新設。南北からの風が住まいを通り抜け、暑い季節も快適に過ごせるようになりました。玄関〜洗面室〜キッチン、玄関〜SIC〜WIC〜寝室をつなげて帰宅や身支度の動線をスムーズにするなど、暮らしやすさの導線にもこだわりました。また素材館を引き立てるため、ライティングも綿密に計画。この家で過ごす何気ない時間が、贅沢で特別なものに変わったそうです。
ぬくもりあるモルタルの壁
LDKに隣接していた和室をとり込んで、スペースを拡大。川の景色に向かって日常を過ごせるように計画しました。床はヨーロピアンオークのスプーンカットを採用。壁はモルタルやタイル、塗装など面によって仕上げを変え、素材の違いをたのしめるように。なかでもリビングの壁は、黒いモルタルに白いモルタルを重ねた左官仕上げ。光が当たると味わい深いコテ跡や色むらがが浮かび、あたたかな手仕事を感じさせます。天井の梁型は新たに造作したカウンターの幅と合わせ、ダウンライトを設置。プロジェクターやスピーカーも仕込み、すっきりと仕上げました。
木製ルーバーと大スクリーン
入り口から窓側にかけての天井には木製ルーバーと間接照明を入れ、こもったような落ち着き感を演出。間接照明やダウンライト、スポットライトはシーン毎に4段階で切り替えが可能です。またスクリーンのサイズに合わせ、両サイドの壁にスリットライトを入れて正面性も持たせました。スクリーンボックス自体はルーバーで目隠しできるようになっており、普段はすっきりとした状態に。ギャラリースペースとしても活用できるよう、壁にはピクチャーレールを設置しています。
静寂さに包まれた寝室
寝室のフローリングには木目が美しい赤みがかったサペリを使用。壁から天井にかけては床の色に合わせた赤茶の木を張り、ベッドヘッドとしました。LDKとはテイストが異なり、木に包まれてこもったような安心感が感じられます。ニッチには籐を思わせる涼しげなアクセントクロスを使用。下がり天井は廊下の幅とそろえ、天井の梁型の存在が気にならないように工夫。窓にはルーバーの引き戸を取り付け、マンションでは取り換えられない古いアルミサッシを目隠ししています。
廊下の壁にモルタルの飾り棚
廊下の壁は、亜麻色に白いモルタルを重ねてなじませる左官仕上げとしました。職人の手仕事によって随所に塗りむらやコテ跡が残され、ぬくもりが感じられます。壁にはニッチを設けて、間接照明とスポットライトを設置。お気に入りの小物やオブジェェを引き立てます。スポットライトは小物の位置に合わせて左右に移動できる可動式。季節ごとにコーディネートでき、インテリア好きな奥さまの趣味の空間となりました。
人研ぎ仕上げの洗面台
洗面台は職人が時間をかけて磨きあげた、人研ぎ仕上げ。水が撥ねる部分はモルタルを立ち上げ、掃除のしやすさも考慮しています。脱衣室から洗面室にかけての床には、六角形のモザイクタイルを。茶色のタイルをアクセントに入れ、レトロで素朴な雰囲気としています。脱衣室と洗面室の入り口は、引き戸を採用。開放すれば玄関からキッチンがひと続きになるとともに、通気性を高める効果もあります。
ほの暗くシックなトイレ
床にはグレーの六角形タイルを貼り、壁はマットなブルーグレーのサブウェイタイルを。間接照明で素材感を際立たせています。カウンターのタペガラス部分には照明を仕込むなどして、モダンな雰囲気に。コンパクトな空間ですがスリムな手洗い器とカウンターとすることで、可能な限りの広さを確保しています。普段はほの暗く、来客時や朝は明るくするなど、シーンに応じた調光が可能です。
オリジナルのウォルナットのドア
リビングのドアはウォルナットの突き板で製作。白太と呼ばれる部材を選び、コントラストが印象的な仕上がりにしました。袖壁にも同じウォルナットを使用し、素材が異なる木とモルタルが分断されることなく重なるようにデザインしています。廊下〜キッチンの床は長手方向に張り、リビング・ダイニングはスプーンカットのヨーロピアンオークを横手方向に張るなど、床材を張り分けたこともポイント。広くなった空間をゆるやかにつなげつつ、さりげなくゾーニングしています。
リビングとつながるキッチン
キッチンは、ダイニングに設けたカウンター収納と連続させ、LDKのつながり感を強調。伸びやかなタイルの壁も、キッチンとリビング空間を視覚的につなげています。壁は、色と形が異なるマットなタイルをデザイン貼りにしました。家全体のテイストを意識しながら、キッチンらしい明るめのタイルを中心にセレクト。吊り戸棚は壁のタイルと色調を合わせ、光沢のある面材を採用。キッチン〜洗濯室、洗面室〜廊下といった家事効率のよい動線を実現しています。
FIXガラスで明るい玄関に
土間は焼きムラのある荒い質感のタイルを、ヘリンボーンに貼ってクラシカルな雰囲気に。廊下のフローリングはヨーロピアンオークを長手方向に張り、リビングにつながるドアの脇にはFIXガラスを入れました。リビングに差し込む自然光が玄関まで届くようになり、お悩みだった玄関の暗さを解消。玄関ホールに立つとガラスの先の明るい空間や窓の景色が目に入り、伸びやかさを感じさせてくれます。