物件データ
以前ご実家のマンションを、クラフトでデザインリフォームした経験のあるFさん。今回、おばあさまがお住まいだったマンションへ移り住むこととなり、再びご依頼をいただきました。ご希望は、デンマークの建築家で家具デザイナーの、フィン・ユール邸のようなシンプルで素材感のある空間です。まずは間取りを大きく変更。洋室の引き戸をなくして広いLDKとし、床には節や色ムラなど木の素材感をたのしめるオークの挽板フローリングを張りました。また天井には太い梁型がありましたが、ダクト経路を変更することでフラットに仕上げ、木目柄の突板張りとしました。玄関脇には奥さまの陶芸工房を設け「自宅で作品づくりに集中したい」という夢も叶えています。
広いLDKの一角に多目的ルーム
もともと、物をあまり所有せず、シンプルな暮らしをしてきたというFさんご夫婦。新居でも同様にミニマルな暮らしをベースにしながら、ライフステージ変化しても対応できるよう、可変性のある間取りとしました。ポイントは陶芸のための工房と、多目的スペースを家のどこにレイアウトするか。できるだけ広いLDKを確保しつつ、将来は壁を設けて個室に転用できる多目的ルームとしています。またFさん夫妻のご希望通り、鬼門を意識しながら水回りを配置するなど、家相にも配慮しています。
木目が楽しめるフラットな天井
もともと天井にはレンジフードのダクトが通る太い梁型がありましたが、ダクト経路を変更。フラットに仕上げると同時に、隙間を設けて合板を張りつける「目透かし張り」にすることで視線が通り、視覚的な広がりを演出しています。また、梁に沿って照明レールを設置。可動するスポットライトでリビングを取り囲み、天井の木目をそのまま活かすことができました。経年で深まっていく色の変化もたのしめます。
会話が弾むキッチン
キッチン前にあった壁をなくし、コンロ前には透明なガラスを張ることで、ダイニングとの一体感を演出。床は、節があって使い込んだような風合いが味わい深い、オークの挽板フローリングとしました。照明はダウンライトを基本に、ダイニングテーブルの上にシンプルなペンダントライトを一灯。素朴な味わいを演出します。また、廊下の壁にある収納は壁と一体化するよう白い扉に。すっきりと見せながら、収納力も十分に確保しました。
グレーと白で統一した
広く使いやすいキッチン
デザイン性に優れ、汚れにも強いタイルを床に貼り、キッチン周りの壁は左官仕上げに。グレーと白で統一した、シンプルで上品なキッチンに仕上げています。背面のカウンターは収納力も高く、キッチン用品を全て納めることができます。お手持ちのゴミ箱もビルトインとし、生活感が出ないように。ダイニング側には動かすことのできないPS(パイプスペース)がありますが、上部に飾り棚を置くことでデッドスペースを活用しています。
本棚で緩やかにゾーニング
LDKに隣接する多目的ルームは、造作家具の本棚でゆるやかに間仕切りした半プライベート空間。ここにカウンターも設け、Fさんが籠って過ごせるスペースとしました。リビングからつながる板張りの天井の連続性は損なわないよう、上部をオープンに。また壁の一面はシックなブルーで塗装し、落ち着いた雰囲気を演出。Fさんが海外で購入したという、ワイヤーのオブジェも映えます。
朝の光を取り込む寝室
キッチンの裏側にあたる寝室は、上部にガラス引き戸の欄間を設置。LDKから差し込む朝の光を取り込めるようにしました。その下のクロゼットは3枚引き戸にし、しまった服を取り出しやすいように。床はリビングや廊下と同じ、オークの挽板フローリングを張り、家全体の雰囲気を統一。素足で歩く心地よさも味わうことができます。
玄関からつながる廊下と工房
玄関を入ると、すぐ左に陶芸の工房が現れます。床はできるだけフラットにして、土間とひと続きになったような空間を演出。土間は薄いグレーの左官仕上げとしました。玄関と工房の間にある靴箱は撤去し、モノトーンベースのタイル張りに。このタイルは、Fさんご夫婦が北欧旅行中に立ち寄ったカフェの壁に貼ってあったタイルと同じものだそう。思い出の深いタイルを自宅に採り入れることで、より愛着が増しそうです。廊下と工房の間の壁はカフェ風の突き出し窓を採用し、通気性に配慮しました。
陶芸のための空間
玄関サイドの部屋は床板を全て取り払い、躯体の持ち味を活かしたコンクリートに。奥さまが陶芸に打ち込むための工房としました。作業台や電動ろくろ、形作りや削りを行うスペースや作品を乾燥させるための棚、汚れた手を洗うステンレス流し、焼成のための電気釜も配置。一連の作陶作業が全て行えるようになっています。壁の一面は床との調和を図った色に仕上げました。
お気に入りのタイルとタオル掛け
正面の壁にはFさんご自身が選んだタイルを幾何学模様に貼り、ラウンドミラーとともに、サニタリーにインパクトを。人工大理石のボウル一体型の洗面カウンターがすっきりとした印象を与えています。タオルフックはFさんが海外で購入した思い出の品を採用しました。洗面室の奥にはトイレをレイアウトし、手洗いの導線を確立。洗濯機置き場や室内物干しも設けました。
部屋のどこにいても互いの気配
玄関を入ってすぐ左側の部屋を陶芸用の作業工房とし、右側の部屋を寝室に。工房は玄関から直接土足で出入りできるオープンな空間ですが、作業をすると土ぼこりが舞うため、間にスチール枠の室内窓を設けました。寝室は引き戸で閉じることもできますが、ここを開ければ、ひと続きの空間のように開放的。夫婦がどこにいても互いの気配が感じられる、理想的な間取りとなっています。