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建物にはさまざまな構造があります。一般的な住宅の構造としてイメージしやすいのは木造ですが、その他にも「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)」「鉄筋コンクリート(RC造)」「鉄骨造(S造)」などの構造があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
この記事では、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の特徴や、他の構造との違いについて解説します。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)とは?
鉄骨鉄筋コンクリート造とは、鉄骨造(S造)と鉄筋コンクリート造(RC造)を組み合わせた建物構造です。H形鋼など鉄骨の柱のまわりに鉄筋を組み、その隙間にコンクリートを流し込んで固めてつくります。鉄骨造のしなやかさとRC造の高い耐久性・耐震性を併せ持った建物構造で、「Steel Reinforced Concrete」の頭文字を取って、SRC造とも呼ばれます。
建物にはさまざまな構造がありますが、中でも鉄骨鉄筋コンクリート造はトップクラスの耐震性・耐火性を誇ります。日本一高い建造物(世界の建築物ではブルジュ・ハリファ、ムルデカ118に続いて世界第3位の高さ)の「東京スカイツリー」の構造にも、鉄骨鉄筋コンクリート造が採用されています。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の特徴・メリット
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)には、多くのメリットがあります。ここから詳しく解説していきます。
〈1〉耐震性・耐久性に優れている
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、非常に高い耐震性・耐久性があることが大きな特徴です。引っ張る力に強い「鉄筋」と、圧縮力に強い「コンクリート」を組み合わせた鉄筋コンクリート造(RC造)をさらに鉄骨で強化しているため、建物構造の中でも特に地震の揺れによる変形に強い構造です。鉄骨を溶接やボルトによって接合しているため、あらゆる方向からの衝撃を上手く分散するしなやかさがあります。
〈2〉耐火性が高い
コンクリートは素材そのものが燃えないため、鉄骨や鉄筋の周囲をコンクリートで覆った鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、火災にも強い構造です。比較すると鉄筋コンクリート造(RC造)の方が耐火性に優れているといわれるものの、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)も十分な耐火性が期待できます。
〈3〉遮音性・防音性が高い
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、コンクリートを使用するため遮音性や防音性に優れていることも特徴です。木造や軽量鉄骨造と比較すると、鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造(RC造)は遮音性・防音性が高くなります。ただし、鉄骨を使うことで鉄筋コンクリート造よりも柱や梁を薄くできるため、壁や床が薄い場合は鉄筋コンクリート造よりも遮音性・防音性が劣ることも。壁が分厚いほど、遮音性・防音性は高くなります。
〈4〉鉄筋コンクリート造(RC造)よりも広い空間を作れる
鉄骨を加えた鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、鉄筋コンクリート造(RC造)以上に強度があります。そのため柱と柱の間隔(スパン)を広くでき、より広い無柱空間をつくることが可能です。また、鉄骨を入れている分、柱や梁を鉄筋コンクリート造よりも細くできることもメリットです。
〈5〉見た目がスタイリッシュでおしゃれ
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)や鉄筋コンクリート(RC造)の建物の仕上げ工法の一つに、「コンクリート打ちっ放し」があります。コンクリートの質感を活かしたコンクリート打ちっぱなしは「クール」「スタイリッシュ」「モダン」といったおしゃれで都会的なイメージがあることが特徴です。コンクリートは金属・タイル・ガラスといった同じように無機質な素材だけでなく、木材や珪藻土などの自然素材とも相性バツグンです。観葉植物を置くだけでもシンプルで洗練されたインテリアにできます。
コンクリートの質感は和室にも合い、おしゃれな和モダンの空間に。希望のテイストに合わせてコンクリートを塗装することもできるので、好みの素材やインテリアを組み合わせれば自分だけの特別な空間がつくりあげられるでしょう。
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鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)と他の建物構造の違い
代表的な建物構造としては、以下のようなものがあります。
- ・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造/Steel Reinforced Concrete)
- ・鉄筋コンクリート造(RC造/Reinforced Concrete)
- ・鉄骨造(S造/Steel)
- ・木造(W造/Wood)
ここからは、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)とその他の建物構造の違いについて見ていきましょう。
鉄筋コンクリート(RC造)との違い
鉄筋コンクリート造(RC造)は、柱や梁を「鉄筋」と「コンクリート」によって構築した建物構造です。太さ1cm以上の鉄筋を組んだ型枠にコンクリートを流し込み、固めてつくります。熱や錆に弱いものの引っ張る力には強い「鉄筋」と、引っ張る力には弱いが圧縮力や熱に強い「コンクリート」を組み合わせることで強度を高めており、耐久性や耐震性、遮音性や気密性に優れています。リフォーム・リノベーション時に間取りやデザインを自由に設計しやすいことが特徴です。
鉄骨造(S造)との違い
鉄骨造(S造)とは、鉄の合金である鋼(Steel)を使って柱や梁などの主要構造部を構築した構造です。鉄骨造は、使用する鋼材の厚さによって「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」の2つに分けられ、鋼材の厚さ6mm未満のものは「軽量鉄骨造」、鋼材の厚さ6mm以上のものは「重量鉄骨造」となります。軽量鉄骨造の住宅は大和ハウス、積水ハウス、セキスイハイム、パナホームといった大手ハウスメーカーが手掛けていることが多く、高い品質を活かしたリフォーム・リノベーションが行えることが特徴です。重量鉄骨造は、柱や梁が丈夫なため間取り変更の自由度が高くなります。また、木造や軽量鉄骨造の住宅に比べて防音性がアップします。鉄骨造はコンクリートを使用した鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)や鉄筋コンクリート造(RC造)と比較すると耐火性で劣ります。
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木造(W造)との違い
木造(W造)は、主要構造部に木材を使用した構造です。吸湿性・通気性に優れ、気候や風土に合うことから日本では古くから木造の建築方法が採用されており、現在も小規模なアパートや戸建てで木造でつくられています。鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)や鉄筋コンクリート造(RC造)と比べると耐久性が低く、木材を使用しているため火災に見舞われたときに被害が大きくなりやすい点に注意が必要です。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のQ&A
ここでは、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のQ&Aをご紹介します。
Q 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の戸建てはある?
A 鉄骨鉄筋コンクリート造では大規模な工事が必要になり、工程も複雑になるため工期が長くなります。鉄筋コンクリート造(RC造)よりもさらに建築コストが高くなるため、戸建てや中低層のマンションで用いられることはほとんどありません。
10階建て以上の高層マンションやタワーマンション、高層ビルなどで使われる構造です。
Q 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の建物の寿命はどのくらい?
A 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の住宅の法定耐用年数は、47年とされています。ただし、法定耐用年数=建物の寿命ではありません。法定耐用年数は建物の減価償却期間として国税庁が定めたもので、メンテナンス次第で建物の寿命は延ばすことができます。
鉄骨鉄筋コンクリート造は耐久性・耐震性に優れているため、適切なメンテナンスを行えば100年以上もつこともあるでしょう。
〈まとめ〉鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は丈夫さが特徴
鉄骨造(S造)と鉄筋コンクリート造(RC造)を組み合わせた鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、非常に高い耐震性・耐久性が特徴です。建築コストが高額になるためタワーマンションや高層ビルなどに用いられ、戸建てにはほとんど用いられません。
鉄骨鉄筋コンクリート造が採用されたタワーマンションは景観が大きな魅力で、耐震性・耐火性・遮音性に優れているため、安心して快適に暮らし続けることができるでしょう。ただし、タワーマンションは管理規約が厳しいため、リフォーム・リノベーションの際は実績豊富な会社に依頼するのがおすすめです。
CRAFTでは、これまで数多くのタワーマンションのリフォーム・リノベーション実績があります。一つ一つのご家族に寄り添い、ライフスタイルに合ったオーダーメイドの住まいをご提供していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
<著者>CRAFT 編集部
一級建築士・二級建築士・インテリアコーディネーター・一級建築施工管理技士・二級建築施工管理技士・宅地建物取引士が在籍。さまざまな知識を持つプロフェッショナル集団が、リノベーションや物件購入についてわかりやすく解説します。