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2022年(令和4年)、住宅ローン減税が改正されることになりました。改正の背景には1%以下で住宅ローンを組んだ時に控除率が上回る、いわゆる「逆ザヤ」問題が挙げられます。税金ですから、住宅ローンで利益を得ていた方々がいることを思うと、妥当な改正だとも言えますね。
ただし、これから物件を買い方には大きな問題ですよね。今回は2022年の住宅ローン減税改正の概要を分かりやすくお伝えします。
住宅ローン減税が改正で「逆ザヤ」問題を解消?
住宅ローン減税が2022年に改正されると、これまでの控除額が年末時点の「住宅ローン残高」もしくは「住宅の取得対価」の少ない方の金額の1%だったものが、「借入残高」の0.7%となります。
以前までは、住宅ローンの金利は、3%や4%も珍しくありませんでしたが、現在ではかなり低くなっていますよね。なかでも「変動金利」は0.4%台、場合によっては0.3%台に入ることもあるほどです。
このような低金利の状況の中で、住宅ローン減税の控除率が1%だと、ローンの利息負担が利益を得ることになり(これが逆ザヤ問題)、税負担の方が高くなります。このような背景から控除額の見直しが行われています。
改正で控除率0.7%に。ただし、築古の中古住宅にはメリットも
住宅ローン減税の改正の主なポイントは、以下になります。
・控除率 0.7%に引き下げ
・新築のみ控除期間13 年に延長(中古は10年のまま)
・2025年まで制度の期間延長
・所得制限 年収3000万円→2000万円に引き下げ
・住宅性能に応じて借入限度額が変わる(新築・中古住宅でも異なる)
・築年数の要件がなくなり、「新耐震基準適合住宅」(1982年以降に建築)に緩和
・新築の床面積要件が50㎡→40㎡以上に緩和
住宅の種類 | 2021年まで | 2022年以降 | |
---|---|---|---|
控除率 | 新築と中古 | 1% | 0.7% |
所得制限 | 新築と中古 | 3,000万円 | 2,000万円 |
控除期間1 | 新築 | 10年(一部13年) | 13年(2025年以降入居は10年) |
控除期間2 | 中古 | 10年 | 10年 |
全体的に厳しいものとなっています。控除率 0.7%という改正が、やはり一番大きいですよね。また所得制限が厳しくなると、共働き世帯・高所得者の方は住宅ローン控除で受けられる恩恵が小さくなります。
ただし中古住宅には、メリットのある改正がありました。これまでは中古住宅は「耐火住宅は築25年、非耐火住宅は築20年」で、これに該当しなければ既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書、または耐震基準適合証明書が必要でした。しかし今回の改正では1982年以降の住宅は新耐震基準に適合しているのではれば、証明書を提出する必要がなくなります。登記簿上の建築年で証明できるため、これまでよりずっと手続きが楽になるでしょう。
物件を買ったらどの住宅ローン減税が適用される?
2021年12月までに入居が終わっている方は、「改正前」の住宅ローン減税が適用されます。2022年1月以降に入居する場合は、3月ごろに正式決定される改正版が適用されます。基本的には、先ほど触れたようなポイントそのままに改正されるでしょう。
年収が2,000万円以上でも、控除対象になる場合もある
2022年の改正では、所得制限がこれまでの3,000万円から2,000万円に下がる予定です。だからといって、年収が2,000万円を超える方が住宅ローン減税を利用できないわけではありません。
これは、企業に勤める方の場合、給与所得は年収から給与所得控除(最大で195万円)と特定支出控除(最大で65万円)を差し引いた金額が所得金額となるためです。
これらを差し引いた金額が2,000万円を超える場合は減税が適用されません。
特に副業をしている方は、本業のみであれば所得金額が2,000万円以下でも、副業による収入を加えると2,000万円を超える可能性もあるため、注意してください。
住宅ローン減税で「家を買うタイミング」を焦らないで
ひとつだけ言えるのは、住宅ローン減税を目的として家を購入することは避けるべき。
特に住宅ローン減税期間終了が近くなる2023年ごろからは「いま買わないと損をする」といった話が不動産会社からも出てくる可能性がありますが、減税の利用を優先するのではなく、自分が理想とする家を購入することが大切です。
確かに、住宅ローン減税を利用すると、金銭的な負担は軽くなりますが、損得のみで考えず、冷静になって物件探しに取り組むようにしましょう。住宅ローン減税を利用しても、住宅選びで失敗してしまっては意味がありません。
改正後、住宅ローンの借り方はこんな風にかわっていく
住宅ローン減税の改正によって、住宅ローンの借り方が変わるかもしれません。具体的には、以下の通りです。
1.全期間固定金利が選ばれやすくなるかも
2.団体信用生命保険の保障を手厚くする方が増えるかも
3.金利上乗せして保証料を支払う方が増えるかも
ここでは、それぞれについて解説します。
1.全期間固定金利が選ばれやすくなるかも
全期間固定金利とは、住宅ローンを完済するまで金利が変動しないタイプの金利のことです。全期間固定金利を選ぶと、返済中に市場の金利が変動しても、返済額や利息額はそのままであるため、支払額を計算しやすいという特徴があります。
全期間固定金利は、金利が1%を超えていることが多く、住宅ローン減税改正後は、全期間固定金利を利用することで、控除額が年末時点の残高の1%となりやすくなります。変動金利を利用するよりも、節税効果が大きいため、こちらを選ぶ方が増えると考えられます。
2.団体信用生命保険の保障を手厚くする方が増えるかも
団体信用生命保険とは、住宅ローンを利用している方が亡くなった場合などに、残債が0円になる保険のことです。
住宅ローンを銀行で借りる場合、団体信用生命保険への加入が必須条件となっている代わりに、保険料は金融機関が負担してくれるケースが多くなっています。団体信用生命保険には特約の付帯もでき、住宅ローン金利に上乗せして保険料を支払う形が一般的です。
今回の住宅ローン減税の改正によって、特約の保険料分が還付により戻ってくる可能性があるため、保障をこれまでよりも手厚くする方が多くなるかもしれません。
3.金利に上乗せして保証料を支払う方が増えるかも
保証会社に支払う手数料を「保証料」と言います。保証会社は住宅ローンの支払いを長期間滞納したとき、残債を一括返済してくれるのです。
しかし一括返済=返済義務がなくなる、というわけではなく、滞納した方は、保証会社にお金を支払う必要があります。支払いに応じないと、物件が差し押さえられてしまうため注意しなければなりません。
この保証料は、住宅ローンを借り入れる際に一括で支払うか、住宅ローン金利に0.2%を上乗せする形で支払うか選ぶことができます。金利に上乗せして支払えば、控除額が増えると考える方も出てくるでしょう。
〈まとめ〉住宅ローンのことも、不動産コンサルタントに相談
今回は、2022年の住宅ローン減税の改正について解説しました。手を上げてよろこびたくなるような改正ではありませんが、控除率が減ってもやっぱりお得です。中古住宅に関しては多少のメリットもありました。
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<著者>CRAFT 編集部
一級建築士・二級建築士・インテリアコーディネーター・一級建築施工管理技士・二級建築施工管理技士・宅地建物取引士が在籍。さまざまな知識を持つプロフェッショナル集団が、リノベーションや物件購入についてわかりやすく解説します。