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賃貸派と持ち家派で意見が大きく分かれる老後の住まい問題。一生賃貸物件で問題ないと考えている方も少なくないかと思いますが、老後も賃貸に住み続けるとなると、どれくらいの貯蓄が必要になるかきちんと把握できていますか? 今回は、老後も賃貸物件に住み続ける場合にかかる費用やメリット・デメリットに触れながら、賃貸と持ち家のどちらを選ぶべきかについてわかりやすく解説していきます。
一生賃貸物件に住み続ける人の割合
一生賃貸に住み続けるかどうかを考える上でまず確認しておきたいのが、老後も賃貸物件に住み続ける人の割合についてです。
総務省が公表しているデータによると、2019年時点での年齢別の持ち家比率は以下のようになっています。
年代 | 持ち家比率 |
---|---|
40〜44歳 | 77.8% |
45〜59歳 | 80.8% |
50〜55歳 | 83.7% |
55〜59歳 | 87.7% |
60〜64歳 | 90.2% |
65〜69歳 | 92.3% |
70歳以上 | 92.4% |
持ち家率は30代以降上昇し続け、60歳以上になると90%を超えます。つまり、老後も賃貸物件に住み続ける人は全体の1割以下のごく少数派だと言えるわけです。
「多数派だから良い」というわけではありませんが、老後は、賃貸ではなく戸建てやマンションなどの持ち家で生活するという選択をしている人がほとんどだという事実はしっかりと押さえておく必要があります。
一生賃貸物件に住み続ける場合にかかる費用
政府の調査によると、65〜69歳の2人以上の無職世帯における平均支出は月27万円ほどとなっています。ただ、この金額には住居費が含まれていません。老後も月10万円ほどの賃貸物件に住み続けると想定した場合、月の支出は約37万円です。
老後の社会保障給付による収入の平均が21万円ほどとなっているので、毎月16万円の赤字ということになります。
厚生労働省の簡易生命表によると、男性の平均寿命が約82歳、女性の平均寿命が約88歳となっています。このデータを元に、65歳に仕事を引退して88歳まで賃貸物件で生活し続けると想定すると、23年もの間月16万円の赤字が発生し続けることになるため、4,000万円以上貯蓄しておかなくてはならないということになります。
社会保障給付の額や月の支出額、家賃はそれぞれのケースによって異なるため一概に「4,000万円以上必要になる」と言い切れるわけではありませんが、老後も賃貸物件に住み続けるとなるとかなりの金額の貯蓄が必要になることは間違いありません。
以下の記事では、賃貸物件と持ち家の生涯コストをより詳細に比較しているので、こちらもぜひ参考にしてみてください。
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一生賃貸物件に住み続ける2つのメリット
老後も一生賃貸に住み続けるべきかどうかを考える上で把握しておきたいのが、一生賃貸物件に住み続けるメリットについて。
住宅を購入せずに老後も一生賃貸物件に住み続ける主なメリットとしては、
・気軽に住み替えられる
・固定資産税や修繕費の負担が少ない
の、2点があげられます。
それぞれのメリットについて、詳しく解説していきます。
1.気軽に住み替えられる
老後も住宅を購入せずに一生賃貸物件で過ごす最大のメリットが、気軽に住み替えられることです。賃貸物件は、引越し先となる物件を見つけ、初期費用を用意することさえできれば、いつでも別の物件に引っ越すことができます。
リタイア後に海の近くや、スーパーや飲食店の多い街に引っ越せるのも賃貸物件ならでは。
持ち家だと売却問題もでてくるため、賃貸ほど気軽に住み替えはできません。
2.固定資産税や修繕費の負担がない
戸建てやマンションなどの住宅は固定資産にあたるため、固定資産税を支払わなくてはいけません。税額は物件によって異なりますが、戸建てで年10〜15万円ほど、マンションで年8〜12万円ほどになります。
また、戸建ては、外壁塗装や住宅設備の劣化に伴うリフォームなどで定期的に修繕費が発生しますし、マンションの場合は修繕積立金を負担しなくてはいけません。
一方、賃貸物件は固定資産税や修繕費を負担する必要もありません。
一生賃貸物件に住み続ける4つのデメリット
老後も一生賃貸物件に住み続けることを検討するのであれば、メリットだけでなくデメリットについても把握しておかなくてはいけません。
一生賃貸物件に住み続けることで懸念される主なデメリットとしては、
・家賃を支払い続ける必要がある
・老後は物件を借りられないこともある
・リフォームやリノベーションができない
・子どもや孫に資産を残すことができない
などがあげられます。
それぞれのデメリットについて詳しく解説していきます。
1.家賃を支払い続ける必要がある
一生家賃を支払い続ける必要がある点は賃貸の大きなデメリットです。持ち家にも、固定資産税や修繕費など所有している限り負担し続けなければならないコストはありますが、ローンを完済すれば月々の金銭的な負担はだいぶ軽くなります。
毎月の家賃は、収入が目減りする老後になると負担が大きくなるので、一生賃貸物件に住み続けるかどうかを検討する際は、「本当に老後も家賃を支払い続けることができるのか」という点をよく考えながら決める必要があります。
2.老後は物件を借りられないこともある
「仕事を引退して収入が減ったら、家賃が安いところに引っ越せばいい」と考えている方も多いかと思いますが、老後は物件を借りられないケースも増えてくるので注意しなければいけません。
年金が主な収入源になる高齢者には、物件を貸し渋るオーナーも少なくありません。認知症によって近隣住民とトラブルになったり、物件を汚したり破損させてしまったりするケースもあるため、貸したがらないオーナーが増えるわけです。
老後も賃貸物件に住み続けたいと考えているのであれば、そういったケースが発生することも想定しておかなくてはいけません。
3.リフォームやリノベーションができない
持ち家は、老後の生活を見据えてリフォームしたりリノベーションしたりすることができます。一方、賃貸物件は自分の所有物ではないので、自由にリフォームしたりリノベーションしたりすることができません。
「老後はバリアフリーな物件に引っ越せばいいのでは?」と考える方も少なくないかと思いますが、先述したとおり、老後になると賃貸物件を借りられなくなることもあるので注意が必要です。
4.子どもや孫に資産を残すことができない
戸建てやマンションなどの持ち家は、子どもや孫の将来を見据えて資産として残してあげることができます。一方、賃貸物件は自分の所有物ではないので、お子さんやお孫さんに譲ることはできませんし、資産として残すこともできません。キャッシュで相続するよりも、不動産で相続した方が相続税の負担は少なくなります。
老後に向けて持ち家を購入するメリット・デメリット
老後に向けて持ち家を購入する主なメリットとしては、以下の4点があげられます。
・老後の住まいを確保できる
・老後の住居費を大幅に軽減できる
・ローン完済後は資産になる
・リフォームやリノベーションもできる
住居費の軽減や資産についてはローン完済後のメリットとなりますが、いずれも魅力的なメリットばかりです。
一方で、
・気軽に引っ越しできない
・固定資産税や修繕費の負担が発生する
・定期的にメンテナンスする必要がある
など、賃貸にはないデメリットもあります。
老後の住まいをどう確保するかについては、賃貸物件と持ち家、それぞれのメリットとデメリットをしっかりと比較した上で判断する必要があると言えるでしょう。
リタイア後に中古戸建てを買ってリノベーションした事例
老後に持ち家を購入するべきかどうか悩んでいる方にぜひ参考にしてほしいのが、リタイア後に持ち家を購入した方の事例です。こちらは、リタイア後に葉山の高台にある築40年の戸建てを購入してリノベーションしたご夫婦。
リビングは、もともとあった和室や長い廊下を取り込み、18畳のゆとりのある空間に。富士山や相模湾に面した窓を大きくし、オーシャンビューを存分に楽しむことができるようにしています。
リタイア後の住まいということであれば、都内の物件に固執する必要がありません。葉山や逗子など、リゾート地にある中古物件を選択肢に入れて購入を検討してもよいかもしれません。
<まとめ>早めに持ち家を購入して老後の負担を少しでも減らすべき
老後は年金がメインの収入源になるため、一生賃貸に住み続けるとなると高い確立で赤字になります。また若いうちは「引っ越しが趣味」という方も、老後は荷造りなどが億劫に。
老後の負担や相続の心配を少しでも減らしたいのであれば、やはり購入が安心です。
タイミングはご世帯ごとに異なりますが、賃貸に固執せず、老後に向けた持ち家の購入はおすすめです。
老後の住まい探しは、ぜひCRAFTにおまかせください。資金計画も含めつつ、老後の住まいにピッタリな物件のリサーチからリノベーションまでトータルでサポートさせていただきます。
<著者>CRAFT 編集部
一級建築士・二級建築士・インテリアコーディネーター・一級建築施工管理技士・二級建築施工管理技士・宅地建物取引士が在籍。さまざまな知識を持つプロフェッショナル集団が、リノベーションや物件購入についてわかりやすく解説します。