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外苑前駅近く、青山通り沿いにあるCRAFTの青山モデルルーム 。黒田美津子さんのスタイリングによって装いを新たにしました。
「暮らして、その後」をリアルに感じさせる空間は、訪れる人にゆたかなインスピレーションを与えてくれるはずです。今回はその一部をご紹介します。
空間の主役ではなく、空間を引き立てる
ゆとりあるリビングやバスルーム、寝室をレイアウトした208㎡の青山モデルルーム。白河石や栗、オーク、ウォールナットなどの本物素材に包まれた贅沢な空間です。
黒田さんはそこに、ほどよく余白をつくり、足し引きしながら小物や照明をレイアウト。それらによって、床や壁の質感がこれまで以上に際立ちます。
「青山モデルルームは、素材感がとてもすてき。全体的にモダンですが、左官や石など”和”を感じさせる素材が多くありました。だからここには、石や土でつくられたぬくもりを感じさせる作家ものが合うと直感したんです」と、黒田さん。
書斎のオープン棚には、音をデザインするアーティスト・スズキユウリさんの作品も。スイッチを入れるとアンビエントミュージックが流れ、その場の空気ががらりと変わります。
家具製作の工程で出る端材も、黒田さんの手にかかればひとつの作品に。
それぞれのアイテムから、暮らしている人のものへのこだわりが垣間見えてくるようです。
デスクにはペンやメモ書きがきちんと並んでおり、住人が仕事を終えてふらりと出て行った後のような、あたたかい空気が残されていました。
暮らす人のストーリーや気配が伝わるように
「ここで暮らすのは、ひとつひとつのものをいつくしむような方。こういうライフスタイルが好みで、こんなものをここに置くはず。そんなストーリーを考えながらレイアウトしていきました」
モデルルームに訪れた方が、そこで暮らす人のライフスタイルに共感する。あるいは憧れる。黒田さんはそんなスタイリングを心掛けたそうです。
「家は暮らすための場所。だからモデルルームはリアルすぎず、プロップすぎず、ハーフリアルというのをスタイリングの着地点としています。ストーリーを感じさせるけれど、生活感はあまりなく、自分でも取り入れてみたくなるような空間に」
黒田さんご自身も、作家作品や古いものに惹かれるのだそう。
「経年したものや傷があるものを、モダンな空間に混ぜる。そのときに生まれるバランスが好きなんです。
青山モデルルームは整然としていてモダンです。だけど人間って、家の中ではそんなにきっちりしていられないでしょう。だから小物でやわらかさを表現して、リラックスできる雰囲気をつくるんです」
壁にディプスレイされた枝ものも、空間にやわらかな雰囲気を添えています。自然な曲線美と壁に映る繊細なシルエットが、目に映るたびに心を癒してくれそうです。
エントランスで迎えてくれるのは、人気の和紙作家・ハタノワタルさんの作品。
和紙の質感によって、玄関ホールに和やかな空気が生まれています。
インテリアは、日々の疲れを癒してくれる
黒田さんのスタイリングには、さりげなく差し色がなされていることも特徴です。たとえば黒と木をベースとした書斎には、赤い本を。白をベースとしたリビングには、黒系のランプを。
差し色を加えることで、空間のトーンをあげたり、空間を引き締めたりしているのだとか。
「スタイリングはお化粧にも似ています。お肌のベースをつくって、最後にリップやチークで引き締める。ファッションもそうですね。ちょっと差し色をすることで全体のカラーバランスがとれるんです」
「日々の疲れを癒してくれるのは、やっぱり毎日帰る住まいです。だからもっとみなさんに、暮らしを大事にしてほしい。快適で元気に過ごせる部屋の空間力を感じていただけるとよいですね。
インテリアのもっと先のこと、『ここに暮らす方がいる』ということを考えながらスタイリングをしています」
黒田さんによって、これまで以上に魅力が引き出された青山モデルルーム。みなさんもぜひ、遊びにきてください。
CRAFT青山モデルルーム
※見学相談は予約制
styling
黒田美津子(Laboratoryy)
@mitsulab
photo
Natsuhiko Hirase
@hirasephoto
<著者>中野 瀬里乃
大学卒業後、出版社・フリーライターを経て、2013年リノベーション会社CRAFTへ入社。自社HPやオウンドメディアにてリノベーション・不動産・建築・インテリア関連の事例紹介やコラムを多数執筆。