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「120%の完成度のキッチンをつくり続けるのが、アムスタイルです」
オーダーメイドのキッチンメーカーとして独自のブランドを築いてきたアムスタイル(amstyle)。鏡面の深み、ディテール、扉を開けた時の美しさは、他社の追随を許さないほど徹底した計算と追求がなされていました。
後編では、アムスタイルのセオリーをお聞きしたいと思います。
※前編のインタビューは、こちらをご覧ください。
「楽器を塗装する技術をキッチンに活かせないか」
アムスタイルの創業は2000年。
「今でこそ、多くの人が”キッチンは家具”ととらえていますね。しかし創業当時の日本では、キッチンは”住宅設備”の域を脱することができませんでした。欧米のようにキッチンをダイニングの中心に置いたり、インテリアの一部として際立たせるという考えはなかった。客観的に見て『日本はまだキッチンが弱いな』と感じていたんです。
私はもともと音楽業界で舞台制作のディレクションを行っていたため、楽器業界とのつながりがありました。楽器って、すごく美しいんです。飾ってずっと眺めていたくなるくらいに。それで『楽器を美しく塗装する技術をキッチンに活かせないか』と考え、スタートしたのがアムスタイルです」
グランドピアノの隣で、キッチン製作をスタート
当初はグランドピアノを作っている隣でキッチンを制作していたそうです。
「当時としては奇抜な発想でしたから、時期が早すぎた印象もありましたね。でも少なからず興味を持ってくれた方はいて、名古屋や鎌倉からと意外なエリアからの問い合わせが相次ぎました。まったく無名な会社でしたから、『信頼して任せてくれているんだ』とすごくうれしかった」(清水社長)。
ごくわずかな人数でスタートしたアムスタイル。最近では、海外からの引き合いも増えてきたとか。
「海外はヨーロッパのキッチンが主流で、よいキッチンがたくさんあります。にもかかわらず、このショールームでキッチンを見ると『全然違いますね』と言ってくださる。シンクの納まりを見て、手触りをたしかめて、『ここまでディテールにこだわったキッチンは見たことない』と。18年前よりも一般の方の意識が高まっていると感じます」
「”キッチンを見た人が何を感じるか”を徹底的に考える」
海外キッチンの参入、大手キッチンメーカーの新商品開発など、キッチン市場は年々拡大しています。そこで競合についてたずねてみました。
「品質の面では、キッチンの競合を考えたことはありません。それぞれコンセプトも製造、販売方法も違っているから。でも気になるのは1000万、2000万クラスの高級車ですね。たとえばインパネには革やアルミ、突き板やスモークガラスが使われています。小さなスペースに厳選された素材が組合わされていて、キッチンと通じるものがある。控えめな演出、過剰な演出、どちらも参考になります。要は、”キッチンを見た人が何を感じるか”を徹底的に考えることが大事なんです」
「お客さまの具体的な要望に対してはオールイエス」
アムスタイルのキッチンには3つのコンセプトモデルがあります。顧客はその中からベースとなるモデルをセレクトし、カスタマイズ。一見選択肢が少ないように思えますが「お客さまの具体的な要望に対してはオールイエスです」と清水社長。
「たしかに、アムスタイルのスタイルに”共感した方”だけがオーダーしてくださる。だからと言って、私たちの考えを押しつけることはありません。リクエストがあれば何でもやるし、基本的に『ノー』ということはない。でも最終的にはアムスタイルでアレンジするから、完成時は必ずアムスタイルらしさが残るんですよ」
120%の完成度のキッチンをつくり続けるのが、アムスタイル
「創業以来ずっと、私がデザインコンセプトの決定、ディテールの設計を行ってきました。そして設計スタッフがアムスタイルのルールに基づき素材・寸法・重さを決定します。最終的なアレンジを別の人間が行うことで、様々な能力が加わり、よりよいものに仕上がります」(清水社長)
デザイナーでもあり、代表でもある清水社長が大きなベクトルを掲げて、スタッフの一人ひとりが情熱と技術を注ぎ込む。仕事の進行としてはアトリエ設計事務所に近い印象を受けました。
「80%に妥協したキッチンを10並べるのではなく、120%を5つだけ並べる。これがアムスタイルのやり方です」
まとめ
自社のことをとても冷静に、客観的に見つめながらお話をしてくださった清水社長。そこには少しの誇張もなく、ある種の恬淡さすら感じさせます。しかし、最終的に伝わってくるのは「キッチンを見てもらえばわかる」という絶対的な自信。
購入した顧客とは、メンテナンスはもちろん、リフォームや別荘の建築などで付き合いが続いて行くそうです。創業以来ずっと、1ミリの妥協も許さず自社のクオリティを守り続けてきたアムスタイル。その揺るぎない姿勢と自信が、熱狂的なファンの心をつかんで一生離さないのだと思いました。
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創業1993年。独自のスタイルを発信し続け、業界内でも異彩を放つキッチンメーカー。東京・代官山と福岡・赤坂の2カ所にショール―ムも。
<著者>中野 瀬里乃
大学卒業後、出版社・フリーライターを経て、2013年リノベーション会社CRAFTへ入社。自社HPやオウンドメディアにてリノベーション・不動産・建築・インテリア関連の事例紹介やコラムを多数執筆。