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横浜にある低層マンションの最上階。高い勾配天井と浮遊感のあるTVボード、それから行き止まりのない回遊性。Tさんの「好きなもの」を凝縮させた住まいが広がっています。
物件探しもリノベーションも、ぎりぎりのところまで妥協しなかったTさんは「ちょっと変わった間取りで、好きなものに囲まれて暮らしたかった」と話します。
デザイナーズホテルのような空間で、物件探し〜リノベーションまでのお話をうかがいました。
希望のマンションを指名買い。100㎡の部屋が出るまで待っていた
CRAFT(以下C):天井が高くて開放感がありますね。窓からの眺めもよく、居心地がよいです。こちらのマンションを購入されたきっかけを教えていただけますか?
奥さま:はい。子どもが通っている学校の学区内で、100㎡の中古マンションを探していました。そうすると物件が限られてしまい、候補になったのは2つのマンション。そのひとつがこちらです。
C:たしかに〈学区×100㎡以上〉のマンションとなると、選択肢が限られてしまいますね。その2つの物件に目星をつけてクラフトにご相談くださったとか。
奥さま:はい。でもその時は物件のことも、リノベーションのこともざっくりとしかイメージできなくて…。クラフトの不動産担当の方に物件購入~リノベーションの流れを聞いたり、私たちの理想をお話ししたことで、具体的になっていきました。
よい部屋が「市場に出る前」に声をかけていただいた
奥さま:後日、担当の方と一緒に、売りに出た部屋を内見したんです。でもひとつは狭くて、もうひとつはリノベーション済みで好みじゃない。どちらも購入を考えられず、理想の部屋が売りに出るのを待つことに。でも確実に買える保証はないので心配はありました…。
C:それでクラフトの不動産担当は、ご希望の物件をメインで取り扱っている不動産会社にTさんをご紹介させていただいたのですね。「100㎡以上の部屋が出たら、すぐにTさんに声をかけてください」と不動産会社に伝えたとうかがっています。
奥さま:そうなんです。おかげでよい部屋が「市場に出る前」に声をかけていただけました。「できれば最上階がいいな」と思っていたら、まさかの角部屋で最上階!眺めもよくペントハウスのようで、まさに理想通りの物件でした。
「ちょっと変わった間取り」にするにはリノベーションしかない
C:物件価格は2850万円、リノベーション価格3200万円と、ほとんど同じバランスでコストをかけられていますね。リノベーション費用の方が少し多いくらいです。
奥さま:「やりたいことをやると、リノベーションに費用はけっこうかかるだろうな」と思っていたので、多めに予算をとっていました。とはいえ、プランニングをしているうちにやりたいことが増えてしまって(笑)。
少し予算オーバーでしたが、物件費用とリノベーション費用をあわせて「住宅ローン」で借り入れることができてお得だったと思います。
C:ちなみに新築マンションを買うこともできたと思うのですが、ご検討はされなかったのでしょうか?
奥さま:まったく考えませんでした。ほとんどのマンションは玄関の廊下の両サイドに部屋があって、その先がLDKで…という画一的な間取りが多いですよね。結婚して何度か引っ越しをしているうちに、私は「ちょっと変わった間取り」が好きなことに気が付いたんです。そのためには「リノベーションしかない」と思っていました。
C:ちょっと変わった間取り…。納得です。
奥さま:それに私たち夫婦はインテリアが好きで、「気に入ったものだけに囲まれて過ごしたい」タイプなんです。デザインにもこだわりたいから、やはりリノベーション以外で実現できると思えませんでした。
間仕切りを減らして、家中がつながるような間取りに
C:物件が決まって、いよいよリノベーションのプランニングですね。きっとたくさんのご要望があったのではないでしょうか。
奥さま:はい。一番の要望はやっぱり間取りでした。リノベーションスープを見たりしながら「2WAYの動線がいいな」と思っていたんです。
ですので「回遊性」「つながり」「仕切りはいらない」というようなことをデザイナーさんにお伝えし、廊下〜洗面〜LDK、それと廊下〜キッチン〜LDKの動線を作っていただきました。
そこに「ガラスのドアや間仕切りを多用して連続性を持たせてほしい」というリクエストもしました。こちらもこだわりポイントですね。
もうひとつは勾配天井を活かして、天井高をあげること。最上階がいいなと思っていた理由のひとつです。
C:そうですね。必ずできるとは限りませんが、勾配天井をあらわしにして天井高を高くできるのは、最上階の特権ですね。
奥さま:それから子ども部屋は「リビング横に2つつくると、きゅうくつかな…」と思っていたのですが、デザイナーさんに「勉強や寝たりするだけのコンパクトな子ども部屋をつくることも増えていますよ」と教えてただいて。たしかに子どもは、リビングで絵を描いたり、宿題をしたりして過ごすことが多いです。
子どもたちが独立したら、2部屋を1部屋にして使うつもりです。
大きなオープンの洗面カウンターはこの家の「見せどころ」に
C:お住まいのなかでとくに気になったのが、こちらのオープンの洗面カウンターです。脱衣室から出たところの通路というか、リビングのTVボードのちょうど裏側。とてもめずらしいレイアウトですね。
奥さま:ホテルライクな洗面カウンターを「見せどころ」にしたかったんです。
C:洗面カウンターを見せどころに?
奥さま:洗面の設備はミラー、水栓、ボウルと選択肢がとても多いので、組み合わせによっては住まいのハイライトになると思っていました。でも2ボウルの洗面カウンターを脱衣室に配置することがむずかしくて。いろいろ検討していただいた結果、TVボードの裏側、脱衣室の入り口前に配置することにしました。
オープンで開放的に使えるし、リビングの窓に面しているから自然光が注ぎます。帰宅してからドアに触れずに手を洗うことができるので、とても便利で衛生的。洗面の壁は漆喰なども考えていたけれど、水ハネが気になるのでタイルにしました。とにかく洗面まわりのしつらえにはこだわりましたね。
C:洗面だけでなく他のスペースも、間取りと素材を細かくじっくりと検討されていますね。大変ではありませんでしたか?
奥さま:まったく!打合わせでお話させていただいたことが、毎回、次の打合わせのときにはプランに細かく反映されていました。理想にどんどん近づいている感じがして、とてもたのしかったです。
奥さま:はじめに3つのラフプランをいただいて、一番理想に近かったのがこちらのプランです。デザイナーさんが希望をしっかり汲んでくださり、「間取りはこれこれ、イメージ通り!」とうれしかったことを覚えています。
引っ越してから、家事がとてもラクになった
C:こちらに引っ越されて、変わったことはありますか?
奥さま:共働きで忙しいけれど、家事のストレスがまったくなくなりました。私の生活が一番変わったかもしれません。
浮遊感のあるデザインが好きなのでTVボードや洗面台などは壁掛けにしていただいたんです。すると掃除機をかけやすくなりました。それに家中を8の字にぐるぐると回遊できるので、移動がスムーズです。廻れる動線のおかげで広さをより感じることもできますし、何よりくぐり抜けるような感覚は毎日とてもワクワクします。
日頃から「どんな物件が理想か」「どんな間取りにしたいか」を考えおく
C:お話を聞いていると、かなりお住まいに満足されていることがわかります。ご経験から「中古物件を買ってリノベーション」するときに大切なことを教えていただけますか?
奥さま:住み替えの時期が決まっていなくても、日頃から「どんな物件が理想か」「どんな間取りにしたいか」などをその理由と一緒に意識しておくことが大切だと思います。物件探しやリノベーションがスタートしたら、トントンと進んでいきます。立ち止まる暇がないんです。だから自分の理想をはっきりとさせておくことで、戸惑うことが少なくなると思うしデザイナーさんへも伝えやすい。数多くの「こうしたい!」の中で選びとる作業をしておくことで、後悔のないリノベーションにつながると思います。
まずは「自分が好きなもの」を自分で知ること。これに尽きるのではないでしょうか。
インタビュー後記
中古物件探しからスタートし、ずっと気になっていたマンションの最上階を購入。さらに間取りやデザイン、設備、素材にいたるまで、すべてご自身の「好きなもの」でリノベーションしました。
「普段から自分の好きなものを考えておくこと」が大事だと教えてくださったTさん。リビングに設けたバイオエタノール暖炉は、2010年にフィギュアスケート競技を見るためバンクーバーを訪れたときに知ったそうです。「はじめて見たときあまりに素敵で、すぐにメーカーをチェックしました」。
間取りもデザインも、リノベーション会社のプロに相談しながら決めるのもよいでしょう。でも日頃からアンテナを高くして、たとえばレストランやホテルで見た「いいな」と思うものをチェックしておくのも一つの方法。記憶にメモを残しておく。いつかリノベーションするために。そういう「いつか」のためにまわりを眺めてみるのも、たのしいと思いませんか?
※こちらの詳しいプランはリフォーム・リノベーションデザイン事例#17249をご覧ください。
<著者>中野 瀬里乃
大学卒業後、出版社・フリーライターを経て、2013年リノベーション会社CRAFTへ入社。自社HPやオウンドメディアにてリノベーション・不動産・建築・インテリア関連の事例紹介やコラムを多数執筆。