物件データ
お父さまが建てたという築40年の戸建て。RC造のために冬は寒く、細かく分かれた窮屈な間取りが気になっていたそうです。音楽や映画、写真、運動など多趣味なIさんが望んだのは、2~3階はご夫婦とお母さまが暮らす生活スペースとし、1階にプレイルームを作ること。黒スチールやモルタル、古材などラフな質感で構成し、ベースメントのような仕上がりに。構造躯体を動かさないよう既存を活かしつつ、トレーニングスペースやミニバー、シャワールーム、インナーテラスなどをゆったりと配置しています。ゆったりとした土間には友人を招いて、会話を楽しんだり、お酒を振舞うことも。一人でギターを弾いたり、本を読んだり、奥さまと映画を観たり。一人でも、ご夫婦でも、心地よく過ごせるプレイルームが誕生しました。
BEFORE写真
断熱材やペアガラス、寒さ対策も万全
ビルドインガレージなどいくつかのプランをご提案し、Iさんが惹かれたのは1階のワンフロアを全てプレルームにするプランでした。たくさんの趣味をお持ちで、とくにカメラは個展を開催するほど。そこで、プレイルームにパリやロンドンで撮影した写真を飾りたいとお考えだったそうです。「既存の構造躯体を動かさずに間取りを変えたい」というご要望があったため、壁を残しつつご希望通りにゾーニング。制約があるなかで、ご希望のスペースを確保しています。
冬でも暖かく
配管スペースを撤去して天井高を上げ、開放感をアップしました。窓際にはプロジェクタースクリーン、天井にスピーカーを導入し、大画面で映画をたのしめるようにしています。またRC造で寒さが気になっていたことから、建物全体に断熱材をしっかりと充填。さらにペアガラス&断熱サッシへ交換し、床暖房を設置。万全な寒さ対策により、一年中気持ちよく過ごせるようになりました。
テクスチャーが際立つ
海外生活の長いIさんは、たくさんの街や空気に触れて独自のセンスをお持ちでした。そこで、素材や納まりにこだわってご提案しています。室内窓は、まわりの壁に厚みを持たせ、腰壁を黒く塗装し、存在感を際立たせています。床にはモルタル、天然木材、タイルといったさまざまな表情の素材を採用。それらがぶつかるエリアには、古材チークのピースをセレクト。ランダムに入り混じる木目と節は、空間のリズミカルなアクセントとなっています。
土間のセカンドリビング
広いモルタルの土間スペースは、テーブルやイスを置いてセカンドリビングに。モルタルに古材チークを等間隔で埋め込むことで視線をコントロールし、通路に奥行きを感じさせています。その先は、シックなオレンジの塗装の壁が。「その先には何があるんだろう?」とゲストの好奇心を刺激する工夫。右サイドの壁は、特殊塗装。鉄板が錆びたような物憂い雰囲気は、Iさんの撮影した写真を引き立てています。
こだわりのミニバー
土間スペースとプレイルームの間にミニバーを設けました。どちらからもアクセスがスムーズで、さっと飲み物を取り出せます。壁は土間スペースから続く特殊塗装。カウンターは古材テイストのメラミンを採用し、どこか懐かしいような雰囲気に仕上げています。Iさんが購入した思い入れのあるタイルは、水ハネ防止として使用しました。ゲストからは見えない部分ですが、ご自身で心地よく使えるように仕上げにこだわっています。
モノトーンのトイレ
トイレはモノトーンでシンプルにまとめ、NYスタイルのモダンなインテリアに一新。床は黒いタイルをパターン貼りに、壁は3種類のタイルを使ってリズミカルに仕上げています。いずれはこちらにもモノクロの写真を飾る予定があるため、ライトは写真が美しく見える位置に設置しました。
明るくシンプルなLDK
2階のLDKは、奥さまの好みを取り入れました。独立していたキッチンはオープンにし、1部屋をLDKに取り込んでスペースを拡大。キッチンはご夫婦でセレクトしたCUCINAを採用しています。落ち着いたトーンの木製パネルは、家具のような上質な印象。吊り戸棚を設けないことで、すっきりとさせています。階段下を利用してパントリーを設け、必要な収納量をキープ。使いやすく、生活感のないキッチンとしました。
美しいグリットの
室内窓
残した躯体壁には、室内窓を設けました。窓と引き戸のグリッドの取り方にこだわり、整ったイメージに。天井まで届く引き戸は、下がり壁による圧迫感をなくしています。細い黒スチールを使った、ガラスの格子の室内窓と引き戸。引き戸を開け放つと窓枠とグリットが美しく重なり、スタイリッシュなイメージをもたらします。ガラスの先に連続するモルタルの床が、より広がりを演出していることもポイントです。
シンボリックな箱と回遊性
バーシンクや納戸をご希望だったことから、L字の動かせない躯体壁内に集約しました。壁に厚みを持たせ、梁や下がり壁と縁を切って独立させることで、大きな箱が鎮座している印象に。こちらの重厚な箱を中心に、フローリング・バーシンク・納戸・土間をゆったりと回遊できるように。シンボリックな箱を軸に、スペースを構成しています。
窓際にカウンターベンチ
「いつかここで写真展を開催したい」と、土間の2箇所の窓際にカウンターベンチを設置。「人研ぎ仕上げ」という職人さんが手作業で研ぎ出していく造作は、間近で見ると表情豊かであたたかさを感じさせます。もう一箇所は、ラフな質感の古材を使用。カウンターベンチの下部は収納となっており、これまで集めた本やレコードが収まります。たくさんの友人を招いても、靴のままベンチでくつろいでもらえるようになりました。