物件データ
I さんが購入したのは、丘の上のヴィンテージマンション。昔から古いものに惹かれ、車も家具もヴィンテージを愛用していました。ハンス・J・ウェグナー、ジャン・プルーヴェ、チャールズ & レイ・イームズなどお持ちの家具がなじむインテリアをご希望。ただ古いだけではなく、「モダンなミッドセンチュリー」を目指してデザインリフォームしています。邸内には石と木をふんだんに使い、重厚感あふれる雰囲気に。黒皮鉄や左官仕上げを取り入れて、素材の豊かな風合いを感じさせていることもポイントです。木・石・鉄という普遍的な素材を使った空間構成により、ヴィンテージ家具がこの上なくフィット。大きなWICを移動し、視線が抜ける伸びやかなLDKを新設。玄関ドアもガラスに替え、視線が奥まで通るように。ガラスの向こうへ続く石の壁により、玄関に入った瞬間に、圧倒的なインパクトを感じます。
BEFORE写真
低い天井高、壁式構造
制約を感じさせないプランに
天井高の低さ、壁式構造など、いくつかの制約があったヴィンテージマンション。そこで「広く感じさせる」ようプランニング。リビングに隣接していたWICをなくし、空間を拡大。玄関〜廊下〜リビング・ダイニングを直線上にレイアウトし、視線が抜けるようにしました。タイル・石・木での空間構成は、現調時にデザイナーがイメージしたもの。窓に映る豊かな緑や空、柱型による凹凸のないフラットな空間を活かしながら、伸びやかな空間に仕上げています。
ミッドセンチュリーの空気感
玄関〜リビングにかけて、床にはクラフト新宿モデルルームと同じ天然石を貼りました。天井にはサペリマホガニーを。うねりの強い板目を使用し、木のリアリティを演出。ミッドセンチュリーの空気感を大切にしています。木と石という存在感のある素材を使用しつつも、直線を取り入れた空間構成により、整然としたイメージをキープ。お持ちのヴィンテージ家具やポスターがなじむようにデザインした結果、ほとんど「家具のために作られた」空間に。
インテリアとなるTVボード
リビングのTVボードは、オリジナルデザインです。お持ちの家具と色合いを合わせ、ブラックガラスの扉でモダンに。天井と同じサペリマホガニーを使って統一感を出しました。TVボード・デスクカウンターを白い壁と天井で囲み、存在感を強調したこともポイントです。まるで木のボックスが浮いているような軽やかさを感じさせます。白い壁と天井部分は、塗りムラを残した左官仕上げ。右側の壁に厚みを持たせ、よりテクスチャーを際立たせています。
奥まで続く石の壁
玄関~リビングにかけて間口を広げ、ゆったりとした印象に。ゲストを迎えるのにふさわしい玄関となっています。またエントランス~廊下~リビング・ダイニングは、床・壁・天井に石と木を連続させたこともポイントです。ガラスの向こうまで同じ素材が続き、その視線の先には緑と空が。玄関に入った瞬間から心地よさが広がります。サイドのカウンター収納もFIXガラスの先、さらに寝室ドアの前をのぞいてリビングまで連続。エントランス~リビング・ダイニングというシークエンスに徹底的にこだわることで、玄関に立つ人の意識の流れをコントロールしました。
生活感のないキッチン
独立型のキッチンはヴィンテージ家具と色合いを合わせ、リビング・ダイニングから見えた時に統一感を感じられるようにしています。CUCINAでオーダーしたキッチンは、面材にもこだわりました。天板はクオーツが入った黒い石を採用し、家具のように重厚な趣に。シンクやガスコンロの壁は、上質感を与えるタイルを使用。背面収納の壁にはLDと同じ割肌の石を貼り、つながりを演出。既存サッシはステンレスで古い印象だったため、黒く塗装して木製のブラインドを取り付けています。生活感のないモダンなキッチンが誕生しました。
目覚めのよい寝室
寝室は廊下部分を取り込んでスペースを広げています。ベージュ系のタイルで上品にまとめ、気持ちのよい朝を迎えられるように。ベッド周りのみフローリングとし、ハンス J.ウェグナーのベッドをフィットさせました。ベッドヘッドの背面の壁にはトラバーチンを。間接照明を入れて、ぬくもりある大理石の表情をたのしめるようにしています。入り口に設けた黒皮鉄のニッチには、お好きなアイテムを飾ることができるように。対面はちょうどリビング側のデスクカウンターとなっており、黒皮鉄板が壁を貫いているようなイメージです。
静かなる書斎
ご主人さまの書斎は、寝室の奥にレイアウト。完全に独立した空間で、誰にも邪魔されることなく仕事に没頭できます。カーペットはダークグレー、壁と天井はグレー。無駄なカラーを排除し、集中力が高まるように。クールな空間にトラディショナルな空気をもたらすのは、ヴィンテージのキャビネットとデスクです。浮いてしまいがちな白いエアコンは、グレーに塗装したルーバーで目隠ししています。Iさんのイメージする世界観を徹底的に追求した書斎です。
錆びた風合いの石
玄関~リビング~ダイニングの大きな壁面に貼った割肌の石。長年の雨風によって錆びたような風合いの石を選びました。キッチンの開口部の内側にも貼ることで、リアルに石を積み上げたようなリアリティを。Iさんが集めてきたSX-70のポラロイドカメラやポルシェのダイキャストカーなどが調和しています。ダウンライトを壁に寄せることにより、石の陰影や凹凸を強調しました。ライトを灯すと、より奥行きある表情が生まれます。
ラウンジで過ごすように
リビング壁面にはドイツのヴィンテージポスターを貼りました。ウェグナーの1人用ソファを2つ置き、ラウンジさながらのくつろぎスペースとしています。ポスターとソファはシンメトリーにレイアウトし、完璧で隙のない美しさにこだわりました。リビングのアイポイントにもなっています。(羊毛を手織りで作った)ベニワレンのラグの包み込むような足ざわりとともに、Iさんやゲストに豊かなくつろぎを与えてくれます。
黒皮鉄のデスクカウンター
TVボードのサイドにはデスクカウンターを造作しています。TVボードと同じく白いフレーム内に納めてユニットのような印象に。カウンターと棚は黒皮鉄。経年変化とともに錆やキズが生じ、より風合いが増していきます。棚には花器や本、オブジェなどが余白を持って飾られており、デスクながらも飾り棚のようなゆとりを感じさせます。