物件データ
おばあさまから譲り受けた一戸建てをリノベーションし、暮らすことにしたKさんご夫婦。板張りの天井や壁、リビングの床柱など、材木問屋を営んでいたおばあさまがこだわって取り入れた木部はできるだけ残しながら、モダンな空間に仕上げました。和室と広縁、居間で構成された空間は、一体のリビング・ダイニングに。コの字型で独立した印象だったキッチンは、回遊性があり作業がしやすいアイランド型に。欄間の漆喰壁は解体し、ダイニングと居間をひと続きの空間にすることで、開放感を高めつつ、鴨居とその上の吊束だけ残して空間のアクセントにしています。ステンレスと木を組み合わせたキッチンや、モルタル仕上げの洗面台など、新調した設備は特徴的なデザインを採用。グレーや黒をベースとしたシックで高級感のある住まいとなっています。
BEFORE写真
経年で味わいが増した自然素材と、
最新の設備がミックスされた空間に
幼少時から親しみがあるおばあさまの家。木や漆喰といった自然素材のぬくもりや質感はそのままに、新しい要素も取り入れながらお好みの空間に仕上げました。住宅関連にお勤め経験があるKさんご夫婦は、住まいのトレンドに精通していたため、最新の器具やモダンな設備を数多く採用。サッシは最新のタイプに交換して防犯性を高めています。通常は綿密な打ち合わせのうえ、設計図の完成後に着工しますが、既存をできるだけ活かすため、工事を進めながら現場の状況に応じて細かな部分を決定していきました。
ダイニング・キッチン
ダイニングの既存の壁は上部が漆喰、下部は焼き杉板が張られていました。汚れやコンセントの跡などを隠すため、これらを白で塗装。杉板の木目を残すように塗り素材感は損なわず、古びた雰囲気を一新しました。キッチンの天井は新たに板を張っていますが、リビング・ダイニングの天井と似た板材を張ることで、LDKの一体感が出るように計画。レンジフードは特注で加工して、ゆとりのある天井高が活かせるようにデザインしました。
ダイニング・キッチン
玄関と同様に既存の障子窓を活かし、和のテイストを残しながらシンプルな空間に仕上げました。障子紙はワーロン紙に貼り替えて耐久性を高め、掃除がしやすいように配慮しています。板張りの天井はそのまま活用するため、天井の照明は、もともと取り付けてあった照明の形状に合うタイプを設置。黒色フレームのタイプを採用することで、既存の天井と調和を図りました。
リビング・ダイニング
居間とダイニングの床には、オークの無垢フローリングを張りました。床の間の中央で存在感を放つカエデの床柱はそのまま残し、床をタイル貼りに。上部を間接照明で照らすことで、シンボルツリーのような趣に仕上げています。テレビ台の上部にはプロジェクタースクリーンを設置。家族が集まり、大画面を鑑賞しながらだんらんのひとときを過ごせます。
キッチン
アイランドキッチンと背面収納は、CUCINAでオーダー。3メートルもの幅があり、ゆったりと作業ができるようになりました。ステンレスと木を組み合わせたデザインが、和風建築と馴染みます。下部には間接照明を入れてモダンに演出。勾配天井は補修のため張り替えましたが、鴨居などと同じ色・質感の米松を採用し、既存のデザインを活かしました。キッチンにも床暖房を入れ、快適性を高めています。
洗面室
モルタル仕上げの洗面台と木目のオープン棚が目を引くサニタリー。床はグレー、天井は黒とモノトーンをベースにデザインしました。床には前面やサイドのミラー壁はタペストリー加工で、水がはねても掃除がしやすいように配慮しています。隣に設けた洗濯機置き場は生活感が出ないよう、扉で隠せるように。洗濯機の上部にはガス乾燥機を収め、すっきりと見せています。
トイレ
床には廊下やキッチン、洗面室と同じ石調のタイルを貼り、壁はモルタルで塗装。背面の壁は上部の窓をなくし、縦長のFIXガラスを入れました。壁面はヘキサゴン(六角形)タイルで仕上げています。壁に設置されていた換気扇は天井扇に変更し、天井と同じ黒で塗装してシックな空間を演出。手洗いカウンターはタモの一枚板を使い、グレーの手洗い器をセットするなど、様々な質感が馴染むように工夫しています。
お気に入りの家具が
調和する
木にこだわって建てられた住まい同様、Kさんの家には思い入れのある家具がいくつもありました。一枚板のリビングテーブルは、かつて和室で座卓として使用されていたもの。代々受け継がれてきたダイニングの和箪笥は、江戸時代から使われてきたものだそうです。年代物の家具と、新たに購入したダイニングテーブルなど新しい家具、どちらともマッチする空間をデザインしました。
新築時の面影はそのままに
玄昌石の土間や無垢一枚板の式台、昔ながらの聚落壁(じゅらくかべ)、飾り柱、葭(よし)や杉の板を張った天井、美しい木目の靴箱など、こだわりをもって建てられた玄関ホールは、できるだけ既存の意匠を活かしました。明かりとりの障子窓はワーロン紙に貼り替えて耐久性を向上。廊下には雰囲気を壊さぬよう、シンプルなシューズインクロゼットを設けて収納力を高めるなど、使い勝手を高めています。
LDKの気配を感じる廊下
廊下とLDKを仕切る建具は開き戸から引き戸にして、開け放しやすいように。自然光や風が行き渡ります。板張りだった廊下に石調のタイルを貼り、その先のキッチンも同じ床材で統一することで空間の連続性を高めました。写真左側の壁はもともと和室の出入り口でしたが、壁にしてすっきりとした印象に。既存の聚落壁と同様に仕上げています。