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そろそろ戸建てに住み替えたい…そんなとき、建て替えや新築ではなく、リノベーションを前提に中古戸建てを購入する人が増えています。あえて中古戸建てを選ぶことに、どのようなメリットや魅力があるのでしょうか? 今回はリノベーションにかかる費用やローンの組み方、中古戸建て物件探しのコツ、良いリノベーション会社の選び方などを解説します。
中古戸建てリノベーションのメリット
〈メリット1〉憧れの街で住まいを見つけやすい
通勤のしやすさ、実家へのアクセス、子どもの学区などの条件を満たす街。このエリアに住みたい!と思ったものの「理想的な新築戸建て物件がなかなか見つからない」というお悩みの声があります。
特に都心部には新規に戸建てを建築する土地があまり残っていないため、新築物件の売出し自体が少ないです。運良く希望のエリアに物件が見つかっても、立地条件や広さなどの選択の余地がないかもしれません。
そこで中古戸建てのリノベーションにも目を向けてみれば、選択の幅が大きく広がります。不動産市場に流通する中古戸建ての物件数は豊富で、幅広い地域に点在しているため、希望のエリアに理想的な家を見つけられるはずです。
〈メリット2〉新築よりも費用を抑えられる
中古戸建ては築年数の経過とともに価格が下がっていき、築20年ほどからはほぼ横ばいになります。物件の選択肢が豊富なため、立地条件や築年数などの条件から絞り込み、予算に合わせた住まい選びが可能です。
国土交通省の令和2年度住宅市場動向調査報告書によると、中古戸建てを購入した世帯における住宅の選択理由として最も多かった回答は「価格が適切だったから」でした。安く購入できた分を、リフォーム・リノベーション費用にまわすこともできます。
〈メリット3〉新築よりも広い家を買いやすい
中古戸建てを選択することで、新築戸建てよりも広い家を手に入れやすくなります。東日本不動産流通機構の首都圏不動産流通市場の動向によると、2020年に東京都で売買成立した新築戸建ての建物面積の平均は93.59㎡、中古戸建てでは102.39㎡(築19.64年)でした。中古戸建ての方が8.8㎡広いため、5畳ほどの空間をもうひと部屋確保できるということになります。
〈メリット4〉自由な間取りにリノベーションしやすい
内装や設備が古く、使いにくい間取りの中古戸建てでも、リノベーションで一新できるので問題ありません。家族構成やライフスタイルに合わせて、理想の住まいにオーダーメイドすることができます。
マンションの場合、リフォームできるのは専有部分(室内)のみ。管理規約によりリフォームの内容に細かい制限が設けられていることもあります。その点、戸建てにはそのような制約がなく、建築基準法の範囲内であれば自由なリノベーションが可能です。
中古戸建てリノベーションのデメリット
〈デメリット1〉建物の条件によっては費用がかさむ
中古戸建ては購入費用を抑えることが可能ですが、築年数が古い物件は要注意です。基礎や構造躯体の劣化が進んでいたり、新耐震基準に適合していなかったりすると、これらの補強工事・耐震工事に想定以上の費用が掛かるケースがあるためです。
建物の状況によっては、物件の購入費用とリフォーム費用を合わせると新築住宅の価格と変わらないか、上回ってしまう可能性すらもあります。それならば建て替えを検討したほうがよさそうです。
〈デメリット2〉住み始めるまでに時間がかかる
新築住宅は引き渡し後すぐに住み始めることができますが、中古戸建てをリノベーションする場合は、プランニング〜工事〜引き渡しまで6〜9ヶ月ほど掛かります。また、賃貸住宅の家賃や仮住まいの費用がかかる場合、中古戸建てのローン返済と重なる期間が生じることも留意しておきましょう。
就職や転職、お子さまの進学などに合わせて新居で暮らし始めたい場合には、余裕を持って早めに動き始めるのがおすすめです。
リノベーションに適した中古一戸建て住宅の見つけ方
2000年以降に申請された戸建て
住まいの安全性の判断基準として「新耐震基準の戸建てなら安心」と聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。これまで住宅の耐震性を高めるために建築基準法の見直しが重ねられてきており、なかでも大きな改正のあった1981年以降の基準が新耐震基準と呼ばれています。
さらに、1995年に発生した阪神淡路大震災で多くの木造住宅が被害を受けたことから、2000年の法改正でより厳しい内容となりました。なお1981年・2000年という区切りは建物の建築時期ではなく、建築確認申請の時期となります。
・旧耐震基準(1981年以前)…震度5程度の揺れで倒壊しない、要耐震補強
・新耐震基準(1981年以降)…震度6強〜7程度の揺れで倒壊しない水準
・2000年基準…基礎や構造の水準をより強化(木造住宅)
新耐震基準の戸建ては建物により性能に差があるため、耐震診断を受けるのがおすすめです。実際、平成28年の熊本地震(最大震度7)では、新耐震基準でも倒壊した家がありました。2000年以降に建築申請された物件であれば、基本的に耐震補強工事は不要のため、リフォームのコストを抑えることができます。
大手ハウスメーカーの戸建て
2×4(ツーバイフォー)工法、軽量鉄骨造、重量鉄骨造といった、堅牢性を強みとしている大手ハウスメーカーの戸建ては、建築時の耐震基準よりも高い水準を満たしているケースが多いです。大手ハウスメーカーの注文住宅で、定期的な検査と適切なメンテナンスが施されていれば、築年数が古くても耐震補強工事が不要な可能性があります。
鉄筋コンクリート造や鉄骨造はリフォーム向き!?
リフォーム向きの中古戸建てとして特におすすめの構造が、RC(鉄筋コンクリート)造・鉄骨造です。とりわけRC造は耐火性の高いコンクリートに鉄筋を入れることで耐久性をより高めており、適切なメンテナンスを施せば100年以上持つといわれています。地震や洪水などの自然災害による倒壊リスクもほかの構造に比べて低いです。
中古戸建ての価格は築年数の経過とともに下落するため、築20年を超える物件はほぼ土地だけの値段で購入できるケースも。RC造・鉄骨造の新築費用はほかの構造よりも高額ですが、中古住宅を選択すればかなりお得に手に入る可能性があります。
RC造・鉄骨造の建物は柱と柱との間を広く確保できるため、間取り変更の自由度が高く、リノベーション向きといえます。フロア全体に広がるLDKや、大きな吹き抜けといった大胆な間取りも実現可能です。
東京の中古戸建てリノベーションの注意点
中古戸建リノベーションの耐震リフォーム
「中古一戸建て住宅の見つけ方」の項目でも解説しましたが、1981年よりも前の中古戸建ては旧耐震基準で建築されているため、安心して暮らすためには耐震リフォームが必要になります。
また、1981年以降の住宅は新耐震基準で建築されていますが、経年劣化などもあり建物ごとに耐震性の差があるため、耐震診断を受けて安全性を確認するのがおすすめです。必要に応じて耐震リフォームを施しましょう。
2000年以降に建築申請された戸建てであれば、基本的に耐震補強は必要ありません。
中古戸建リノベーションの断熱改修
築年数の古い戸建てでは、夏の暑さ・冬の寒さにお悩みの方も多いです。原因は建物の断熱性能の低さで、なかには解体してみたら断熱材が入っていなかったというケースもあります。断熱性の不足した家で暮らすと体調を崩しやすく、冷暖房効率が悪いため光熱費がかさみます。
そこで壁や床に断熱材を入れ、窓は高性能なサッシに入れ替えれば、断熱性能が向上します。冷えが厳しい住まいには、床暖房もおすすめです。
断熱材の追加も床暖房リフォームも、壁や床を剥がす大規模な工事のため、後から実施すると手間もコストも新たにかかってしまいます。室内を解体するリノベーションの機会に、断熱改修も行うのがおすすめです。
中古戸建てリノベーションにかかる費用
中古戸建てのリノベーション費用は、工事の内容や既存の建物の状況によって千差万別のため、単純な比較は難しくなります。
また中古戸建ての場合は、下記の条件によっても工事費用が変わってきます。
・建物の状態(耐震補強工事や断熱改修が必要かどうか)
・構造の種類(木造、2×4、RC造、鉄筋造)
・どれくらい間取りを変えるか
・外壁や屋根もやりかえるか
・使用する設備や内装材のグレード
戸建てリフォーム・リノベーション事例から、ご自身の住まいの広さ・築年数・リフォームでやりたいことに近い事例を探して参考にするのもおすすめです。
中古戸建てリノベーションの住宅ローンの組み方
リノベーションを前提に中古戸建てを購入する場合、物件の取得費用とリフォーム費用を合わせて、金利の低い住宅ローンで借り入れることができます。ただし、先に契約した住宅ローンに後からリフォーム費用を組み入れることはできないため注意が必要です。
購入費用と工事費用を合わせて借り入れるためには、購入費用とともにおおよそのリノベーション費用を提示する必要があります。そのため、中古戸建てを購入してからリノベーション会社を検討するのではなく、物件探しとリノベーション会社選びを同時進行するのがおすすめです。
また、再建築不可物件(現在の法律に適合しない土地の物件)は担保価値がたいへん低いため、原則的に住宅ローンの融資を受けることはできません。
中古戸建てを買う前のチェックポイント
中古戸建てを選ぶ際にチェックしたいポイントは沢山ありますが、そのなかでも必ず確認しておきたい注意点をまとめました。
・建物の構造の種類は?: 構造によっては希望の間取りにできない場合がある
・新耐震基準かどうか: 旧耐震基準は補強工事が必要
・基礎や土台の状態は?: 傷みの補修やシロアリ駆除が必要ならコストアップ
・床に傾きはないか: 基礎工事が不十分、施工不良の欠陥住宅
・室内にカビやシミはないか: 雨漏りがあれば修理費用が必要
・違法建築・既存不適格ではないか: 住宅ローンが組めない
・建築図面があるかどうか: あれば間取り計画が立てやすい
・適切にメンテナンスされているか: 屋根や外壁の状態によっては工事が必要
・外構や庭の状況を確認する: 外にコンセントや水道があると便利
・室内に前住人の残留物がないか: 不用品の処分費用がかかる
中古戸建を購入する前に専門家に相談する
リノベーションを前提に中古戸建てを探すなら、購入前の専門家への相談がおすすめです。希望のリノベーションが実現可能なのかどうか…室内がボロボロだけど大丈夫なのかどうか…ご自身で判断するのは難しいですよね。不動産屋さんは不動産取引のプロですが、リノベーションの専門家ではないため「希望の間取り変更が可能なのか」といったことは判断できません。
また、とりあえず中古戸建てを先に購入してしまうと、金利の低い住宅ローンに後からリノベーション費用を組み込むことはできないため注意が必要です。
物件探しとリノベーション会社選びを同時に進めておけば、中古戸建てを内見する際にリノベーション会社の担当者に同行してもらえます。「キッチンをこちらへ移動できます」「この壁を抜いてLDKを広げられます」と、実際に物件を見ながら教えてくれるため、購入するべきかどうかの判断がしやすくなりますよ。
ワンストップサービスを提供しているリノベーション会社なら、物件探しからリノベーションまで、ひとつの会社に依頼することができます。
中古戸建てリノベーション会社の選び方
デザインセンスが合うか
会社ごとにナチュラル系・モダン系・ヴィンテージ系など、リノベーションテイストの得意分野があります。ウェブサイトや公式SNSに掲載されている施工事例をチェックして、ご自身の感性に合いそうなリノベーション会社の2〜3社から見積もりを取り、提案を比較するのがおすすめです。
担当者との相性
中古戸建てのリノベーションでは、プランニングから完成まで6〜9ヶ月ほどかかります。打ち合わせの機会が多いため、担当者とのフィーリングが合うか、話しやすい雰囲気かどうかも大切です。
中古戸建てリノベーション事例3選
リノベーションを前提に中古戸建てを購入し、理想の住まいを叶えた事例をご紹介します。
住み心地と資産価値をアップした中古戸建てリノベーション事例
お子さまの成長に伴いRC造の中古戸建てを購入し、リノベーションした事例です。壁式構造のため撤去できない壁がありましたが、段差を利用してゆるやかにエリア分けしました。玄関〜リビングは明るく、ダイニング〜キッチンはシックな色合いのフローリングで貼り分けることで、視覚的なゾーニングの役割も果たしています。
検査済証の取得率が非常に低い時代に新築された物件だったため、審査機関と協議を重ねた上で法律上の問題を解消し、検査済証を新たに取得して住まいの資産価値を高めました。敷地内にシャッターと屋根付きの車庫を増築しています。
リノベーション面積: 209㎡
リノベーション費用: -万円
思い描いた住まいを実現した中古戸建てリノベーション事例
当初は新築も検討していましたが、完成後をイメージしづらかったことから、中古戸建ての購入+リノベーションを選択した事例です。
リノベーションに求める条件が明確だったお施主さまは、特にキッチンにこだわりをお持ちでした。既存の対面キッチンから、効率的な動線の2列セパレート型キッチンへ変更。将来的にガスオーブンが設置できるように配管経路を確保しています。
リビングはフロアを一段下げて、こもったような落ち着ける空間に。閉鎖的だった階段の壁を一部なくして、開放感をアップ。構造上撤去できない柱は空間に調和するようにデザインしています。
リノベーション面積: 48㎡
リノベーション費用: -万円
お子さまがのびのび遊べる中古戸建てリノベーション事例
それまで暮らしていたマンションが手狭になり、2×4(ツーバイフォー)の中古戸建てをご購入。当初はクロス張り替え程度のリフォームで済ませるつもりでしたが、「LDKを広くしたい」「使いやすい収納が欲しい」といった希望がふくらみ、フルリノベーションすることにしました。
一般的にツーバイフォー住宅は間取り変更の自由度が低いといわれますが、綿密な構造計算のもと壁を補強することで開口を広げ、広々としたLDKが誕生しました。南側の窓は開口部を拡大し、自然光と風がたっぷりと注ぐように。
「子どもが思いきり遊べる」というコンセプトのもと、玄関前にはブランコが吊るせる梁を設けました。庭にはウッドデッキを新設し、大人も子どもものびのびとくつろげる空間となっています。
リノベーション面積: 182㎡
リノベーション費用: -万円
<まとめ>中古戸建ては、購入前にプロにチェックしてもらうことが大切
中古戸建てリノベーションのメリット
・幅広い選択肢のなかから物件を探せる
・新築よりもコストを抑えやすい
・新築よりも広い家に住める
・自由な間取りにリノベーションしやすい
中古戸建てリノベーションのデメリット
・建物の状況によっては、耐震補強や補修工事の費用がかかる
・購入後すぐに住み始めることができない
中古戸建てのリノベーションの魅力は、豊富な選択肢から物件を探すことができ、理想の住まいに生まれ変わる可能性を秘めていること。その一方、建物の状況によっては追加コストが必要になる可能性があります。築年数の古い物件ほど、耐震性能が低い、構造に傷みがある、断熱性が低いなどの問題があるケースが多いです。
中古戸建ては一見キレイに見えても、内部の劣化が進んでいるケースがあります。チェックポイントが多いため、ぜひ〈CRAFT〉へご相談ください。購入前に無料でホームインスペクションを行い、購入すべきかやめたほうがいいかを正直にお伝えさせていただきます。
<著者>CRAFT 編集部
一級建築士・二級建築士・インテリアコーディネーター・一級建築施工管理技士・二級建築施工管理技士・宅地建物取引士が在籍。さまざまな知識を持つプロフェッショナル集団が、リノベーションや物件購入についてわかりやすく解説します。