目次
実家をリフォームする上で注意しなくてはならない「贈与税」。実家リフォームの方法によっては、「贈与」とみなされ、贈与税の支払いが発生してしまう可能性があります。そこでこの記事では贈与税を避けてリフォームする方法や実家リフォームにかかる費用について事例をまじえながら解説します。
(作成日2022.10.18 更新日2024.1.7)
実家リフォームするときは贈与税に要注意
実家をリフォームする際の費用を誰が負担するかは、それぞれの家庭によって異なります。親が全額負担してくれるケースもあれば、親と子世帯で折半となることもありますし、実家を譲り受けるため子世帯がすべて負担するケースもあるでしょう。
ここで注意しなくてはいけないのが、リフォームの費用を子世帯が負担するケースです。
実家の名義が親の名義のままの状態で子世帯が110万円以上の費用を負担してリフォームすると、「その住宅を贈与した」と判断され、贈与税が発生してしまいます。「自分たちが住む家をリフォームしただけなのに…」という意見はごもっともですが、そういったルールになってしまっているため贈与税を避けることはできません。
例えば、子世帯の負担で1,200万円のリフォームをした場合、非課税枠の110万円を差し引いた1,090万円が贈与税の対象となります。
贈与税の発生を避けてリフォームする方法
実家リフォームを考えているのであれば、なるべく贈与税の発生しない方法でリフォームしたいところですね。贈与税の発生を避けてリフォームする方法を紹介していきます。
1.子が実家を購入した上で名義を変更する
実家リフォームにおける贈与税の発生を避けたいのであれば、子が実家を購入し、その上で子の名義に変更するという方法がおすすめです。実家を譲り受けたわけではなく、お金を出して購入しているわけですので、当然贈与税は発生しません。
このとき購入が必要になるのは建物だけです。土地まで購入する必要はありません。実家がよほど新しい建物でない限り譲渡所得税が発生することはありませんし、築年数が経っていると固定資産税評価も低くなっているはずです。
あくまで一例ですが、30年前に3,000万円で建てた実家の評価が600万円ほどにまで下がっていたというケースもあります。
2.実家を贈与してもらい子の名義に変更する
住宅の贈与にかかる贈与税と聞くととんでもない金額の税金が発生するのではないかと考えてしまいがちですが、「思っていたよりも少なかった」というケースがほとんどです。そのため、回りくどい手段を選ばず素直に贈与してもらうのも一つの手だと言えます。築年数の古い住宅は固定資産評価額も大幅に下がります。
例えば、固定資産評価額が200万円の住宅を譲り受けた場合の贈与税は10万円以下です。不動産取得税や登録免許税を含めてもそこまで大きな金額にはならないので、固定資産評価額次第では贈与も検討するべきだと言えるでしょう。
3.実家が高額なときは「相続時精算課税」の制度を活用する
贈与税は子が実家を購入することで避けられると紹介しましたが、実家の固定資産税評価が高く、そう簡単に購入できないケースもあるかと思います。その際は、「相続時精算課税」という制度を活用しましょう。
「相続時精算課税」は2,500万円までであれば非課税で財産を贈与できる制度です。実家の固定資産税評価が2,500万円以下であれば、例え実家を譲ってもらったとしても贈与税が発生することはありません。
ただし親が亡くなり相続が発生すると、それが相続財産に加えられてしまい、相続税の支払い義務が生じます。そのため、この方法はあくまでも「税金の支払いを先延ばしにする方法」として捉えておく必要があります。
2024年1月からは、こちらに新しい制度が加わります。年間110万円までの贈与なら申告不要で、贈与税・相続税ともに発生しません。ご実家のリフォームがまだ先のご予定であれば、こちらの制度を使って少しずつ親世帯の資産を子世帯に移してもらうのもおすすめです。
(新制度と似ている暦年課税制度は、年間110万円以内なら贈与税・相続税はからないものの、相続が発生した7年以内に贈与された財産は相続税に課税されます。ちなみに、2023年12月までなら3年以内にさかのぼっての計算です。)
実家リフォームにかかる費用の目安
実際に実家をリフォームする際、何よりも気になるのがリフォームにかかる費用についてではないでしょうか?
ただ、実家リフォームにかかる費用は実家の規模やリフォームの内容によって大きく異なるため、一概に「〇〇円」と言い切ることはできません。例えば、既存の設備や構造を活かしたリフォームであれば費用は抑えられますが、間取りを変更するような大掛かりなリフォームであればかかる費用も高額になってきます。
<クラフトの実家リフォームの費用例>
119㎡の実家のリフォーム:4,560万円
もちろんこれはあくまで一例です。リフォームの範囲が小さければもっと金額は抑えることができ、逆に外壁も含めたスケルトンリフォームなら高くなる場合も。CRAFTのHPに戸建てのリフォーム事例を多数掲載しています。それらの事例の中からご実家の広さや検討しているリフォームの内容に近い事例の費用を参考にしてみてください。
実家リフォームにかかる費用の負担を軽減する方法
実家リフォームでは、リフォームにかかる費用の負担を少しでも減らすことが重要です。実家リフォームにかかる費用の負担を軽減する方法を3つ紹介していきます。
補助金制度を活用する
実家をリフォームする場合、
・バリアフリーリフォーム
・断熱リフォーム
・耐震リフォーム
・長期優良住宅化リフォーム
・同居対応リフォーム
などのリフォームの中には、減税の対象となるようなリフォームもあります。
リフォームした後で確定申告によってその旨を申告することで、所得税や住宅ローン、リフォームローンの一部が控除されます。
工事の内容によって利用できる減税制度の種類は異なりますが、住宅ローン減税が適用されると年末のローン残高の1%が所得税から控除されますし、固定資産税の軽減が適用されると住宅の固定資産税の3分の1~3分の2が1年~3年度分軽減されたりするので、積極的に活用するべきだと言えるでしょう。
ローンを活用する
実家リフォームの費用を一括で支払うのが難しい場合、ローンを活用するという方法もあります。
ただし、親の年齢によっては新しくローンを組むのが難しくなってしまうこともあるので、そのときは実家の名義を子の名義に変更した上でローンを組むようにしましょう。名義を変更した上でローンを組めば、住宅ローン減税にも申請できるようになります。
実家をリフォームした2つの事例
実家をリフォームする際にチェックしておきたいのが、実際に実家をリフォームした方の事例です。
ここでは、ご両親から譲り受けた実家をリフォームした事例と二世帯住宅にリフォームした事例、2つの事例を紹介していきます。
事例1. 譲り受けた2×4住宅を理想の住まいに
こちらは、ご両親から譲り受けた築17年のご実家をリフォームした事例です。
フローリングやクロス、設備が古くなってしまっているのはもちろん、親子3人で暮らすのに適していない間取りを解消するためにリフォームを決断。ツーバイフォー(2×4)ということもあって間取りの変更には制限もありましたが、LDKやウォークインクローゼットなどを取り入れたホテルのような空間に生まれ変わっています。
事例2. 3階建ての実家を二世帯住宅に
こちらは二世帯同居を実現するためにご実家をリフォームした事例です。
両親が営んでいた材木屋の一階部分が倉庫となっていましたが、そこを住居に変更することに。構造上撤去することができない柱やブレースを塗装して空間に溶け込ませつつ、ダイニングとリビングの仕切りとしてうまく活用しています。天井の高い大きな空間を活かした、ホテルライクでモダンな空間に仕上がっている事例です。
実家リフォームの種類
実家リフォームでできることはさまざまですが、大まかな種類としては、
・高齢の親が快適・安全に暮らせる住宅を実現するためのリフォーム
・親世帯と子世帯が快適に過ごせる住宅にするための二世帯住宅リフォーム
・子世帯が実家を引き継いで暮らすためのリフォーム
の、3つに分けられます。
それぞれのリフォームについて詳しく解説していきます。
高齢の親が快適・安全に暮らせる住宅を実現するためのリフォーム
実家リフォームの種類の一つ目が、快適性や安全性の向上です。
例えば、古い住宅は断熱性能が低い傾向があるため、リフォームによって住宅の断熱性能を高めることでより快適に過ごせるようになります。断熱リフォームは、ヒートショック対策としても効果的です。
また、老朽化した電気まわりをリフォームしたり、手すりを設置するなどのバリアフリーリフォームを行うことで、快適性だけでなく安全性も高めることができます。
親世帯と子世帯が快適に過ごせる住宅にするための二世帯住宅リフォーム
実家リフォームの種類の二つ目が、二世帯住宅リフォームです。実家の間取りや設備を親世帯と子世帯が同居できるようにリフォームしていきます。
二世帯住宅と言ってもそのスタイルはさまざまで、寝室など一部の個室だけ分けて残りの設備を共用するスタイルもあれば、同じ建物で暮らしつつも玄関から完全に分け、近居や別居のような形式で生活するスタイルもあります。
子世帯が実家を引き継いで暮らすためのリフォーム
実家リフォームの種類の三つ目が、子世帯が実家を引き継いで暮らすためのリフォームです。
親世帯の住替えなどによって空き家となった実家に子世帯が住む場合、間取りが古かったり、建物や住宅設備の劣化が進んでしまっているケースが少なくありません。そのようなケースにおいて、子世帯が生活しやすい住まいにするために実家をリフォームするわけです。
また、賃貸物件として貸し出すためにリフォームするような事例や、売却するためにリフォームするような事例もあります。
〈まとめ〉実家リフォームには贈与税への理解が必須
実家リフォームでは、思わぬ贈与税の発生を避けるためにも贈与税に関する知識や理解が必要不可欠です。実家の固定資産税評価がかなり低くなっていればそこまで負担は大きくありませんが、固定資産税評価が高いと負担も大きくなるので注意しなくてはいけません。ただ、贈与税のことを完璧に理解するのはむずかしいと思います。税金対策の知識のあるリフォーム会社に相談しましょう。
クラフトはご実家のリフォームもサポートしています。必要があればパートナーの税理士事務所を通じて、具体的な対策をお伝えさせてたいただきます。ぜひ一度ご相談ください。
<著者>上原 宏介
住宅関連のコンテンツ作成を得意とするライター。専門的な言葉や用語が多くわかりづらくなってしまいがちな建築・リフォーム関連の情報をわかりやすくお伝えしています。さまざまな媒体で建築・リフォーム・不動産関連のコラムを多数執筆中。