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リフォームの自由度が高い鉄骨造住宅ですが、注意点もあります。今回はメリットやリフォームのポイントなどをご紹介。鉄骨リフォームの前にぜひご一読ください。
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鉄骨造とは?
鉄骨造は大きく「重量鉄骨」と「軽量鉄骨」に分けられますが、どちらも柱や梁などに鉄骨を用いた建物です。今回ご紹介する「鉄骨造(=重量鉄骨造)」はビルやマンションなどの高層建築物から、一般的な住宅まで幅広く用いられています。鉄骨は耐久力が高く、また鉄筋コンクリートに比べて重量が軽く、扱いやすいのが特徴です。一方でハウスメーカー 住宅に多い「軽量鉄骨造」は材質が鉄骨なだけで、基本構造は木造とほとんど同じです。重量鉄骨造に比べると耐久性は低くなります。
鉄骨造の構造には2種類ある
鉄骨造の構造には2種類あり、それぞれ組み立て方が異なります。以下で違いを説明します。
ラーメン構造
柱と梁の連結部分を溶接しながら組み立てる方法です。溶接することで柱と梁を支える補強材が不要になるため、枠の内側を自由にレイアウトできます。また強度も高く、高層ビルやマンションなどの建物に用いられます。
ブレース構造
柱と梁の対角線上に「ブレース」という補強材を用いる方法です。水平・垂直に配置されたブレースが、地震や暴風から建物を守ってくれます。おもに使用するのは、厚さ6mm未満の軽量鉄骨で、戸建て住宅やアパートによく使われます。リフォームで間取り変更する際はブレースが露出するケースがあります。その場合は空間に合わせて塗装するなどして、デザインの一部にします。
鉄骨リフォームのデザインリフォーム事例
鉄骨リフォームがよりイメージしやすいよう、CRAFTが行った3つの事例をご紹介します。
・鉄骨リフォームのリフォーム事例1「リビングに吹き抜けを」
デザインリフォーム・デザインリノベーションCRAFT #00396
築年数:25年
リフォーム面積:140㎡
工期:5ヶ月
費用:2,700万円
ご実家の戸建て住宅をリフォームした事例です。細かく区切られた部屋や、1階への日照不足などの理由から、住まい全体に窮屈さを感じることがお悩みでした。
そこで、リビングに隣接していた和室を取り込み、広々としたLDKを実現。また梁の補強や構造材の撤去を行い、2箇所に大きな吹き抜けを設置しました。これにより1階全体に光が差し込み、開放感が生まれています。さらに、住まいの随所に木を用いることでモダンな空間を演出。機能性・デザインどちらにもこだわった理想の住まいが完成しました。
・鉄骨リフォームのリフォーム事例2「鉄骨のブレースをアクセントに」
デザインリフォーム・デザインリノベーションCRAFT #17062
築年数:45年
リフォーム面積:119㎡
工期:5ヶ月
費用:4,650万円
3階建てのご実家の1階にある倉庫を、住まいに変えた事例です。鉄骨部分はブレース構造だったため、内部にあるブレースや柱を撤去できないことが課題でした。そこで、あえてブレースを「間仕切り」として活かすレイアウトにし、アクセントを引き出しました。
また倉庫特有の高い天井を利用して、子ども部屋にロフトを設置。さらに玄関ホールとLDKの仕切りにガラスを用いることで、空間の広がりや明るさを感じる住まいへと生まれ変わりました。
・鉄骨リフォームのリフォーム事例3「二世帯リフォームで受け継ぐ住まいに」
デザインリフォーム・デザインリノベーションCRAFT #00330
築年数:16年
リフォーム面積:179㎡
工期:4.5ヶ月
費用:4,145万円
自宅兼事務所として使われていた3階建て中古物件を購入し、リフォームを施した事例です。家族5人とお母さまが快適に暮らせるよう、間取りを大きく変えました。鉄骨造は耐久性が高いため、二世帯住宅として小世帯に受け継いでいくのにも適しています。
まずは1階にお母さまの居室と多目的スペースを、2階に全員の共有スペースとしてLDKを、そして3階には子世帯の居室をレイアウト。それぞれのプライベート空間を尊重しながら、ライフスタイルに合ったデザインを意識しました。また1階と2階をつなぐ階段の位置を変え、新たに吹き抜けを設置。各階につながりを持たせるとともに、1階まで光が差し込む明るい空間を生み出しています。
鉄骨造の住まいをリフォームする4つのメリット
鉄骨造の住まいであれば、躯体をそのまま活かしたリフォームができます。その理由と、得られるメリットについてご紹介します。
品質が安定している
工場で加工された鉄骨を使用することもあり、一定の品質水準を満たしています。そのため職人の技術による加工・組み立てを必要とする木材とは違い、構造部分のクオリティが安定するメリットがあります。
広い空間を作ることができる
鉄骨の品質が安定しているため強度も高く、かつ柱の本数が少ないのが鉄骨造の特徴。そのため、吹き抜けを作る・大きな窓を設置する・大幅な間取り変更をするなど、さまざまなデザインに対応できます。なおブレース構造ではブレースの入った壁を動かせず、デザインに制限がかかることも。その場合はブレースをあらわしにして視線を通すなどして、プランを工夫します。
住宅の寿命が伸びる
鉄骨造は適切にメンテナンスを行うと、寿命を「50〜60年以上」にすることも可能。また、地震が起きたときは、鉄骨がしなることでエネルギーを吸収してくれます。そのため、柱部分が折れる・建物が倒壊するなどのリスクが少なく、耐震性に優れているところも、住宅寿命が長い理由といえるでしょう。
費用が建て替えよりも安い
鉄骨造は頑丈ゆえに、解体費用が高額になります。しかし鉄骨の状態がよければ、躯体を残したままスケルトンリフォームを行えるため、建て替えよりもコストを抑えることが可能。また鉄骨造は、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造に比べて、材料費が安いこともメリットです。
鉄骨リフォームのポイント
多くのメリットがある鉄骨リフォームですが、ならではのデメリットもあります。そのデメリットを解消するリフォームをご紹介します。
寒さ・暑さ対策
鉄は熱が伝わりやすい素材のため、外気温の影響を受けやすいといわれています。加えて、通気性があまりよくない一面も。そのため鉄骨造の住まいは、寒くなりやすい・暑くなりやすいというデメリットがあります。
これを防ぐために、リフォーム時に断熱対策をしましょう。方法は以下の2つです。
・外断熱
建物全体を断熱材で覆う方法です。すき間なく断熱材を入れられるため、内断熱に比べて断熱性能が高くなります。一方で、工期が長くなる・大きなコストがかかる点に注意が必要です。
・内断熱
室内側の壁に断熱材を詰める方法で、外断熱よりも施工時間・コストともに削減できます。リフォームではほとんどのケースで、内断熱が採用されます。
使用する断熱材の種類によって特徴が異なるため、リフォーム会社と相談しながら適切なものを選びましょう。
湿気・結露対策
木造住宅は、湿度によって湿気を吸収・放出する「調湿性」が働きます。一方で鉄骨住宅は調湿性が低く、湿気がこもりやすいというデメリットがあります。
ジョリパットなど調湿性の高い素材を使う、風通しを見直して通風をアップするなど、リフォームではさまざまな工夫が可能です。また断熱材の種類によっては、結露を防ぎやすく調湿性を備えたものもあります。断熱対策とともに検討してみましょう。
鉄骨リフォームの費用の相場・目安
地盤のゆるい土地では杭を使用していることがあり、鉄骨住宅を撤去するだけで1,000万円以上かかるケースも。さらに鉄骨造の新築費用は「木造の1.5〜2倍」とされています。建て替えるとなるとかなりの費用を覚悟する必要があります。
一方でリフォームなら解体コストが削減でき、構造躯体を活かすことができるため、建て替えの2分の1程度の費用に抑えることができます。
鉄骨リフォームをするときの注意点は?
鉄骨リフォームは多くのメリットがある一方で、注意すべき点もあります。以下3点を踏まえ、住まいの状況に適したリフォーム方法や対策を検討しましょう。
鉄骨の錆対策
鉄骨造に使用する鋼材は、水分で表面が溶けて酸化し、錆が発生することがあります。放置すると住宅の強度が下がり、一部倒壊のリスクも。鉄骨リフォームの際は、解体時に鉄骨の状態を確認し、必要に応じて躯体の補強を行いましょう。
屋上の防水対策
錆防止のために、屋上の雨漏り対策も重要。防水工法にはいくつか種類があり、状況に合わせて使い分けることが可能です。すでに漏水が発生している場合は、原因に応じて一部補修する・全面補修などの措置を行いましょう。
築年数の古い鉄骨造に注意
古い建物は、鉄骨自体の劣化が進んでいる可能性があります。その場合、躯体の補強工事にコストがかかるため注意が必要です。また築30年以上の建物は、1981年の新耐震基準を満たしていないケースも。その場合は補強工事にコストがかかってしまい、建て替えたほうがよい可能性もあることを覚えておきましょう。
<まとめ>安定した品質が魅力の鉄骨住宅は、フルリフォーム向き
鉄骨リフォームの魅力について紹介しました。
鉄骨造は耐久性が高く、躯体を活かしたフルリフォームをしやすいのが特徴です。解体にかかるコストを抑えながらも、高品質な住まいづくりができるメリットがあります。リフォームの際、お悩みに合わせては断熱・防水・湿気対策なども検討しましょう。また躯体状況によっては、補強工事が必要な場合もあるため注意が必要です。
CRAFTでは、住まいの状況やお客さまの悩みに合わせて最適なリフォームをご提案します。鉄骨造の住まいをリフォームしたい方は、ぜひ気軽にお問合せください。
<著者>CRAFT 編集部
一級建築士・二級建築士・インテリアコーディネーター・一級建築施工管理技士・二級建築施工管理技士・宅地建物取引士が在籍。さまざまな知識を持つプロフェッショナル集団が、リノベーションや物件購入についてわかりやすく解説します。