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「耐用年数=建物の寿命」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実は、耐用年数は建物の寿命を指しているわけではありません。この記事では、鉄筋コンクリート造(RC造)の住まいのリフォーム・リノベーションを検討したときに気になる耐用年数、鉄筋コンクリート造の特徴・メリット、リフォーム・リノベーション事例をご紹介します。
鉄筋コンクリート造(RC造)とは
鉄筋コンクリート造(RC造)はその名の通り、柱や梁などの主要構造部が「鉄筋」と「コンクリート」で構築された建物です。鉄筋を組んだ型枠にコンクリートを流し込んで固める鉄筋コンクリート造は鉄筋とコンクリートの両方のメリットを合わせ持ち、非常に丈夫という特徴があります。木造住宅や鉄骨造(S造)住宅よりも頑丈で、建物の中でも最も強度が高いのが鉄筋コンクリート造です。耐震性や耐火性にも優れており、戸建てやマンションなどさまざまな建物に使用されています。
鉄筋コンクリート(RC造)の耐用年数は?
耐用年数には大きく分けて「物理的耐用年数」「経済的耐用年数」「法定耐用年数」の3つがあります。
「物理的耐用年数」は、建物が劣化により使用できなくなるまでの年数を表します。しかし、建物の寿命は立地やメンテナンス状態に大きく左右されるため、物理的耐用年数を用いても建物の正確な寿命はわかりません。
「経済的耐用年数」は、建物の経済的な価値がなくなるまでの期間のことです。劣化具合や市場から見た価値など総合的に価値を判断します。
最もよく使われるのが「法定耐用年数」で、一般的に耐用年数というとこの法定耐用年数を指すことが多いです。法定耐用年数とは、減価償却を計算する際に使われる年数のことで、税務上の数字であり、建物の実際の寿命ではありません。建物の耐用年数は、構造や用途によって違いがあります。以下は建物の構造別の法定耐用年数です。鉄筋コンクリート造(RC造)は最も法定耐用年数が長く、47年となっています。
鉄筋コンクリート造(RC造)が強いのはなぜ?
鉄筋コンクリート造(RC造)が強いといわれるのは、その構造が理由です。「鉄筋」は圧縮には弱いものの、引っ張る力に強いことが特徴です。
一般的に流通している「SD345」と呼ばれる鉄筋は1㎠あたり4.9トンの引っ張る力に耐えることができます。「コンクリート」は鉄筋とは反対に、引っ張る力には弱いものの圧縮には強いという特徴があります。強度は材質によっても変わりますが、1㎠あたり18~240kgもの重さに耐えることができます。引っ張る力に強い鉄筋と、圧縮に強いコンクリート。この2つが組み合わさると、引っ張る力や圧縮だけでなく、「曲げ」にも強くなります。
また、コンクリートにコーティングされることで鉄が錆びにくくなることも、鉄筋コンクリートの強度が保たれやすい理由です。
鉄筋コンクリート造(RC造)の特徴・メリット
ここからは、鉄筋コンクリート造(RC造)の特徴やメリットをご紹介します。
〈1〉建物の寿命が長い
鉄筋コンクリート造(RC造)は、他の構造と比べても建物の寿命が長いことが特徴です。法定耐用年数も鉄骨造は34年であるのに対し、鉄筋コンクリート造は47年と、資産価値でも違いがあります。建物の寿命は、「メンテナンス」によって大きく左右されます。どんな建物でも構造を問わず、適切なメンテナンスを行えば50年以上使えるものがほとんどです。中でも鉄筋コンクリート造は寿命が長く、きちんとメンテナンスすれば100年以上もつとも言われています。
鉄筋コンクリート造でもコンクリートの中性化や鉄のサビ・腐食が起こる可能性はあるため、定期的にしっかりとメンテナンスを行うことが大切です。
〈2〉耐震性が高く地震に強い
鉄筋コンクリート造は、地震の横揺れは引っ張る力に強い鉄筋が支え、縦の負荷は圧縮に強いコンクリートで支えるため、倒壊しにくいことが特徴です。鉄筋コンクリートの壁式構造は、耐震性が最も高い構造だといわれています。日本は地震が多いため、安心して住み続けられる住まいといえるでしょう。
〈3〉耐火性能が高く火事に強い
鉄筋コンクリート造の建物は構造躯体が不燃材であるコンクリートでつくられているため、内からの火に対しても、外からの火に対しても強い耐火性能があります。もしも火災が起きた場合も、全壊することはありません。
〈4〉遮音性に優れている
遮音性能は、壁や床などの質量が影響します。鉄筋コンクリートは他の構造材と比べて質量が大きく、生活音や振動が伝わりにくいことが大きな特徴です。そのため交通量の多い道路に面した立地の場合でも外の音が気になりにくく、静かに生活を送ることができます。上下階の音も響きにくくなるため、お子さまの走り回る音が気になる場合や、ライフスタイルの異なるご家族との同居の場合もストレスなく生活できるでしょう。
〈5〉屋上・地下の活用にも向いている
鉄筋コンクリート造は質量が詰まっており、遮音性に優れた構造ですが、土に囲まれる地下は更に遮音効果が高まります。地下に防音スタジオやオーディオルーム、シアタールームをつくるといったリフォームにも最適です。また、鉄筋コンクリートは屋上の活用にもおすすめです。鉄筋コンクリートの建物は基本的にフラットな屋根の形状となり、バーベキューやガーデニング、家庭菜園など、さまざまなアイデアで屋上のスペースを有効活用できます。
〈6〉リフォーム費用が建て替えの約1/2
鉄筋コンクリート造を建て替えする場合、解体費用と建築費用がかかるため、費用が高額になりますが、リフォーム・リノベーションであれば約1/2の費用で新築のように住まいを一新できます。丈夫な構造で耐久性に優れた鉄筋コンクリート造は、コストのかかる建て替えよりも、スケルトンの状態にして構造躯体の状態を調べ、適切なメンテナンスを行った上でリフォームを行うのがおすすめです。
鉄筋コンクリート造(RC造)リフォームのポイント
ここでは、鉄筋コンクリート造のリフォームのポイントをご紹介します。
〈1〉暑さ対策・寒さ対策を行う
断熱・気密化されていない鉄筋コンクリート造の住宅は夏の暑さ、冬の寒さが気になることがあります。リフォーム・リノベーション時には断熱性能を高める工事を行い、暑さ対策・寒さ対策を行うと、住まいの快適性が高められるでしょう。
〈2〉壁式構造かラーメン構造か
鉄筋コンクリート造には「ラーメン構造」と「壁式構造」の2種類があります。「ラーメン構造」の場合、多くのケースで自由に間取り変更ができます。一方、「壁式構造」の場合、動かせない耐力壁により間取りが制限されることがあるため、リフォームプランに工夫が必要です。CRAFTでは、視覚的・デザイン的に最大限の工夫を行い、ご希望の間取りに近づけています。「鉄筋コンクリートの壁式構造だから」と諦めてしまう前に、ぜひ一度ご相談ください。
〈3〉ホームエレベーターの設置も可能
鉄筋コンクリート造のリフォーム・リノベーションでは、建物や敷地にゆとりがあれば、ホームエレベーターの設置も可能です。高齢化が進む日本ではバリアフリー構造の住宅が増加しており、ホームエレベーターもその一つです。ホームエレベーターを設置すれば、車椅子に乗ったままフロア移動が可能になり、より長く、自宅で自立した生活を送り続けられるようになります。
CRAFTの鉄筋コンクリート造(RC造)リフォーム事例
CRAFTでは、鉄筋コンクリート造(RC造)のリフォーム・リノベーションも数多く手掛けてきました。ここでは、いくつかの事例をご紹介します。
〈リフォーム事例1〉防水工事や外壁補修、サッシ交換など住まい全体の性能アップ
お子さまの成長をきっかけに、築33年の鉄筋コンクリート造(RC造)住宅を購入し、デザインリフォームしました。既存のRの曲線の壁に合わせて、リビング・ダイニング間のステップもRの形にし、TVボードもRで合わせてオーダーメイドで製作。大きな窓から見える緑を楽しみながら、ゆったりとくつろげる空間にしました。リフォーム時には屋上とベランダの防水工事や外壁補修、サッシ交換などを行い、住まいの性能をアップ。長く快適に暮らせることにこだわりました。
〈リフォーム事例2〉思い出を残しながら心地よい空間に
築35年のご実家を既存の雰囲気を残しつつ、好みのデザインと間取りを取り入れ、ご家族が暮らしやすい空間に一新。キッチンのレイアウト、吹き抜け、らせん階段など、建築家・吉村順三氏のお弟子さんが手掛けた既存の建物の優れた意匠性はそのままに、機能面を新しくして、住まいの性能を高めました。リビングの壁は一面の本棚に。2階の廊下に設けた書斎からも本棚に手が届くようになっているなど、使いやすさにもこだわって設計しました。
〈リフォーム事例3〉広々とした大空間のLDK
吉村順三氏が設計した築42年のご実家を、既存の持ち味を残しつつ、300㎡を超える空間をデザインリフォームによって一新。これまではそれぞれ独立していたリビング・ダイニング・キッチン・家事室をゆるやかにつなげて、開放感のある大空間のLDKをつくりあげました。
床はヨーロピアンオークのフローリング、天井は一部のみをレッドシダーの板張りにし、一部の壁面はレンガタイルに。異なる素材が自然と調和する心地よい空間です。
〈まとめ〉鉄筋コンクリート造は、リフォームで寿命を伸ばすことができる
鉄筋コンクリート造は非常に丈夫で耐震性や耐久性、耐火性、遮音性に優れた質の高い建物です。法定耐用年数=建物の寿命ではなく、しっかりメンテナンスすれば、鉄筋コンクリートの建物の寿命は100年以上にもなるといわれています。鉄筋コンクリート造の住宅は、地震の多い日本で安心して暮らせる住まいです。
CRAFTでは、数多くの鉄筋コンクリート造(RC造)リフォーム・リノベーション実績があります。間取りが制限されがちな壁式構造の場合でも最大限の工夫を行い、制約を感じさせない伸びやかなリフォームを行っておりますので、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
<著者>CRAFT 編集部
一級建築士・二級建築士・インテリアコーディネーター・一級建築施工管理技士・二級建築施工管理技士・宅地建物取引士が在籍。さまざまな知識を持つプロフェッショナル集団が、リノベーションや物件購入についてわかりやすく解説します。