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古くなってくると、建物や設備の劣化や入居率の低下などさまざまな問題が発生するようになる賃貸マンション。「建て替え」を検討するオーナー様は多いかと思いますが、気になってくるのが賃貸マンションの「建て替え年数の目安」です。
「一棟まるごとリノベーション」というもう一つの方法に触れながら、賃貸マンションの建て替え年数の考え方や、建て替えのメリット・デメリットについて解説していきます。
賃貸マンションの建て替え年数の目安は?
マンションの建て替え年数の目安は、耐用年数や寿命でおおまかに判断することができます。マンションの構造ごとの耐用年数と寿命は以下のとおりです。
構造 | 耐用年数 | 寿命 |
---|---|---|
木造 | 22年 | 30〜80年 |
軽量鉄骨(S造) | 19年 | 30年 |
重量鉄骨造(S造) | 34年 | 60年 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 47年 | 40〜90年 |
これらはあくまで目安なので、「実際に建て替えるべきかどうか」は建物の劣化度合いを見て判断することになります。ただ、いずれの構造もしっかりとメンテナンスしていれば寿命以上に長持ちしてくれますし、鉄筋コンクリート造については国が公表しているデータでは「120年近く持つ」とされています。
賃貸マンションの建て替えにかかる費用の相場
古いマンションの建て替えではさまざまな費用が発生します。建て替えの際に発生する主な費用とそれぞれの費用相場は以下のとおりです。
費用の種類 | 概要 |
---|---|
解体費用 | 既存のマンションの解体にかかる費用 一坪あたり5〜8万円程度かかる |
建設費用 | 新しいマンションの建設にかかる費用 費用の相場は木造や鉄骨造などマンションの構造により異なる 一坪あたり50〜120万円程度かかる |
設計費用 | 新しいマンションの設計にかかる費用 建築費用の3〜10%程度かかる |
税金 | 竣工までに印紙税や登録免許税、不動産取得税がかかる また、竣工後に固定資産税や都市計画税がかかる |
立ち退き料 | 立ち退きをお願いする住民の負担軽減のために支払う費用 相場は家賃の6ヶ月分 |
上記はおおよその相場ととらえる必要がありますが、賃貸マンションの建て替えには、一般的に膨大な費用がかかるとされています。
賃貸マンションを建て替えるメリット
古くなった賃貸マンションを建て替えることで期待できるようになる主なメリットとしては、
・新築という付加価値がつく
・トレンドを取り入れたマンションを建設できる
・減価償却による節税効果が期待できる
の、3点があげられます。
それぞれのメリットについて解説していきます。
新築という付加価値がつく
古くなった賃貸マンションを建て替えて新しくすると、「新築」という付加価値がつくようになります。
賃貸物件を探している方の中には新築や築浅など新しめの物件にこだわる人もいますが、この点はそういった人に向けてのアピールポイントになります。
賃貸マンションは築30年を超えてくると劣化が進んで古く感じられるようになるため、「築年数が古い」というだけで敬遠されてしまうことも。建て替えて新築にすることでそういったデメリットを解消できます。
トレンドを取り入れたマンションを建設できる
築年数の古い物件はデザインや間取りにひと昔前のトレンドが取り入れられていることが多い傾向があり、ユーザーに敬遠される要素の一つになります。
そうなると入居率も低下しますが、その問題を解決するのがマンションの建て替えです。デザインや間取り、導入する設備など最新のトレンドを取り入れたマンションにできるので、賃貸物件を探している人の目に留まりやすくなります。
減価償却による節税効果が期待できる
マンションは固定資産になるため、建設にかかった費用を減価償却することができます。
厚みが3mm超4mm以下の鉄骨の賃貸マンションであれば27年間減価償却が可能です。ただ、耐用年数を過ぎると建設費用を減価償却できなくなるため、税金の金額も高くなってしまいます。
耐用年数を過ぎた古いマンションは価値も下がるため新築時に比べて家賃が下がる傾向がありますが、そうなると、家賃が下がる上に減価償却もできなくなるのでキャッシュフローが悪化してしまいがちです。
マンションを建て替えて新しくすると、また数十年単位で建設費用を減価償却できるようになるため、大幅な節税効果が期待できるようになります。
賃貸マンションを建て替えるデメリット
さまざまなメリットをもたらしてくれる賃貸マンションの建て替えですが、
・多額の費用がかかる
・立ち退きで揉める可能性がある
など、建て替えならではのデメリットもあるため注意が必要です。
賃貸マンションを建て替える際に想定される2つのデメリットについて解説していきます。
多額の費用がかかる
賃貸マンションの建て替えには、
・解体費用
・建設費用
・設計費用
・税金
・立ち退き料
など、さまざまな費用がかかります。
既存のマンションを取り壊してから建設するため解体費用もかかりますし、戸数分の立ち退き料も発生するので、単純に新しいマンションを建設するよりも費用が高額になります。
最新のトレンドを取り入れながら新しいマンションを建設できる上に新築という付加価値がつくため、より入居者が決まりやすくなるという大きなメリットはあるものの、建て替えたからと言って必ず空室が埋まるというわけでもありません。
建て替えは費用が高額になる分、慎重に検討しながら進める必要があります。
立ち退きで揉める可能性がある
マンションを建て替えるには今住んでいる住人に退去してもらわなくてはいけません。
ただ、引っ越しは費用も手間もかかるため、必ずしもすべての住人が素直に応じてくれるわけではありません。中には立ち退き交渉で揉めてトラブルに発展するケースも。また立ち退き料を用意したからと言って必ずしも交渉がスムーズに進むわけではありません。
立ち退きによる揉め事は最終的に裁判で争うことになりますが、裁判は避けるたいところです。なるべく早いタイミングで立ち退き交渉を始め、時間をかけて穏便に立ち退いてもらうことが重要になります。
賃貸マンションは「建て替え」ではなく「リノベーション」という選択肢も
「設備や内装の劣化」「空室率の上昇」などは、実はリノベーションでも解消できます。「建て替えよりも費用を抑えられる」という大きなメリットがあるため、コストを比較した結果、一棟リノベーションを選択するオーナー様は少なくありません。
また、内装だけでなく外観も一新できるため、例え築年数が古くても周辺の新築と同じ土俵で戦えるようにもなります。
実際、CRAFTで一棟リノベーションした事例の中にも、リノベーション後に新築価格で入居者を募集してすぐに満室になったというケースも多くあります。
賃貸マンションのリノベーション事例
賃貸マンションの問題を建て替えではなくリノベーションで解決する上で参考にしたいのが、実際に賃貸マンションをリノベーションした方の事例です。
ここでは、CRAFTで一棟リノベーションした2つの事例を紹介していきます。
事例1. 単身者向けのマンションを夫婦やカップル用に
こちらは、杉並区にある賃貸マンションを一棟まるごとリノベーションした事例です。
ご両親から単身者向けの賃貸マンションを譲り受けたものの、築30年以上が経過していたということもあって老朽化が目立っていました。防犯性の低さが気になっていたということもあり、「明るくたのしく暮らせるマンション」をコンセプトに一棟まるごとCRAFTでデザインリフォームしています。
もともと11戸あった部屋数を6戸に減らし、各住戸の広さを2倍に。広さが2倍になったことで、単身者だけでなく夫婦やカップルにとっても魅力的な1LDKの賃貸マンションに生まれ変わりました。
全戸バス・トイレが別になるようレイアウトしたり、追い焚き機能のある浴槽や温水洗浄便座を導入するなどして今の時代のニーズに合った空間になっています。また、キッチンには3口のコンロを導入し、ファミリー層のニーズにも対応できるように。
塗装やタイルの補修、張り替えなどによって外観部分もリフォームしているため、築32年という古さを感じさせないモダンで印象的な賃貸マンションになっています。
*画像の家具と小物はCGです
事例2. モノトーンの外観が映えるファミリー向けの賃貸マンション
こちらは、横浜市にある築35年の賃貸マンションを一棟まるごとリフォームした事例です。
当初は建て替えを検討していたオーナー様ですが、RC造のために建て替えが高額になるということが判明し、CRAFTにリフォームを依頼。
もともと単身者向けの物件でしたが、リフォーム前にCRAFTでリサーチを行ったところ、近隣に同様の物件が多く建っていて飽和状態であることがわかったため、リフォームを機にターゲットを見直すことに。
13戸あった戸数を8戸にすることで一部屋あたりの広さを広くし、対面キッチンのLDKを導入したり収納スペースを充実させるなどしてファミリー向けの物件に一新しました。
内部だけでなくエントランスや外観も積極的に改修。エントランスの急な階段をおだやかな角度の階段に変更し、バイクや自転車用のスロープを設けてさまざまなニーズに対応できるようにしました。エントランスのドアにオートロックを導入し、駐輪場は安全性を考慮して視認性の高い木の縦格子で仕切るなど防犯性も意識しています。
外観は白とダークグレーのモノトーンカラーに塗装し、コストを抑えつつも周辺の賃貸との差別化を図っています。
<まとめ>古い賃貸マンションの問題は一棟リノベーションで解消できる
古くなって空室率が目立つようになってきた賃貸マンション。その原因は、やはり建物の劣化やデザインと設備の古さにあります。家賃を下げても空室が埋まらないのは、建物自体に魅力がないからです。
そこで注目されているのが、「建て替え」よりもコストを抑えながら、新築以上の価値をもたらす一棟リノベーションです。
CRAFTでは一棟リノベーションで建物の価値をアップし、入居者を募集してすぐに満室になったケースが多くあります。賃貸マンションのことでお悩みのオーナー様は、ぜひ一度CRAFTにご相談ください。
<著者>上原 宏介
住宅関連のコンテンツ作成を得意とするライター。専門的な言葉や用語が多くわかりづらくなってしまいがちな建築・リフォーム関連の情報をわかりやすくお伝えしています。さまざまな媒体で建築・リフォーム・不動産関連のコラムを多数執筆中。