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古くなった賃貸マンションを所有するオーナー様から、「空室率が高い」「設備が古くなって困っている」「建て替えたほうがいいだろうか」とご相談いただくことがあります。
それらを解消するのがマンションの「一棟まるごとリノベーション」。一棟まるごとリノベーションは、建て替えよりも経済面でのメリットも多いため注目されています。
(作成日2023.12.27 更新日2024.10.5)
賃貸マンションの一棟まるごとリノベーションとは
賃貸マンションでは対象となる部屋だけをリノベーションすることもありますが、「まるごとリノベーション」では、マンション一棟すべてを対象にリノベーションします。
リノベーションの方法は多岐にわたり、オーナーの希望や予算によって内容は異なりますが、部屋の内部のみ改修することもあれば、外部まで改修してマンションの雰囲気をガラっと作り変えてしまうこともあります。
築年数が経過して古くなったマンションはどうしても印象が悪く借り手がつきにくくなってしまいますが、マンションの一棟まるごとリフォームは、建て替えせずにマンションイメージや暮らし心地をアップする方法として注目を集めています。
賃貸マンション一棟をまるごとリノベーションするメリット
マンション一棟をまるごとリノベーションする主なメリットとしては、
・入居率が高まる
・建て替えに比べて費用を抑えやすい
・新築マンションと同じ土俵で戦える
・メンテナンスすることで建物の寿命を延ばすことができる
などがあげられます。
それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
新しくて魅力的な物件になることで入居率が高まる
賃貸マンションは経年すると、住宅設備が古くなったり、間取りが現代のニーズにマッチしていないなどの理由で入居率が低下してしまいがちです。とくに親世代から相続した物件ほど、その傾向が高いと言えます。
入居率が低下すると収益性も悪くなるため、オーナーさまにとって重大な問題だと言えますが、その問題を解決してくれるのがマンションの一棟まるごとリノベーションです。
リノベーションによって新しくて魅力的な物件に生まれ変わらせることができれば、入居率は向上し、収益性も高まります。
建て替えに比べて費用を抑えやすい
古くなった賃貸マンションを新しくする方法としては、「建て替え」という方法もあります。
ただ、建て替えは既存のマンションを解体するための解体費用や新しいマンションの建設費用がかかる分、どうしても費用が高騰してしまいがちです。
一方、賃貸マンションの一棟まるごとリノベーションであれば解体費用が発生することはありませんし、新しいマンションの建設するための費用も発生しません。
コストを最小限に抑えつつ、、新しく魅力的な物件に生まれ変わらせることができます。
新築マンションと同じ土俵で戦える
マンションが古くなると、建物や住宅設備の劣化によって見栄えが悪くなったり、デザインや間取りが今のトレンドやニーズにマッチしていないなどの理由によって住宅としての魅力が低下してしまいがちです。
住宅としての魅力が低下してしまうと入居率が低く、また家賃を下げざるをえなくなります。これはマンションのオーナー様にとっては死活問題です。
しかしマンション一棟をまるごとリノベーションすることで、、築年数の古い物件でも周辺の新築マンションと同じ土俵でしっかりと戦えるように。もちろん新築同等の家賃での募集も可能なため、収益アップを見込めます。
メンテナンスすることで建物の寿命を延ばすことができる
建物の寿命は、
・重量鉄骨造(S造):60年
・鉄筋コンクリート造(RC造):40〜90年
が目安となっていますが、適切にメンテナンスすることでより長持ちさせられます。とくに鉄筋コンクリート造は、メンテナンスすることで120年近く持つとも言われています。
一棟まるごとリノベーションによって劣化した部分を修繕することで、マンションの寿命が延び、より長持ちさせられる可能性が高くなります。
また今後お子さまに相続させるご予定がある場合は、一棟まるごとリノベーションでキャッシュアウトし、リノベーションした賃貸物件を受け継ぐほうが、相続税も安く、収益性も安定するため結果的にメリットが大きいと言えます。
マンション一棟をまるごとリノベーションするデメリット
マンション一棟をまるごとリノベーションする際は、
・リノベーションにかかる費用が高額になりやすい
・立ち退き交渉が必要になる
・対応できる会社が少ない
などのデメリットも知っておきましょう。
それぞれのデメリットについて詳しく解説していきます。
リノベーションにかかる費用が高額になりやすい
マンションの一棟まるごとリノベーションは「建て替え」よりは費用を抑えられるものの、マンション全体がリノベーションの対象になるため、それなりの費用はかかります。
実際の金額は、
・対象となる物件の広さ
・リノベーションの内容
・用いる建材や導入する住宅設備のグレード
など、さまざまな条件によって異なるため、正確な費用を把握するにはリノベーション会社に見積もりを出してもらう必要があります。
立ち退き交渉が必要になる
マンションの一棟まるごとリノベーションは、マンションを全体的にリノベーションするため、既存の住民に立ち退いてもらう必要が出てきます。
そこで必要になるのが立ち退き交渉です。住民に立ち退いてもらう場合、引越し費用や引越し後の数ヶ月分の家賃などの負担が発生するため、補填の内容や金額について交渉する必要があります。
立ち退き交渉はスムーズに進むこともありますが、揉めて長引き、最悪な場合は裁判に。この点は、「住戸のみ」のリノベーションにはない一棟まるごとリノベーションならではのデメリットになります。
CRAFTでは、立ち退き交渉の経験豊富な弁護士もご紹介しています。
対応できる会社が少ない
賃貸マンションの一棟まるごとリノベーションはかなり大掛かりなリノベーションになるため、どうしても対応できる会社が限られてしまいがちです。
一棟まるごとのリノベーションには対応しているものの、「あまりデザインにこだわっていない」という会社も少なくありません。
対応している会社が少ないと会社選びで手間取ってしまう可能性が高くなるので、この点も一棟まるごとリノベーションならではのデメリットだと言えます。
マンション一棟リノベーションの工事内容
マンション一棟をまるごとリノベーションした事例
マンション一棟まるごとリノベーションする上でチェックしておきたいのが、事例です。ここでは、CRAFTでリノベーションした2つの事例を紹介していきます。
事例1. 単身者向け→夫婦やカップル用のおしゃれな賃貸マンションに
ご両親から譲り受けた賃貸マンションは、築32年のため老朽化が進んでいました。防犯性の低さも気になっていたため、CRAFTで一棟まるごとリノベーションすることにしました。
もともと11戸あった部屋数を6戸にまで減らし、従来よりも住戸あたりの広さを2倍に。よりゆったりと過ごせる住居で、ターゲットを「二人暮らし」に拡大しました。
現代のライフスタイルに合わせて、バス・トイレは別々にレイアウト。追い炊き機能のある浴槽や温水洗浄便座など、さまざまな最新設備を導入しました。料理がしやすいように、キッチンには3口タイプのガスコンロを設置。
この家での豊かな暮らしを見学者にイメージさせてくれます。
2戸を1戸につなげたことで、3面の窓から採光可能になったこともポイントです。自然光がたっぷりと届く明るい空間は、心地よい1日をスタートさせてくれます。
普段はワンルームに、引き戸を閉めれば1LDKとして使用できるため、単身者はもちろん、二人暮らしのカップルからも選ばれるように。
入居者がより快適に過ごせるよう、これまでなかったエントランスとアプローチを新設。オートロックと防犯カメラでセキュリティ性を高め、女性も安心して暮らせるようにしました。
また共働き世代に配慮して、宅配ボックスも導入。白いタイルでモダンなエントランスとなりました。
前面打診調査によりタイルの不具合箇所は張り替え。屋上のルーフドレインを交換してベランダには防水工事を施すなど、外観と機能についても一新しています。
出窓は白く塗装し、グレーのファサードのアクセントにしました。
〈主なリフォーム箇所のまとめ〉
・世帯数を11戸→6戸へ減らし、住戸あたりの広さを拡大
・最新設備を導入
・内装インテリアをグレードアップ
・外壁は打診調査の上、タイル補修・塗装
・防水対策
・エントランスホールとアプローチを新設
・オートロック、セキュリティカメラ、宅配ボックスを設置
物件データ
杉並区 / 戸数:11戸→6戸 / 築32年 / リフォーム面積:353㎡ / 工期:7ヶ月 / 鉄筋コンクリート造(RC)
事例2. ワンルーム→1LDKの女性に選ばれる賃貸マンションに
ご両親から相続した、築30年の賃貸マンション。当初は建て替える予定でしたが、鉄筋コンクリート造で耐久性が高かったため、取り壊さずに一棟まるごとリノベーションすることにしました。
単身者向けのワンルームは、2部屋を1つにつなげて1住戸あたりの広さを拡大。共働きのご夫婦や小さなお子さまのいる世帯をターゲットにした1LDKに一新しています。
エントランスは、以前の倍近いスペースを確保して利便性をアップ。防犯カメラとオートロックを新設し、セキュリティ性を高めています。エントランスの手前には、雨に濡れずに利用できる自転車置場とゴミ捨てボックスも設置しました。
床にはストーン柄のタイル、壁にはダークグレーのタイルを採用し、スタイリッシュな雰囲気に仕上げています。
エントランスホールの正面には割肌の石を貼り、間接照明を照らしてアイポイントに。壁には外部と同じグレーのタイルを貼り、外からのつながりを演出しています。FIX窓から自然光がたっぷりと注ぐ、明るいエントランスホールが誕生しました。
階段を降りる際に、FIX窓から外の景色が見えることも計算して計画しています。
女性に人気のアイランドキッチンを採用しました。3口のガスコンロと広いシンクを備え、作業台はゆとりのスペースを確保。天井取付けタイプのレンジフードも設置し、すっきりとモダンな印象に。
手元が隠せるようにキッチン周りに腰壁を設け、モザイクタイルを貼ってデザイン性を高めています。
ご夫婦やファミリーをターゲットとしているため、寝室はダブルベッドを置ける広さに。壁一面に大きなクロゼットを設置し、家族の衣類をまとめて収納できるようにしました。
このクロゼット奥の壁は隣室との戸境壁であり、クロゼットが近隣の生活音を軽減する効果も果たしています。
〈主なリフォーム箇所のまとめ〉
・世帯数を8戸→4戸へ減らし、住戸あたりの広さを拡大
・最上階をオーナー住戸に
・アイランドキッチン&最新設備を導入
・女性好みのナチュラルなインテリアに一新
・外壁は打診調査の上、タイル補修
・エントランスホールとアプローチを新設
・オートロック、セキュリティカメラ、宅配ボックスを設置
物件データ
豊島区 / 戸数:8戸→4戸 / 築30年 / リフォーム面積:370㎡ / 工期:6ヶ月 / 鉄筋コンクリート造(RC)
マンション一棟リノベーションしたオーナー様の声
実際に、CRAFTでマンション一棟リノベーションしたオーナー様の声をまとめました。「すぐに満室になった」「感じのよい夫婦に入居してもらえた」など、たくさんの声をいただいています。
〈オーナー様の声1〉建物のデメリットを払拭する数々のアイデアで、すぐに満室に
お母さまが所有する築32年の賃貸マンションについて、「古くなって補修費がかさみ、当初は『建て替える』という話で進めていた」と話すKさん。大手ハウスメーカーに相談したところ、建て替え費用が高額になるということがわかりました。ハウスメーカーからも一棟リノベーションを勧められ、リノベプランを依頼。しかし、イメージしていたものと違っていたそうです。
「私たちが住むわけじゃないけれど、センスのよい賃貸物件にしたかった。そんな時にHPでクラフトさんの事例を見て『ステキだな』と思いました。母も妻も同意見だったので、モデルルームでの見学・相談会に参加しました」
その後は大手を含む各社に同じ要望を伝え、提案プランで比較することに。なかでも「クラフトさんのプランが圧倒的によかった」とKさんは振り返ります。
「建物が川に面しているんですが、『川に向けて窓をつくること』は想像していませんでした。部屋が明るくなるし、視線が空まで抜けて開放感が出ますよね。他にも、アイランドキッチンや大容量の収納、子どもと一緒に入浴できる浴室など、ファミリーに喜ばれるプランをいくつも提案してくれました。人通りの多い通り沿いなので、洗濯物を干すインナーバルコニーを設置するなど、デメリットを払拭するアイデアもうれしかったです」
賃貸マンションの競合が多いエリアだからこそ、プランでの差別化を重視したCRAFT。その結果、カップルやファミリーからの問い合わせが増え、入居者募集後は間もなく満室になったそうです。
■物件データ■
エリア:横浜市
総戸数:13戸→8戸
築年数:32年
構造:鉄骨ALC造
間取り:1LDK
リノベーション総面積:550m2
ターゲット:カップル・ファミリー(2~3人)
〈オーナー様の声2〉ペットも過ごしやすいオリジナリティのあるプランで、注目度アップ
ご両親から管理を任されていた築35年の賃貸マンション。しかし劣化が進んでおり「メンテナンスが大変だった」とOさんは話します。「両親と話し合って建て替えることにしたんですが、鉄筋コンクリート造なのでかなりの時間とコストがかかることがわかりました。それで『一棟まるごとリノベーション』することにしたんです」
棟内の一部をオーナー住戸とする予定があったことから、Oさんが重視したのは「デザイン性」でした。「大手さんとクラフトさんの提案プランを比較したところ、クラフトさんのほうが期待以上の提案だった上に、費用も抑えられていました。担当の方のフォローの様子を見て『完成までの1年間、ストレスなく進められそう』と思ったことも決め手でした」
不動産専門のリサーチャーによる調査も実施。周辺の家賃相場や近隣住民の属性を調べた結果「高収入の方、ペットを飼いたい方が多い」ことが判明しました。それらを踏まえながら、ターゲット層を設定しています。
「女性も安心して暮らせるように門扉とオートロック、防犯カメラを設置。エントランスは木目の縦格子でデザイン性を高めています。またこれまでなかった自転車置き場を設けるなど、借り手のニーズをしっかりと反映してくれました。室内にはペットドアやキャットステップ兼収納、ゲージ置き場など、ペットと快適に過ごすための工夫も。普通のマンションにはない、たくさんのアイデアが詰め込まれていました」
リノベーション後は、周辺の新築と同等の家賃で貸し出せることに。借り手は築年数で選ぶのではなく、暮らしやすさやデザイン性で選ぶことがわかりました。
■物件データ■
エリア:世田谷区
総戸数:9戸→6戸+オーナー様住戸
築年数:35年
構造:RC(鉄筋コンクリート)造
間取り:1DK~2LDK(賃貸部分)
リノベーション総面積:406㎡
ターゲット:単身・カップル・夫婦
マンションの一棟まるごとリノベーションに失敗しないために押さえておくべき2つのポイント
マンションの一棟まるごとリノベーションでは、イメージどおりの仕上がりにならなかったり、入居率や収益性が改善しないケースもあります。失敗を避ける上で重要になる主なポイントとしては、
・実績のある会社にリノベーションを依頼する
・事前のリサーチを徹底する
の、2点があげられます。それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。
実績のある会社にリノベーションを依頼する
マンションの一棟まるごとリノベーションに関する実績がほとんどない会社もあれば、一棟まるごとリノベーションの実績が豊富で、ならではのノウハウを持っている会社もあります。
実績が豊富な会社の方が安心してリノベーションを任せることができますし、ノウハウが豊富な分、最適なプランを提案してくれます。ホームページなどで実績を確認して、実績が豊富なリノベーション会社にサポートしてもらうようにしましょう。
事前のリサーチを徹底する
マンションの一棟まるごとリノベーションには、「古くなってしまったマンションを修繕し、入居率や収益性を向上させる」という、一般的なリノベーションとは異なる目的があります。入居率や収益性を高めるにはユーザーのニーズに答えられるマンションにしなくてはいけません。そこで重要になってくるのがリサーチです。
事前の周辺リサーチを徹底し、「ファミリー層が多い」「広いリビングを求めている」「宅配ボックスが欲しい」といったユーザーが求めていることを取り入れながらリノベーションを計画しましょう。
〈まとめ〉マンションの一棟まるごとリノベーションで入居率アップ
マンションの一棟まるごとリノベーションは、経済面でもかなりのメリットが多い方法です。建て替えすることなく劣化や古さといった問題を解消でき、解消することでマンションの入居率や収益性を高めることができます。
また今後お子様に相続するご予定があるなら、一棟まるごとリノベーションでキャッシュアウトし、リノベーションした賃貸物件を受け継ぐほうが、相続税抑えることができ、さらに収益性も安定。結果的にメリットが大きいでしょう。
マンションの一棟まるごとリフォームは、実績豊富なCRAFTにお任せください。入居率のアップにつながるようなリノベーションプランを提案させていただきます。
<著者>上原 宏介
住宅関連のコンテンツ作成を得意とするライター。専門的な言葉や用語が多くわかりづらくなってしまいがちな建築・リフォーム関連の情報をわかりやすくお伝えしています。さまざまな媒体で建築・リフォーム・不動産関連のコラムを多数執筆中。