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スケルトン階段とは、蹴り込み板がなく、階段の先も見通せるほど軽やかな階段のこと。ストリップ階段やオープン階段とも呼ばれることもあります。
スチールや木でつくったスケルトン階段は、階段というよりも〈カッコいいオブジェ〉のようなイメージ。このように、スケルトン階段は「空間を飾る階段」としても人気です。
スケルトン階段の魅力はどこにあるの? メリットが知りたい!
階段によって空間が分断され、狭い印象になっているお部屋。そういう時におすすめしたいのが、スケルトン階段です。
光やその奥の景色を遮ることなく、開放感はそのままに。また階段を上がったり下りたりするたびに、視線の高さが少しずつ切り替わってたのしい。
スケルトン階段で大切なのは、この特徴を活かすこと。クールで軽やかなスケルトン階段は、空間の主役になるはずです。
スケルトン階段はどんな間取りがおすすめ?
さあ、かっこいいスケルトン階段をつくろう! と思ったとき、気になるのが”スケルトン階段の間取り”。
つまりスケルトン階段をどこにレイアウトするかということです。
「やっぱりリビングにどーんと!」
「イヤイヤ、玄関にインパクトを!」
ただし、リノベーションの場合は構造やプランの関係で、スケルトン階段の位置が制限されることも。また、既存の階段を活かしてコストダウンするケースもあります。暮らす人の好みや住まいの状況により、さまざまな間取りが考えられます。
では、スケルトン階段を上手く利用した住まいの間取りをご紹介します。
こちらは、ひとつのフロアが約8坪という狭小住宅の間取図です。都心の住宅密集地では、わりとよく見かけますね。
問題は、家族があつまるLDKが4階と5階に分かれてしまっていること。
陽当たり・眺めのよい最上階(5階)はリビングで、その下の4階はダイニング・キッチン。「これでは家族のコミュニケーションがとりづらい。お父さんもさみしい!」と考えた設計士により、上下階を階段でつなげるプランが生まれました。
ここでキーポイントとなるのが既存のらせん階段です。ただし、もともとは壁に囲まれた閉鎖的な階段でした。そこで、壁をなくしてオープンのスケルトン階段に変更。既存のらせん階段の手すりやささらを白く塗装し、曲線のうつくしさがシンプルに伝わるようにしています。
ダイニング・キッチンで過ごしていると、リビングの自然光や家族の気配、それから、あたたかな笑い声が届きます。
スケルトン階段は「暑くて寒い」というデメリットが?
「スケルトン階段って寒くないんですか~?」と聞かれることがあります。
寒いです。そして暑いです。階段から冷気暖気が逃げていきます。しかし以下の方法で冷気や暖気が逃げることを防げます。
・床暖房を入れる
・断熱材を入れる
・窓をペアガラスに交換、またはインナーサッシを設置
・入り口に建具を設ける
たとえばこちらの実例をご覧ください。もともとは壁に囲まれたふつうの階段でした。
リノベーションで設けたのは、白いスチールとアメリカンブラックチェリーのモダンなスケルトン階段です。リビング側から見ると、ガラスケースに納めたような美しさ。逆に玄関側からは、スケルトン階段の先には上品なリビング、緑ゆたかな庭の景色をたのしめます。
美しいスケルトン階段をガラスケースに入れ、あたたかさや涼しさをキープすることができました。
スケルトン階段は子どもに危険?転落防止ネット以外の対処法
スケルトン階段に憧れているものの、転落が心配で踏み出せないという方もいます。
そんなときしばしば登場するのが、転落防止ネット。お子さまが大きくなったら取り外すことができるし、コストもそれほどかかりません。「一時的に事故を防ぎたい」という場合はこちらがおすすめです。
ただし、「転落防止ネットを付けると、スケルトン階段のよさがなくなっちゃうよね」という声も。そういう場合は、手すり部分にガラスを入れてはいかがでしょう。スケルトン階段の開放感はそのまま、ガラスの壁でしっかりと転落防止します。
そしてもう1つ、ルーバーを設ける方法があります。
こちらは、リノベーションで玄関に吹き抜けとスケルトン階段を設けた実例です。
小さな2人のお子さまがいたことから、側面にはルーバーを設けて転落防止に。フローリングや靴収納と同じ色の木を使い、統一感を持たせたこともポイントです。さりげなく来客からの視線を遮ることもポイントです。
モダンなスケルトン階段の実例3つ
リノベーションでスケルトン階段をつくった3つの実例をご紹介します。
〈1〉黒皮鉄のクールなスケルトン階段
黒皮鉄を使ったスケルトン階段。薄い黒皮鉄板を織り上げたように繊細なシルエットが、訪れた人の目を惹きます。
階段の先には窓の緑が。スケルトン階段のすき間からは光がこぼれ、ラフに塗装した壁に趣のある陰を落とします。
〈2〉光を届ける白いスケルトン階段
トップライトの光を1・2階へ落とす、鉄骨のスケルトン階段。
直線ささらより繊細でリズミカルな印象を与える稲妻ささら。リビングとスケルトン階段の間の間仕切りはFIXガラスを採用しました。
冷暖房効果を考えつつ、LDKの明るさに配慮しています。
上から下りてくる自然光と稲妻ササラのシルエットが、階段を上がる人の心をいやします。
〈3〉木箱が浮いたようなスケルトン階段
玄関に設けた、吹き抜けとスケルトン階段。
踏み板の厚さ、面の取り方、ささらの見え方などにこだわったオリジナルのスケルトン階段。
スチールの手すりも最低限にし、木の板がふわりと浮かんでいるような軽やかさを演出しました。まるでオブジェのように、空間を美しく彩ります。
窓から差し込む光はスケルトン階段の間を通り抜け、ラウンジスペースへ心地よく広がります。訪れたゲストもオブジェのような階段を眺めながらくつろげます。
まとめ
「スケルトン階段っていいな」と思っていても、いざ取り入れるとなると、ちょっと悩みますね。
「転落したらどうしよう」
「寒いんじゃない?」
「間取りが難しくなるかも」
なんて考えて躊躇してしまいがちです。しかし、今回ご紹介したようにスケルトン階段は
・空間の開放感をキープ
・スペースを有効に使える
・上下階のつながりをつくる
・”見せる”階段としてモダンなイメージに
というメリットがあります。
「寒い、暑い」「落ちそう」といったデメリットは
・間仕切りなどで冷暖房効果をアップできる
・ガラスやルーバーで転落防止(もちろん転落防止ネットでもよい)
といったプランの工夫でなくすことができます。
これからリノベーションをお考えなら、プランにスケルトン階段を取り入れてみませんか? 住まいの価値がぐっと高まります。
<著者>CRAFT 編集部
一級建築士・二級建築士・インテリアコーディネーター・一級建築施工管理技士・二級建築施工管理技士・宅地建物取引士が在籍。さまざまな知識を持つプロフェッショナル集団が、リノベーションや物件購入についてわかりやすく解説します。