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ご両親と暮らしていた二世帯住宅を、賃貸併用住宅にリノベーションしたSさん。「キッチンが暗い」といったお悩みを解消するため、南側にLDKを大きく移動。シンプルモダンで過ごしやすい住まいに一新しました。
「両親が遺してくれた家を、子供に引き継ぐことができてうれしい」というSさん。自然光がたっぷりと注ぐリビングでお話をうかがいました。
老後の家賃収入と、相続税対策を考えてリノベーションすることに
CRAFT(以下C):もとはご両親と二世帯同居されていたそうですね。今回リノベーションしたきっかけを教えていただけますか?
Sさん:主人の両親が建てた二世帯住宅で、私たちの海外帰国後に同居をスタートしました。もう33年前のことです。それから両親がなくなり、1階はずっと空き家状態。子ども達は独立し、使わない部屋もでてきました。これを機会に、老後を考えてリノベーションしようと思ったんです。
C:老後を考えて…。具体的に教えていただけますか?
Sさん:まずは「家賃収入」です。一世帯で暮らすには広すぎるので、1階を賃貸すれば家賃収入になると考えました。もうひとつが「相続税対策」です。いずれ1階の住戸に子どもが住めば、相続税の節税になりますから。
C:「小規模宅地等の特例(※)」ですね。都心にご実家がある場合は評価額が高く、相続税が高いので特例のメリットは大きいと思います。そのふたつを踏まえて今回リノベーションをされたんですね。ちなみに建て替えや住み替えもご検討されましたか?
Sさん:はい。この家は主人の友人の建築家が設計した家なんです。家族とのよい思い出も詰まっているので、やはり壊さずに残したいと思いました。
C:今回、相見積りは取らずにクラフトだけにお声がけくださったとか。
Sさん:はい、大手さんも気になっていたのですが…。細かく説明をしなくても、この家のよさを理解して提案してくれる会社にお願いしたかったんです。
(※)用途によって特例は異なるが、二世帯同居なら相続した土地のうち330㎡までの評価額を80%減額できる。
2階の居住スペースは、明るいシンプルモダンな空間
C:お住まいの2階は窓が多くて日当たりがいいですね。LDKに入った瞬間、とっても明るい気分になります。
Sさん:もともとダイニング・キッチンは北側にあったので、暗さが気になっていたんです。そこで「南側にキッチンを動かしたい、昼間も電気を使わなくてすむように」というリクエストを出しました。
キッチンカウンターを設けてダイニングテーブルがわりに。ここで子どもや孫にご飯を出していると「なんだかカフェみたいだね」と言われます。キッチンに立っているとちょうど目線が窓の外になるので、すごく気持ちがいいです。
C:ダイニングキッチンを一番明るいスペースに移動したんですね。デザインのこだわりはありましたか?
Sさん:デザイナーさんに「ホテルライクやナチュラルな感じが好き」「タイルを使いたい」とご相談したところ、こちらを提案してくださいました。やさしいライトベージュのタイルと、使いやすそうなペニンシュラキッチンはまさに理想通り。すぐに気に入って、そちらのプランでお願いすることにしました。
C:寝室は北側に移動して寝室~WIC~洗面室がつながる導線となっています。こちらのプランはどういう経緯で決まったのでしょうか。
Sさん:今まではロフトを寝室にしていたので、階段の上り下りが大変だったんです。それで2階に寝室を移動していただきました。またあちこちに分散していた収納は、今回のリノベーションで一箇所に集約することに。デザイナーさんが「寝室はWICにつなげましょう」と提案してくださって、この動線ができたんです。
C:壁~WICの入り口ドアにはボタニカルなアクセントクロスが貼られていて、華やかですね。北側ですがとても明るいイメージとなっています。実際に過ごされてみて、いかがですか。
Sさん:とっても暮らしやすいです。夜中に喉が渇いてもキッチンが近いからすぐに水を飲めるし、出かける前に服を着て、メイクをして…という流れがとてもスムーズ。またWICがひとつになったことで、どんな服があるかすぐにわかります。断捨離は大変だったけれど、いいきっかけになりました。
洗面室の藤色のタイルは私のリクエストです。寝室と洗面室はプライベートな空間だから、ちょっと遊んでみたいと思いました。
1階の賃貸スペースは、既存の魅力を残してリノベーション
C:1階は当面の間は賃貸に出し、いずれはお子さまがお住まいになる計画もあるそうですね。2階とはイメージが違って、和モダンな雰囲気です。
Sさん:1階は天井の梁や障子など既存の趣を残してリノベーションしています。ファミリーの方でもたのしく暮らせるように、クローズドキッチンをオープンな対面キッチンに変更。キッチンサイドには大きなパントリー兼ファミリークロークも設けています。
洗面室はもともとのブルーのモザイクタイルを活かしつつ、洗面カウンターと浴室を入れ替えて、さわやかなイメージにしました。
C:こうしたデザイン性や収納量のある賃貸物件はあまり多くないので、大きな差別化になりますね。
今回のリノベーションは、ご家族やご両親との思い出がたくさん詰まった住まいを「どう受け継ぐか」が大きなテーマでした。老後の家賃収入になるように、思い出とともにお子さまに受け継いでいけるように。そういう意味で大変ご満足されているようですが、これからご自宅をリノベーションする方にアドバイスをいただけますか。
Sさん:まず「仮住まいは生活圏を変えないほうがいい」ということです。私は幸い、近所に仮住まい先が見つかり、行きつけのスーパーや美容院を利用できました。また近所にいたので工事現場をときどき見せていただけたのもよかったです。職人さんにお茶を出すついでに、少しお話しをさせていただいたり。
そんな中で、現場監督さんに床の中の傷んでいるところを見せていただくことがあって。コストアップにはなったけれど、直接見て、納得して補修を依頼できたのはよかったですね。「リノベーションは予期しないことで、予算が上がることがある」ことも知っておいたほうがよいかもしれません。
プランニングや仮住まい、両親の荷物を含めた二世帯分の整理、家具や家電の購入….リノベーションは本当に大変でした。でも体力があるうちに、おもいきってよかったです。これからは静かな日常をゆっくりとたのしみます。
※こちらの詳しい事例は、デザインリフォーム・リノベーション事例 #20493をご覧ください。
<著者>中野 瀬里乃
大学卒業後、出版社・フリーライターを経て、2013年リノベーション会社CRAFTへ入社。自社HPやオウンドメディアにてリノベーション・不動産・建築・インテリア関連の事例紹介やコラムを多数執筆。