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お客さまインタビューvol.38「吉村順三の建築を住み継ぐこと」

お客さまインタビューvol.38「吉村順三の建築を住み継ぐこと」
お客さまインタビューvol.38「吉村順三の建築を住み継ぐこと」

4年前に、クラフトでご実家の「離れ」をリノベーションしたSさん。今回はご両親から譲り受けた「母屋」をリノベーションしました。らせん階段、リビングの大きな吹き抜け、随所に使われた障子。

43年前に吉村順三氏によって設計された美しい邸宅は、建て替えるのではなく、リノベーションすることで後世に受け継がれていきます。

43年前に建てられた鉄筋コンクリート住宅を「壊すか、残すか」

今回リノベーションした「母屋」が建てられたのは、ご主人さまが高校生の頃。「もう43年前になるけれど、建設中に両親と現場を見に来たことは今でもはっきりと覚えています」とご主人さま。「後から有名な建築家だと知ってびっくりしました。随所に職人技が込められていて、古くなっても構造躯体がしっかりしている。今見てもすばらしい建築です」。

この家に価値があるのはわかっていたものの、劣化はそれなりに進んでおり、一時は建て替えも考えたというSさんご夫婦。「クラフトさんに『建て替えとリノベーション、どちらがよいでしょうか』とご相談したところ、鉄筋コンクリート造だから建て替えはかなり高額になることがわかったんです。それでリノベーションすることに決めました」(奥さま)

当時の趣を残して、味わいのあるモダンな住まいに

リノベーションでSさんご夫婦が強く希望したのは「使わない部屋がないようにしてほしい」ということ。304㎡の邸内は広すぎて、ご両親は一部の部屋しか使用していなかったそうです。

「『プライベートとパブリックの導線を分けて…』のような間取りの希望はお伝えしました。でも前回のリノベーションでクラフトさんの実力を知っていましたし、私たちの好みも把握していただいていたこともあり、ほとんどはデザイナーさんにお任せでした」(奥さま)

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そこでデザイナーが提案したのは、吉村順三建築の趣を残しつつ、現代の暮らしに合ったモダンな空間。

間口の広いゆったりとした玄関は、タイルと木が重厚な印象。その先に広がる贅沢なリビングへのプロローグとなっています。既存を残したらせん階段を上がると家族の寝室やバスルーム、正面は純和風のゲストルーム、右に進めばLDKに。プライベートとパブリックを完全に分離しました。

廊下がなく、居住スペースが広く取られた画期的な間取りはそのまま活かしています。

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ダイニングでは、庭の樹々を美しく切り取る正方形の組子が叙情的なイメージを与えています。

「普通の障子よりも桟の感覚が広く、桟や枠が細い〈吉村障子〉を再利用しました。窓際に敷き詰められた鉢植えを置くための石も、そのまま。デザイナーさんが『吉村さんらしい要素は大切したほうがいい」と、残す提案をしてくださったんです。変えなくてよかった」と奥さま。

変えるところは思いきって、大胆に

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「残すところは残したけれど、変えるところは大きく変えました」と話すご主人さま。その言葉どおり、LDKの間取りとデザインは大きく変わっています。

それぞれ独立していたリビング・ダイニング・キッチン・家事室がゆるやかにつながり、大空間のLDKに。リビングにはご主人さまご希望の薪ストーブ、その背面の壁にはタイルを貼り、クラシカルな雰囲気に仕上げました。玄関~LDKの窓際まで続く床のタイルは、ヨーロピアンオークのフローリングと美しい対比を見せています。

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なかでも奥さまのお気に入りはキッチンです。プランニング時はコロナ禍の真っ最中。自宅で食事をする機会が増えたこともあり、ダイニング・キッチンを充実させることで日常がよりゆたかになると考えました。

「朝食やランチは窓際のファミリーダイニング、ティータイムは奥のテラスにつながるメインダイニング、夕食はキッチンサイドのダイニングテーブルなど使い分けています。とくにキッチンサイドは天板にIHを入れているので、すき焼きやお鍋をするのに便利です」(奥さま)。

キッチンは、前回と同じkitchenhouseでオーダー。Mieleの食洗機やGAGGENAUの鉄板プレートなどこだわりの設備をセレクトしています。

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十分な広さを確保したキッチンの奥には、奥さまの作業スペースをレイアウト。カウンターテーブルの上では、お気に入りのルイス・ポールセンのペンダントライトがやわらかな光を投げかけています。

「ここでミシンを踏んだり、パソコンをしていると、帰宅する家族や来客の様子が正面の窓から見えるんです。コンパクトだけど、私の大切なものが詰め込まれた心地のよい空間です」(奥さま)

またLDKのどこにいてもテラスの樹々が視界に入るところは、こちらの住まいの大きな特徴。

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フルオープンサッシからは心地よい風が舞い込み、邸内にいながらも深呼吸したくなるような開放感を感じます。もともと日本庭園風の庭だったところをバーベキューができるウッドデッキに替え、建設当時に植えられた木を残したそうです。

踏み石も、この家で長らく使われていたものを再利用。さらにさかのぼれば、ご主人さまのおじいさまの家で使われていたそうです。ところどころにさりげなく、ご主人さまの思い出が散りばめられていました。

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玄関サイドの格子戸の先には、凛とした和の空気をまとったゲストルームが広がっていました。

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床の間や長押(なげし)、窓際には庭に面した広縁があります。壁は左官、天井は竿縁天井で仕上げた本格的な和室のしつらえ。吹き抜けのある広いLDKとはまた違う、旅館のようなしみじみとした心地よさが広がっています。

性能もアップして、快適に過ごせるように

母屋に移り住むにあたって、Sさんご夫婦が心配していたのが「寒さ」と「湿気」でした。とくに性能面に強くこだわっていたというご主人さま。

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「鉄筋コンクリート造なのでとにかく冬は寒く、湿気もすごかったんです。そこで今回は全体的に断熱材を充填し、窓ガラスとサッシを全交換しました。屋根は下地の野地板を二重にして通気層をつくり、遮熱シートを入れる方法で遮熱効果を高めています」。家全体の断熱・遮熱性が向上し、この夏は2階の寝室で快適に過ごせたとか。「冬が訪れる前に、屋根も新しくできてよかった」

さらに床下の配管も全交換するなど、建物全体の性能をアップ。新築のように快適な住まいに生まれ変わっています。

ためらわず、大胆に間取りを変える

お客さまインタビューvol.38「吉村順三の建築を住み継ぐこと」

最後に「実家リノベーションで大切なことは何ですか?」と質問すると、奥さまは「ためらわずに物を捨てること」と教えてくれました。ご両親が長年暮らしたご実家には、たくさんの荷物があふれていたそう。ひとつひとつに大切な思い出があったけれど、少しだけ手元に残して大半を処分したそうです。

「私が実家から受け継いだ食器棚も、今回のリノベーションで思いきって処分しました。デザイナーさんにもご相談したけれど、やっぱり置く場所がないなと思ったんです。もうひとつは既存にとらわれず、今の家族のライフスタイルに合わせて大胆に間取りを変えること。リノベーションには多少の思いきりが必要だと思います」(奥さま)

ふたたびこの家で暮らすのは、24年ぶりというご主人さま。「当時の名残を感じるところもあれば、思い出せないくらい変わったところもあります。懐かしいような新鮮なような…なんだか不思議な気分ですね。思い出がたくさん詰まったこの家で、これからも家族と暮らすことができてうれしいです」

※こちらの詳しいプランは、デザインリフォーム・リノベーション事例 #20278をご覧ください。

中野 瀬里乃

<著者>中野 瀬里乃

大学卒業後、出版社・フリーライターを経て、2013年リノベーション会社CRAFTへ入社。自社HPやオウンドメディアにてリノベーション・不動産・建築・インテリア関連の事例紹介やコラムを多数執筆。

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