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壁式構造のマンションは、「間取り変更がむずかしい」と言われていますが、理想の間取りにリフォームできないわけではありません。今回は、壁式構造の制約を感じさせない4つのリフォーム事例をもとに、壁式構造のマンションでも間取りを変えられるリフォームのコツをお伝えします。
壁式構造のマンションとは?
鉄筋コンクリート造のマンションには、主に「ラーメン構造」と「壁式構造」の2種類があります。近年は「ラーメン構造」のマンションが多い傾向にありますが、中古マンションには壁式構造のマンションも。
構造を見分けるポイントは以下になります。
■壁式構造のマンションの特徴
・壁と天井、床で構成される段ボール箱のような構造
・室内には柱が1本もない(壁に凹凸がない)
・5階未満の低層マンション
■ラーメン構造のマンションの特徴
・柱と梁で構成されるジャングルジムのような構造
・部屋の四隅に太い柱がある(壁に凹凸ができる)
・5階以上の中層〜高層マンション
壁式構造のマンションは、室内に柱の凹凸がなく空間がスッキリしています。一方、壁で建物を支えているため、間仕切り壁を動かすリフォームがむずしいことが一般的です。
壁式構造のマンションのメリット
壁式構造のマンションの主なメリットは、次の2つです。
優れた耐震性がある
壁式構造のマンションは、耐力壁と呼ばれる壁で建物を支えています。そのため、柱と梁で支えるラーメン構造に比べて、耐震性が高いのが特徴です。頑丈な壁は厚みがあるため、防音性や遮音性に優れていることもポイント。集合住宅でも、近隣の音が気になりにくく、真夏や真冬でも屋外の気温に影響されにくいメリットがあります。
空間に凹凸がなくスッキリしている
柱がなく壁と床、天井で構成されているため、梁型や柱型の凹凸がないことも壁式構造のマンションの特徴です。フラットでスッキリとした空間をつくりやすいほか、家具を配置しやすいといったメリットも得られます。
壁式構造のマンションのデメリット
一方で、壁式構造のマンションにはデメリットもあります。代表的なものは、次の2つです。
間取りの変更に制限がある
壁のほとんどが耐力壁なので、無計画に壁を撤去したり開口を設けたりすると、建物の強度に影響を与えてしまいます。間取りを制限されやすいという点が、リフォームにおいてはデメリットになってしまいます。
壁が厚くなりやすい
厚いコンクリートの耐力壁は、リフォームで断熱材や下地を追加すると30cm近い壁厚になってしまうこともあります。壁の厚みの分だけ、部屋が狭くなってしまうこともデメリットと言えるでしょう。
リフォームの工夫によっては、希望の間取りにできる
あえてデメリットも紹介しましたが、壁式構造のマンションはリフォームに向いていないわけではありません。プランを工夫することで、希望の間取りや空間は十分実現できます。
リフォームで「広々としたリビングにしたい」場合、隣の部屋との壁を撤去してひとつの空間にすることはむずしいかもしれません。しかし、部屋同士のつながりをうまく持たせる工夫で、広がりを感じさせることができます。たとえば、壁を間仕切り家具のようにデザインして、壁の存在感を抑えたり、壁の開口から隣の部屋をちらりと見せて、奥行きを感じさせたりする方法があります。
壁式構造のマンションで大胆にリフォームした4つの事例
ここからは〈CRAFT〉のリフォーム事例をもとに、壁式構造を活かした間取りの工夫を紹介します。
リフォーム事例1:ダイニングと分けた広いキッチンで、開放的な空間に
壁式構造のマンションでも、構造上問題のない間仕切り壁なら撤去して空間を広くできます。こちらの事例では、既存のキッチンとダイニングの間仕切り壁をなくし、広々としたキッチンにリフォームしました。
広くなったキッチンには、収納力のあるパントリーや食事も出せるキッチンカウンターを設置。ご希望だった「カフェのようなキッチン」を叶えました。また、隣のリビングにダイニングテーブルを置き、ゆったり食事をするスペースも確保しています。
リフォーム事例2:造作建具で、梁の存在感を隠す
本来は室内の凹凸が少ない壁式構造のマンションですが、ときには「梁」のある物件もあります。撤去できない梁は、できるだけ見せたくないもの。そこで、こちらの事例では背の高い造作建具で、梁の存在感を感じさせない提案をしました。
ブラックのアイアンフレームとガラスを組み合わせたインパクトのある建具は、横桟のラインが梁の下と揃うように設計。そのため、梁がほとんど気になりません。視覚的な効果で梁の存在感を抑え、デザイン性の高いインテリアを実現しています。
リフォーム事例3:動かせない壁は、家具として取り込む
こちらの壁式構造のマンションでは、構造的に問題のない範囲で間仕切り壁を撤去してリフォーム。別々の部屋だったLDKが一体となり、開放感が生まれました。
しかし、一部に撤去できない壁が残ってしまいました。そこで、この壁をリビングとワークスペースをゆるやかに区切る「パテーション」として活用。さらに、壁と一体になったオリジナルのTVボードを造作し、壁の存在感を隠しています。
動かせない壁は家具として取り込むことで、壁式構造でも思い切ったリフォームを可能にした実例です。
リフォーム事例4:壁の開口部で空間を切り取り、奥行きを演出
壁式構造マンションでは、間仕切り壁を撤去できず、開口部もこれ以上広げられないため、隣り合う部屋につながりを持たせたリフォームがしづらいことがあります。
しかしこの事例では、壁の開口部からあえて隣の部屋を見せるように設計し、空間につながりと奥行きを生み出すことに成功しました。
リビングの奥にちらりと見えている棚は、寝室に置いた本棚です。ほんの少しのぞく木の温もりが、グレーでまとめたクールなリビングのよいアクセントに。寝室からこぼれるライトのあかりも、ふたつの空間をゆるやかにつなげてくれます。
〈まとめ〉壁式構造のマンションでも、工夫次第で希望通りのリフォームはできる
壁式構造のマンションは、「間取りの制約が大きくリフォームには不向き」と言われています。しかし、既存の間取りをうまく活かし、壁や梁の存在感を隠したり、あえて残したりすることで、壁式構造のデメリットも解消することができます。
〈CRAFT〉では、構造にとらわれずに、理想の暮らしを実現するリフォームを数多くご提案しています。壁式構造のマンションでも、思い通りの間取りにしたいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
<著者>CRAFT 編集部
一級建築士・二級建築士・インテリアコーディネーター・一級建築施工管理技士・二級建築施工管理技士・宅地建物取引士が在籍。さまざまな知識を持つプロフェッショナル集団が、リノベーションや物件購入についてわかりやすく解説します。