物件データ
築40年を超える6階建てのオフィスビルを相続したWさん。安定した賃貸収入を得ながら毎日の暮らしを快適にするため、1~4階をテナントスペース、眺望の恵まれた5~6階を住居としてリフォーム。6階はパーティーサロンのようなイメージで、LDKを中心に設計。5階はゲストとプライベートのスペースを分けながら、浴室はどちらからもアクセスできるプランを採用しました。外観は塗装やサッシの交換に加えてオートロックドアや宅配ボックスの採用で、デザイン・機能とも時代とマッチした建物に一新。住居としての住み心地も、テナントビルとしての価値も高めています。
BEFORE写真
一部を住居に用途変更。
エントランスも新たに、
魅力ある複合テナントビルへ一新
Wさんが思い描くライフスタイルに合わせて、陽当たりの良い5~6階はご夫婦の居住スペースに変更。1~4階はテナントスペースとして、家賃収入も確保できるように計画しました。RC造のため、壁の撤去をともなう間取り変更には制約が出てきますが、構造的な検証を行ってできること・できないことを整理した上で、理想の空間を実現しています。また、5〜6階を住居とするにあたり、階段室を防火区画にするといった、消防法上のコンプライアンスを遵守しながら進める必要がありました。室内と同じ仕上げ材を取り入れるなどの工夫で、住居らしい空間に。エントランスも一新し、来訪者の目を引く複合ビルとして再生させました。
LDK
「ゲストを招いて賑やかに過ごしたい」というご希望に合わせて、誰でも気軽に立ち寄れるパーティーサロンのような空間をデザイン。土足のまま利用する想定で、床には光沢感のある大理石調タイルを敷きました。壁には木質パネルを、天井には間接照明を端から端まで入れて奥行きを強調。ラグジュアリーなショップのような雰囲気に。ダイニングテーブルの前にはカウンター収納とプロジェクトスクリーンを設置し、ゲストと音楽も映像も楽しめます。
LD~テラス
リビングと続くテラスにはウッドデッキを敷設。ゲストがステップに腰掛けて談笑したり、テラスで外を眺めながらお酒を飲んだり、リビングで映画を鑑賞したりと、人が集う空間にしました。パーティの開催や、キッチンスタジオ・撮影スペースとして貸し出すことも想定しています。エレベーターホールへの扉には木目調のシートを貼り、取っ手はドアノブからバーハンドルに交換。内と外をつなぐ空間のため、室内に違和感なく馴染むデザインを意識しました。
和室
玄関と隣り合う和室は、ゲストが気軽に宿泊できる客間として計画。玄関から和室にかけて同じ和紙の壁紙を貼り、連続性を表現するとともに、間接照明を入れて空間のアクセントにしました。市松模様に敷いた畳は、一部を外せば掘りごたつにできる仕組み。ゲストと一緒にお酒を酌み交わしながらくつろげます。宿泊時の動線にも配慮し、玄関にもサニタリーにも隣接している配置もポイントです。
住居玄関
玄関サイドには、木の格子引き戸やカウンター収納を造作。正面の壁にはWさんがお気に入りの版画が引き立つ和紙の壁紙を貼り、和モダンの空間に仕上げました。右手には和室、左手には本棚とセカンドリビングという配置で、格子と半透明のガラスによってプライベート空間をゆるやかに仕切っています。床には1階のエントランスと同じグレーのタイルで、鏡面仕上げのタイプを採用。建物内に統一感をもたらしつつ、和のテイストとも調和させています。
エントランス
高圧受電設備や消火活動用の連結送水管などの設備機器は、人工木のルーバーで目隠しをしてすっきりとしたエントランスに。いざという時に使いやすいよう、ルーバーのレイアウトを調整しています。集合ポストや宅配ボックスを新設し、入口はオートロック付きの自動扉に。開閉部は室内のドアと同様の木目調で、サイドにはガラスを入れて見通しを高めました。宅配ボックスのステンレスパネルを外部から建物内まで貼り、視覚的につながりを感じさせています。
外観
外壁はアイボリーで塗装して装いを新たに。隣地との間仕切り壁は、片側を白、もう片側を濃いグレーにして、周囲と調和させました。サッシは、ブロンド色からナチュラルシルバー色に交換。モルタル仕上げだった駐車スペースには、ベージュのタイルを大小組み合わせてグリッド状に貼りました。社名のロゴはお父さまから受け継いだ歴史として残しつつゴールドで塗装し、明るい印象に仕上げています。
本棚によって回遊性を
5階のプライベートスペースには、ウォークインクロゼットをぐるりと囲むように本棚を設置。右にはサニタリー、左にはセカンドリビングがあり、回遊できる配置です。その奥にはIHコンロやシンクを備えたカウンターをつくり、お茶を入れたり、読書をしたりと多目的に利用できます。Wさんのアイディアで本棚の背板にミラーを貼り、映り込みによって奥行きを感じさせています。
ワンルームの寝室
寝室は、落ち着いた空間を演出。床にはブラックチェリーの挽板フローリングを敷き、木の格子引き戸や畳の和室を取り入れ、和の趣を感じさせるモダンな空間をデザインしました。夫婦でゆったりとくつろげるよう、寝室とセカンドリビングは仕切りを設けず一続きに。赤みがかった色と木目が印象的なパドックの一枚板のテーブルが引き立ちます。
テラスまで視線が抜けるサニタリー
5階のサニタリーは、引き戸を開ければユーティリティやセカンドリビング、テラスまで見渡せるようにレイアウト。光や風の心地良さと開放感をどこにいても感じられる空間をデザインしました。ホワイトがベースのシンプルで清潔感のある空間をつくりつつ、洗面台の収納扉やタオルウォーマーはWさんが好きなサーモンピンクを採用。水回りのアクセントにしています。