目次
「ずっと前から都内の一戸建てを探してるのに、なかなか希望のエリアにみつからないんです」という声。そんな方におススメしたいのが、ビルをリノベーションして住むこと。
今回はビルを住まいにリノベーションした事例やメリットをご紹介します。
都内の一戸建てではなく、ビルに住むメリットとデメリット
都内の一戸建てでもマンションでもなく、ビルに住む。このような人が決して特別変わっているかというと、そうでもありません。さまざまなメリットを感じて、ビルに住むことにしたのです。
〈メリット〉
・都心の好立地にあるため、通勤・通学がラク
・鉄骨造、鉄筋コンクリート造により耐久性が高い
・壁や柱のない大空間をつくりやすい
・テナントに貸して家賃収入を得られる
ただし、住居用としてつくられていないビルだとデメリットもあります。
〈デメリット〉
・キッチンやバスルームなどが備わっていない(リノベのコストがかかる)
・小型ビルだとワンフロアが狭い
・隣のビルが密接していて陽当たりが悪い、のぞかれやすい
・バルコニーがないので洗濯がしにくい
・繁華街やオフィス街でさわがしい
これらのデメリットをいかにリノベーションで解決するかがポイントになってきます。
ビルをリノベーションして住む人の3つのケース
「ビルに住むのおすすめ!」なんて言われても、そう簡単にイメージできませんよね。そこで、ひょんなことから(!)古いビルをリノベーションして住むことになった人々をご紹介します。
〈case1〉都内の持ちビルに暮らす
ご実家、もしくはご自身が「古いビルを持ってる」なんて方もいらっしゃるのではないでしょうか。ほとんどのビルはオフィス街や商業地にあるため、立地がとてもよいはずです。
こちらの方も、ご実家がお持ちの古いビルをリフォームして暮らすことになりました。ただし、もともとオフィスだったため、キッチン、バスルームなどは一切なし。リノベーションで新たに設けています。
場所は中央区。銀座も日本橋も東京駅も生活圏内。ご主人さまの通勤もラクになったし、奥さまもショッピングやランチなどに出かけやすくなったそうです。暮らしがぱっと賑やかになりました。
〈case2〉都内のビルを買って暮らす
「ビルに住んでます」なんて聞くと、なんだかカッコいいですよね。
こちらの方も江東区の好立地の古いビルを買ってリノベーションしました。
自然光が拡散する白い空間。美しいらせん階段と吹き抜けが上下階をつなげ、フロアの狭さを感じさせない伸びやかさです。
スタイリッシュなビルですが、お子さま3人の子供部屋もしっかり確保。週末は屋上でバーベキューをしたりと、都内のビル暮らしをたのしんでいます。
〈case3〉都内のビルを買って暮らしつつ、家賃収入を得る
こちらの方は、社員寮として使われていた渋谷区の古いビルを購入しました。1・2階をテナント用賃貸スペースに、3・4階を住まいにリノベーション。ハイセンスな街ということもあり、アパレルショップの店舗とオフィスが入っているそうです。
古いビルでも立地がよければ、家賃収入を見込めます。一階をレストランやカフェに貸したり、ワンフロアをオフィスにしたり。もしかしたら、もっとも賢いビルの住まい方かもしれません。たとえばテナントが入っているビルを購入し(つまりオーナーチェンジ)、一部だけ住居にリノベーションするのもよいでしょう。
ビルをリノベーションするなら気をつけたい3つのこと
〈1〉明るいところにLDKをレイアウト
オフィス街や商業地にあるビルは、隣のビルが密接していて採光がむずかしいことも。プライバシーも気になるため「窓を開けたくない」という方もいるでしょう。
しかし、そんなビルでも陽当たりがよく、視線が抜けるような場所がどこかにあるはず。
周囲をビルに囲まれ、うなぎの寝床のように細長の形状は暗くなりがち。そこで窓の光を上手く取り入れる工夫を施しました。トップライトの下にダイニングを設け、明るい食卓に。さらに、リビングの腰窓は光量が限られていたことから、全面窓に交換しました。
陽当たりがわるく、隣の視線が気になりがちな建物密集地のビルは、こうした採光の工夫が必要です。
〈2〉水回りやインナーテラスなど、暮らしに必要な設備の充実
オフィスだったビルには、キッチンやバスルームなど水回りの設備がありません。そこで新たに設けることになりますが、注意したいのが配管やダクトの経路です。
キッチンや浴槽を置くのは簡単ですが、問題は配管やダクトの経路をどうするか。ダクトは梁を避けながらできるだけクランクしないように。また配管なら床をフラットに保てるように計画します。
さらに気をつけたいのが、バルコニーがないビル。…洗濯物が干せません。バルコニーに洗濯物を干せない高級マンションもあるため、抵抗がない方もいるようですが。「やっぱりお布団を干したい」なんて方もいるでしょう。
そういうときは、陽当たりのよい場所にインナーテラスを設置する方法があります。これなら雨でも洗濯物を干せるし、道行くサラリーマンに洗濯物を見れられるようなこともありませんね。
〈3〉メンテナンスと性能アップ
「ビルは耐久性がある」といっても、メンテナンスをしなくていいわけではありません。もし古いビルをリノベーションするなら、全体の性能を見直すことが必要。
こちらは築20年のビルで、雨漏りと結露にお悩みでした。そこで外壁の劣化した下地の目地を埋めて雨漏り対策を。さらに窓にインナーサッシを設け、結露防止にしています。また、壁に発砲ウレタンを吹き付けて断熱性もアップ。フルリノベーションのタイミングで、これまでのお悩みを解消しました。
これ以外にも、外壁にクラックがあったり、屋上の防水が劣化していたり、構造体の鉄が錆びてしまっていたりと、住まいの耐久性が落ちていることも。リノベーション時にしっかりと状態をチェックし、必要があれば補強しましょう。
〈まとめ〉華やかな暮らしを送りたいなら、ビルリノベーションがおすすめ
いかがでしょう。
これまで「ビルに住むなんて想像しなかった」という方も、一戸建てと同じように、場合によってはそれよりも快適に暮らせます。
たとえば都内の駅から近くの一戸建て。
ちょっと歩けばデパートやショッピングセンター、カフェやレストラン。
仕事帰りは、終電を気にせずにレストランで食事をたのしみ、
休日は近所のカフェでブランチし、散歩のついでにショップで買物。
お友だちも「買物で近くに寄ったから来ちゃった」なんて気軽に立ち寄りやすくなりますね。
木造の一戸建てと比べても、プランが自由になりやすいのもビルの特徴です。古いビルでも構造がしっかりとしていれば、問題ないでしょう。
都内の希望のエリアに一戸建てが見つからないなら、都内のビルを視野に入れてみてはいかがでしょう。
<著者>中野 瀬里乃
大学卒業後、出版社・フリーライターを経て、2013年リノベーション会社CRAFTへ入社。自社HPやオウンドメディアにてリノベーション・不動産・建築・インテリア関連の事例紹介やコラムを多数執筆。