東京・大田区の高級住宅街〈田園調布〉。別荘地のようにさわやかな街

東京の住みやすい住宅街をご紹介するシリーズ。今回ご紹介する大田区田園調布は、全国的にも知られる有名な高級住宅街です。一方で松濤・南麻布・広尾に比べて都心からやや遠い郊外型住宅地。「田園調布がなぜ人気なの？」と思う方もいるでしょう。しかし「東京の高級住宅街」の条件である

・高台に位置する
・区画の大きな邸宅が点在
・低層マンションが多い
・道路幅が広い
・街路樹が多い
・住宅街としての歴史がある
・街なみが美しい

という条件を、田園調布はすべてクリアしているのです。都心の高級住宅街に勝るとも、劣らずの美しい街。都心から距離があるゆえに、その静けさは本物です。そんな大田区田園調布の魅力をご紹介します。

大田区の高級住宅街・田園調布駅の西側ロータリー。ここからすでに田園調布らしさを感じます。目の前に高い建物がなく、ゆったりとした道路が放射状に広がり、その道路に沿ってシンボリックな銀杏並木が青い空を背景に連続している。歩いていると、牧歌的な気分がふつふつと湧きあがって来ます。

もうひとつ特徴的なのが、各住宅の塀の低さ。

街路樹だけでなく、それぞれの邸宅の庭にも緑が植えられ、低めの塀をとびこえて道にあふれ出しています。これが松濤だとプライバシーの関係で要塞のような、建物が見えない塀が目立つのですが、田園調布は真逆。低めの生垣と石垣によってさりげなく視線が遮られている程度です。

古くから住まう方が多く、ご近所の方とも顔見知りで安心して暮らしている方が多いのでしょう。そのオープンな住宅が、田園調布の街なみに表れていました。

都心の高級住宅街は「かつて江戸屋敷だった」というケースが多いのですが、田園調布は違います。「格式」「歴史」という意味では、都心の高級住宅街には及ばないかもしれません。

田園調布の誕生は、1918年。東急電鉄創業者の渋沢栄一によって計画がスタートしました。目指したのはパリのシンボル、エトワール凱旋門。田園調布駅西側のロータリーを中心に、3本の道路が放射線状に広がっています。渋沢栄一の憧れとロマンがつまった都市計画により、整然とした気品ただよう田園調布が生まれました。

武家屋敷が残っていた都心では、こうした計画は到底無理だったでしょう。「まっさらな土地」だったからこそ、美しい街づくりを成しえたのです。

田園調布が高級住宅街でありつづけている理由は、〈田園調布憲章〉の存在が大きいと言えます。〈田園調布憲章〉とは、田園調布の町会が決められた独自の建物ルールです。一部を抜粋してみます。

・建物は高さ9m、地上2階まで
・土地の最低面積は165平米以上
・ワンルームマンションの建設NG
・駅前と商業地域以外に、店舗は出さない
・できたら塀ではなく、生垣に
・もし塀にするなら、高さ1.5m以下のフェンスか柵のみ

たとえば最近は、大きなお屋敷があった土地に、いつの間にか3階建ての狭小住宅がいくつも建っている…なんてことはよくありますよね。しかし〈田園調布憲章〉で「土地は160平米（50坪）以上」と定められているため、そんなことは不可能です。資金的にもゆとりのある方が、それなりの広さの土地を手に入れることで、高級住宅に欠かせない「ゆったりとした区画」を守り続けているのです。

駅からゆるやかな坂をのぼって駅を離れると、はっとするくらい静かに。この高台が田園調布3丁目。田園調布の中でも一等地です。

目にするのは建築家が設計したであろうモダンな外観の豪邸、茶室のある数寄屋橋づくりの豪邸など。石造りの重厚な塀と、そこからあふれだす豊かな植栽に囲まれています。高台なので日差しがたっぷりと注ぎ、樹木が道路にさわやかな模様を落とす影。こんな街だったら子育て中も、老後も一生暮らしていけそうです。田園調布に暮らしていて、「老後は田舎に移住したい」なんて思う方はいないのではないでしょうか。

駅の東側に広がる田園調布2丁目にも大谷石の塀が印象的な豪邸が点在。公立の名門として知られる田園調布小学校付近にも大きな邸宅が並んでいます。

田園調布駅は東急東横線と東急目黒線が乗り入れています。自由が丘・代官山・渋谷が近いため、買い物にも便利です。また目黒線は目黒駅から東京メトロ南北線と都営地下鉄三田線に直通しています。溜池山王・日比谷・大手町へお勤めの方も通いやすいと思います。

ただし、本当に利便性を求めるなら田園調布はおすすめしません。渋谷区や港区で暮らした方がやっぱり便利。あえて都心からちょっと離れた大田区の高級住宅街・田園調布を選ぶのは、家族と静かな環境で暮らしたい方。「近くにレストランや商業施設があるといいな」じゃなくて「緑がたくさんあるといいな」という方。まったく思考が違うのです。

住宅街のイメージが強い田園調布ですが、実は買い物スポットが充実しています。西側でいうと、駅直結の〈東急スクエアガーデンサイト〉にはスーパーやドラッグストア、本屋も。また少し自由が丘方面へ行くと〈ナショナル田園〉（※南麻布にもあるインターナショナルなスーパー）もあります。

田園調布駅　東側の商店街

さらに東側には商店街があるため、日常の買い物に困ることはないでしょう。

実は田園調布にはおいしいベーカリーが多いことも有名。田園調布駅と多摩川駅の間にある〈est Panis〉や〈NORA BAKERY ノラベーカリー〉をはじめ、レベルの高い名店が競い合っています。

多摩川台公園

子どもたちは、「宝来公園」のほか、紫陽花で有名な「多摩川台公園」、「田園調布せせらぎ公園」で遊ばせることができます。とくに「せせらぎ公園」は、隈研吾氏設計の「田園調布せせらぎ館」が昨年オープンし、毎週末はかなりの人々でにぎわっています。芝生の中庭で小さな子どもを遊ばせたり、そんな庭を眺めながらソファに座って読書をしたり。

隈研吾氏設計の田園調布せせらぎ館

さらに足を伸ばせば、多摩川の広い土手で思いっきり体を動かすことができます。

学区は田園調布小学校。都内の公立の中では教育レベルが高い名門校として知られています。正門前には警備員が常駐しているなど、セキュリティ体制も万全でし。

またこのエリアでは西側の「田園調布雙葉小学校附属幼稚園」「田園調布雙葉小学校」「田園調布雙葉中学高等学校」に通うお子さまも多くいます。「田園調布雙葉中学高等学校」からの入学は原則としてできないため、お子さまに「田園調布雙葉小学校」の受験をさせる方も多いとか。私立も公立も、教育環境には恵まれています。

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田園調布で人気のマンションは田園調布2丁目の〈ドレッセ田園調布プレゼンス〉。田園調布駅徒歩3分という利便性と、傾斜地を活かした雁行雛壇形状のため全住戸角部屋というプレミアムなマンションです。全室屋内駐車場・トランクルーム付きなのもポイントが高いですね。（残念ながら現在売り物件はありません）

とはいえ田園調布駅かいわいにマンションは少なく、探すとしたら多摩川駅まで範囲を広げた方がいいでしょう。多摩川駅前の田園調布1丁目あたりには、上質なマンションが多く点在しています。しかも西傾斜の高台を利用して建てられているため、眺めがよいマンションが多いです。

「売り出し待ち」が常にいるほど人気なのは高台の〈ブランス田園調布〉〈田園調布パークマンション〉。どちらも多摩川駅方面を見下ろすように建つ低層マンションです。

ほかにも〈ディアナコート田園調布〉をはじめ、リノベーションすればとても素敵になる中古マンションが点在しています。戸建てなら田園調布駅かいわい、マンションなら多摩川駅かいわいがおすすめです。

東京の住みやすい住宅街、大田区田園調布をご紹介しました。

松涛や南麻布などに比べてのんびりとしており、開放的な住まいが目立つなどオープンな雰囲気がただっています。そういう意味では成城あたりと近いかもしれません。しかし成城に比べて凛とした空気があり、正統派な高級住宅街というイメージが強くあります。（実際に訪れて空気を感じていただければ、違いがわかると思います）そういう意味では、渋沢栄一の街づくりは成功していると言えるでしょう。

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