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「部屋がせまい」「風通しが悪い」なんていうお悩みはありませんか? そういう場合は
リフォームで、室内ドアを引き戸に変えてみてはいかがでしょう。
引き戸は、開き戸と比べると開閉のスペースをとりません。また開けたり閉めたりするだけで、部屋の用途が変わります。家中に風を巡らせ、シーンに応じて空間の役割を変えてくれる。
これから引き戸のメリットと、上手な引き戸の取り入れ方、リフォーム事例をご紹介します。
室内ドアを引き戸にリフォーム、どんなメリットが?
〈引き戸のメリット1〉スペースのムダがない
引き戸はスペースのムダをつくりません。
ドアを開けるとそこに人がいて、「ぶつかるかと思った!」となっちゃうような間取りがあります。 あるいは室内ドアが開いていると「収納の扉が開かない」というお住まいも。
よくある開き戸は、可動域(ドアを開閉するときのスペース)が必要です。ドアの前に人がいたら危ないし、可動域には家具を置くこともできません。
これに対し、引き戸は可動域が極めて少ない。狭い空間でも開閉でき、人がぶつかることもなく、家具のレイアウトも自由になります。
トイレや洗面室といったスペースが限られる場所にも、引き戸はおすすめです
〈引き戸のメリット2〉開放感をつくることができる
引き戸は部屋と部屋をつなげ、開放感を一気に高めてくれます。
空間をつなげたいけど、「このスペースはお客さまに見られたくない…」ということってありますよね。そんなときは、引き戸をこのように使ってみてはいかがでしょう。
こちらは、キッチンとダイニングの間に引き戸を設けました。料理中でバタバタしているときは閉めて、ゲストや家族にゆっくりとくつろいでもらえるように。
いつもはフルオープンにし、広々としたLDKでくつろげるように。ゲストや家族へのささやかな心遣いです。
キッチンはサブウェイタイルの壁や、古材の棚、ガラスと真鍮のペンダントライトなど、奥さまのお好きなカフェテイストでまとめました。開けると、空間のイメージがガラリと変わるのも魅力ですね。
〈引き戸のメリット3〉風通しがアップ
引き戸は風通しのよい家をつくるのにぴったりです。
自然の風は南から北へ吹きます。そのため南北に窓を設けるのがもっとも効果的な通風だと言われています。ただし間取りが細かく分かれていて、「南北に窓があるのに風が抜けない」という方もいますよね。窓を開けているとバタン!と突然しまったり、ドアが邪魔になってしまったり。
これに対し、引き戸なら開放したままで家中の風を通すことができます。ちょっと目隠ししたいなら、半分だけ開けておく…など、都合のよい開口の幅をキープしやすいことも引き戸のメリット。
熱気のこもりやすいキッチンも風通しがアップ。風が通るため、冷房にたよらないエコな暮らしが実現できそうです。
〈引き戸のメリット4〉空間を有効に使える
引き戸はマンションなどの限られたスペースを有効活用します。
廊下のせいで生活空間が狭くなってしまうのもイヤですよね。でも廊下がないと部屋間を移動できません。そこで考えたのが、この間取り。廊下が洗面室を兼ねています。
このとき重要な役割を果たしているのが引き戸です。普段は引き戸をオープンにし、廊下として使用。閉めれば完全独立した洗面室として使うことができます。
開けたり閉めたりするだけで、ひとつの空間が〈廊下〉と〈洗面室〉に変わります。限られた空間を有効に使うためのオリジナルのプランです。
しかし引き戸にもデメリットがあります
このようにメリットの多い引き戸ですが、デメリットもあります。
引き戸は気密性が低いため、音が漏れやすくなります。たとえばトイレの音、お子さまの音楽の音など。開き戸よりも「音が気になる…」という方もいるかもしれません。
「静かじゃないと眠れない」というなら、寝室などは開き戸にしたほうがよいかもしれません。
室内ドアをすべて引き戸にするのではなく”南北につながる入り口だけ”というように、適材適所で取り入れてみてはいかがでしょうか。
インテリアの主役になる、こだわり引き戸の実例3選!
〈インテリアになる引き戸1〉万本格子の引き戸
お施主さまが骨董屋さんで購入したという万本格子の引き戸。「リフォームする時はぜひ使いたい」と、少しずつ集めてきたそうです。
リフォームでは、LDKの入り口に設置。住まいの中でもっとも目立つ場所ですね。
敷居は、昔ながらの竹のレールを採用。建具の枠はひのきにエイジングをかけ、なじませています。開けたり閉めたりするたびに、年季の入った引き戸のリアルな手応えが伝わってきます。
万本格子の間にはポリカーポネートを入れて、冷暖房対策も。
〈インテリアになる引き戸2〉木のルーバーの引き戸
上質なアジアンリゾートホテルのテイストにリフォーム。寝室も、リラックスできるホテルライクな空間に生まれ変わっています。
寝室の雰囲気をぐっと高めているのが、木のルーバーの引き戸。少し開けて風を通したり、閉めて目隠しをしたりと、シーンにあわせてルーバーの角度を調整できることもポイント。
隣室の様子がうっすらと見え、エキゾチックな開放感が生まれていますね。
〈インテリアになる引き戸3〉シノワズリな格子の引き戸
シノワズリな雰囲気がお好きだというお施主さま。
LDKの入り口には、シノワズリを意識したオリジナルの格子の引き戸を設けています。
建具はクラフトがオリジナルで製作しました。リビングや窓の外の景色も映り込み、幻想的な雰囲気。春には桜も眺めることができるそうです。
格子の隙間からこぼれるやわらかな光に誘われるように一歩一歩、廊下を進みます。
ただし、引き戸にリフォームできないケースもある
引き戸には、かならず引き代(ひきしろ)というものが必要です。引き代とは、引き戸と同じ幅の壁のこと。
引き戸を開けたときに、引き戸を引き込めるだけのスペースがなければ、取り付けられません。
また、扉が壁の中にすっぽりと納まる戸袋式の引き戸にする場合、その壁にはスイッチやコンセントを設置できないことに。このように、引き戸は開き戸に比べてプランが制限されてしまいます。「引き戸にしたくても、できないケースがある」ということを知っておきましょう。
まとめ
いかがでしょうか。室内ドアを引き戸にリフォームする4つのメリットをご紹介しました。
・スペースのムダがなくなる
・開放感をつくる
・風通しがアップする
・空間を有効に使える
また万本格子やアイアンガラス、組子といったデザイン性の高い引き戸なら、インテリアとしても活躍するはずです。
障子や襖など、昔から日本の住まいに使われてきた引き戸。限られた空間で過ごしやすくするための智恵と工夫が隠されています。
これからリフォームする方は、ムリのない範囲で取り入れてみてください。
<著者>CRAFT 編集部
一級建築士・二級建築士・インテリアコーディネーター・一級建築施工管理技士・二級建築施工管理技士・宅地建物取引士が在籍。さまざまな知識を持つプロフェッショナル集団が、リノベーションや物件購入についてわかりやすく解説します。