物件データ
平日は都心で多忙に働くご夫婦。「週末は何もかも忘れてゆっくりと過ごしたい」と、海の近くに中古マンションを購入。築4年とまだ新しく、はじめはリフォームせずに過ごしていたものの、お酒と料理が好きなご夫婦に間取りがフィットしていないことが判明。ライフスタイルに合い、かつ「別荘」という非日常性を感じさせる空間にデザインリフォームしています。たとえば海に面したLDKの天井には、イタリア風の漆喰を塗り、光沢ある平面に窓の景色が映り込むようなイメージに。深い静寂の中に身をゆだねるような、大人の別荘が誕生しました。「いずれは本邸をこちらに移したい」ということから、十分な収納を確保してます。
シンプルな空間に
個性的なテクスチャーを重ねて
インテリアの主役は、目の前に広がる大きな海と空。それらが調和するシンプルな空間としつつも、ナラや御影石、珪藻土といった自然素材を重ねて印象を深めています。玄関横の和室は、漆喰・珪藻土・御影石・葭・竹・錆塗装などを使い普遍的かつインパクトのある空間に。周囲に玉砂利を敷くなどして独立した茶室のように仕上げたこともポイントです。
抜けるような開放感
LDKの天井は漆喰の左官仕上げに。大理石のパウダーや骨材の入った質感ゆたかなイタリア風の漆喰は、パールがかった優しい光沢が特徴です。窓の外に広がる景色が美しく映り込み、空間に奥行きが生まれました。玄関ホールとの間の間仕切りは、ガラスドアとFIXガラスに変更。玄関に入った瞬間、抜けるような開放感に包まれます。
キッチンは上質な家具
マットなステンレスとナラ材を組み合わせ、上質な家具のように仕上げたアイランドキッチンはamstyleでオーダー。背面にはGAGGENAUのバーベキューグリルを配置し、ビルトイン収納にはオーブンや冷蔵庫、ワインセラーといった家電を整然と収めています。収納を玄関ホールまで連続させることで、より伸びやかで堂々とした印象に。キッチンは入り口側に移動し、和室からのアクセスをスムーズにしました。
白御影石と無垢のナラ
キッチン周りの床は、イタリアの白御影石を採用しました。リビング・ダイニングにはカーペットを貼り、床材を張り分けておだやかにゾーニング。白御影石は水磨き加工でマットに仕上げ、漆喰やナラとなじませています。壁にはオリジナルデザインのオープン棚を設置。厚さ45mmの無垢のナラ材を使い、コーナーにはR(曲線)をとり断面を多く見せることで、木の質感を際立たせています。棚そのものがモダンなオブジェのような印象を与えました。
小宇宙を感じさせる和室
周りに玉砂利を散りばめ、沓脱ぎ石を置いて庭の茶室のような小宇宙を再現しています。障子を閉めると、完全に独立した空間に。戸袋にフタを設けたことで、オープン時にすっきりと見せるなどディテールにもこだわりました。ご夫婦や友人たちとお酒がよりおいしく飲める、とっておきの空間です。
和室をモダンな
囲炉裏部屋に
ご主人さまのご希望は「田舎の囲炉裏」。まるで燻(いぶ)されて黒くなった古民家の壁のようなイメージで、外の壁には黒い珪藻土を荒く塗りました。にじり口のようにかがみながら中に入れば、天井は高く、市松に並ぶ葭(よし)と竹の竿縁で粋な演出。厚い厚さ45mmのナラの無垢材で、炉縁のように重厚な座卓を造作しています。その上部には火棚に見立てた照明兼換気扇を設置。邸内のモダンなテイストを損なわないよう、無骨ながらも洗練された雰囲気をキープしています。
視線を誘う土間の通路
玄関から続く和室の横は、土間の通路に。重厚な黒御影石は、白い玉砂利によってより存在感を強調しました。黒い縦ラインは、天井のルーバーとともに視線をリビングの先の海に誘います。ルーバーは家具と同じナラ材を使用し、ダクトによる下がり天井のラインに合わせてフラットに仕上げています。和室の垂れ壁がルーバーの中まで入り込むように納め、伸びやかさを生んだこともポイントです。
海につながるバスルーム
海とつながるようなイメージに仕上げるため、バスタブを斜めにレイアウトし、腰壁の高さまでレベルを上げました。海を最大限に感じながらバスタイムを楽しめるように。青みがかったタイルはすがすがしい海と調和。洗面室との間仕切りはガラスドアとFIXガラスに。裸足になる洗面室の床はナラの無垢フローリングを採用しています。