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古くなってきた戸建てには、「フルリフォーム」と「建て替え」という2種類の方法があります。今回は、リフォームと建て替えの違いやそれぞれのメリット・デメリットに触れながら、どちらで対応するべきかの判断基準について解説していきます。
(作成日2024.2.22 更新日2025.1.9)
戸建てのフルリフォームと建て替えの違い
戸建ての「フルリフォーム」と「建て替え」には以下のような違いがあります。
フルリフォーム | 建て替え | |
---|---|---|
費用 | 木造 30万円/㎡~ RC造・鉄骨造 35万円/㎡~ | 40万円/㎡〜60万円/㎡ |
工期 | 4〜6ヶ月 ※工事のみの期間 | 5〜10ヶ月 ※工事のみの期間 |
建物の寿命 | 適切にメンテナンスすれば、リフォーム後も40〜80年以上住み続けられる | 適切にメンテナンスすれば、木造住宅で80〜100年、鉄筋コンクリート造の住宅で120年近く住み続けられる |
工事の制限 | 制限が生じる可能性がある | 制限がない |
費用
CRAFTで戸建てをフルリフォームする際の費用相場は以下のとおりです。
- ・木造 30万円/㎡~
- ・RC造・鉄骨造 35万円/㎡~
この金額は、比較的高品質なグレードの建材や住宅設備を取り入れる場合の費用相場になります。一方、「CRAFTのリフォームと同じグレード」で建て替えた場合の費用は60万円/㎡~。費用はセレクトする素材や設備に左右されるため、仕様のランクを落とせばより費用を抑えることができますが、いずれにしてもフルリフォームの方が費用を抑えやすい傾向です。
工事にかかる期間
戸建てをフルリフォームする際の工事にかかる期間は、「4〜6ヶ月」ほどです。一方、戸建ての建て替え工事にかかる期間は、「5〜10ヶ月」ほどとなっています。
こちらも工事の内容によって大きく異なりますが、一度既存の建物の解体が必要になる分、工期についても建て替えの方が長くなりやすい傾向があります。
建物の寿命
建物の寿命については、「新しい建物を建てる」という性質上、建て替えの方が長くなりやすい傾向があります。築30年や築40年など、ある程度の築年数が経過している住宅であればなおさらです。
ただ、適切にメンテナンスすれば、木造住宅で80〜100年程度、鉄筋コンクリート造の住宅であれば120年近く積み続けられるとされています。
そのため、建て替えでなくリフォームであっても、適切に行えば、リフォーム後に40〜80年近く住み続けることが可能です。
工事の制限
建て替えは既存の建物を解体してから新しい建物を建てるため、基本的に工事の内容に対する制限はありません。
一方、フルリフォームは既存の構造躯体を活用しながら改修を行うため、動かすことができない壁や柱が出てきてしまうことがあり、リフォームの内容に制限が生じることがあります。
築30年・40年の戸建てのフルリフォームのメリットとデメリット
戸建てのフルリフォームには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
フルリフォームのメリット
⚫︎建て替えよりも費用を抑えられる
フルリフォームでは、建物の基礎と構造躯体を活かすため、建て替えほど撤去・解体費用がかかりません。そのため、建て替えよりも「費用を抑えやすい」というメリットがあります。とくに構造躯体の状態がよく、補強などが不要であれば、建て替えの約1/2の費用でフルリフォームできるケースも少なくありません。その分、内装や設備のグレードにこだわることができます。
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⚫︎間取りもデザインも新築以上に
基本的にはフルリフォームで理想の間取りを実現できます。鉄筋コンクリートの壁式構造や、鉄骨造のブレース構造など、建物によっては制限されることもありますが、CRAFTではプランを工夫し、できる限り理想の間取りを叶えています。また素材感やディテールにもこだわり、「ホテルライク」「シンプルモダン」「リゾートライク」といったお好みのデザインに。新築当時よりもグレードアップできることが、フルリフォームのメリットです。
⚫︎外観・外溝もリフォームできる
戸建ての場合は外観やエントランス、ポーチ、駐車場もリフォームできます。外壁塗装はもちろん、屋根付きガレージやアプローチを新設したケースも。フルリフォームなら、ご近所の方々から「建て替えたの?」と聞かれるほど、これまでとは全く異なるイメージを与えることができます。内側から外側まで一新し、気持ちのよい新生活をスタートできる点も、フルリフォームのメリットです。
⚫︎建物の状態をチェックし、内側から新築に
戸建ては見た目の状態が良くても、内部が劣化しているケースがあります。フルリフォームは構造躯体のみに解体し、建物の状態をくまなくチェック。構造躯体の劣化はもちろん、耐震性や断熱性、水漏れ、配管などの状態を確認し、必要があれば補強工事を行います。表面的なリフォームではなく、内部ももれなくチェックすることで、これからも長く安心して暮らせるようになります。
⚫︎既存の良いところ活かせる
フルリフォームでは「既存のよい部分」を活かすことができます。たとえば、愛着のあるらせん階段やトップライト、建具などを部分的に残しつつ、現代の暮らしにあった間取りとデザインに一新することが可能です。子供たちの思い出が詰まったご自宅、思い入れのあるご実家、こだわって建てられたことがわかる中古住宅などは、建て替えではなくフルリフォームがおすすめです。
フルリフォームのデメリット
⚫︎建て替えに比べると間取りが制限される
フルリフォームは間取りの自由度は高いものの、建て替えよりは制限されてしまいます。とくに鉄筋コンクリートの壁式構造や、鉄骨造のブレース構造などは構造壁やブレース(筋交い)に影響されるため、工夫あるプランニングが大切です。構造計算の上、壁を撤去できるケースもありますが、慎重に行う必要があります。
⚫︎劣化が激しいと、補修コストがかかる
構造部分の劣化が著しいほど、リフォーム時に補修コストがかります。あまりにも補修が多すぎると、総費用が建て替えと変わらなくなってしまいます。またプランニング中に理想が膨らみ、いつの間にか予算オーバーしてしまうこともあるため、「コストをかける部分」「コストを抑える部分」とメリハリあるプランニングが大切です。
⚫︎対応できるリフォーム会社が少ない
フルリフォームには深い構造知識と豊富が必要なため、対応できるリフォーム会社が少ないのが現状です。リフォーム会社はたくさんありますが、CRAFTのような「フルリフォーム専門会社」となると、かなり限定されてしまいます。HPのフルリフォーム事例を見たり、実際にフルリフォームされたモデルルームを見学するなどして、設計力・施工力を見極めることが大切です。
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築30年・40年の戸建ての建て替えのメリットとデメリット
戸建ての建て替えには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
建て替えのメリット
●プランの自由度が高い
建て替えは、既存の建物の構造によって制限されることがありません。そのためフルリフォームよりもプランの自由度が高く、「3階建てにしたい」「敷地いっぱいに建物を建てたい」など、幅広いご希望を実現できます。
●資産価値を高められる
耐用年数を過ぎると建物の価値はゼロに近い状態になりますが、建て替えでは住宅を新築するため、建物の資産価値を高めることができます。物件の売却時には有利です。
建て替えのデメリット
●フルリフォームよりもコストがかかる
建て替えは既存の住宅を解体して更地にし、新しい住宅を建てるため、解体費用や基礎工事費用などがかかります。構造によっては「フルリフォームの倍近く」かかることも珍しくありません。
●フルリフォームよりも工期が長い
建て替えは解体期間や基礎工事期間を含めると、住めるようになるまで工期がかかります。仮住まい期間が長く、精神的な負担が長くなる点にも注意が必要です。
●既存のよい部分を残せない
すべてを解体して更地にするため、既存の思い入れある空間も無くなってしまいます。リフォームのように「こだわりの和室を残したい」ということはできません。「よい部分を残しながら一新したい」と考える方には不向きです。
戸建てのフルリフォームと建て替え、迷ったときの判断基準
どちらにもならではのメリット・デメリットがあるフルリフォームと建て替えですが、戸建てを「フルリフォームと建て替えのどちらで対応するべきか」迷ったときの判断基準としては、
・予算
・建物の状態
・建物の構造
の、3つです。これら3つの判断基準を踏まえた上で、フルリフォームに向いているケースと建て替えに向いているケースについて、それぞれ解説していきます。
フルリフォームに向いているケース
戸建てを建て替えるのではなくフルリフォームするべきケースとしては、以下のようなケースがあげられます。
- ・グレードにこだわりたい
- ・基礎部分の劣化が少なく、補修の必要がない
- ・既存の住宅の良いところを活かしながら住宅を新しくしたい
「住まいのグレードにこだわりたい」という方は、フルリフォームがおすすめです。構造躯体を活かすリフォームであれば、工事費用を抑えられるため、その分の費用で内装や設備のグレードをアップできます。
また、基礎部分の劣化がそれほど進んでおらず、補修の必要がないのであれば、その基礎部分をフル活用できるフルリフォームを選ぶべきだと言えます。
愛着のある既存の住宅の良いところを残したり活かしたりしながら改修できる点もフルリフォームのメリットなので、「思い入れのある部分は極力残したい」というときにもおすすめです。
建て替えに向いているケース
戸建てをフルリフォームするのではなく、建て替えるべきケースとしては、以下のようなケースがあげられます。
- ・予算と時間に余裕がある
- ・基礎の部分の劣化が進んでいる
- ・既存の住宅だとやりたいことができない
予算に余裕があり、費用を抑える必要性がそこまで高くないケースだと、建て替えも一つの選択肢になります。また、基礎部分の劣化が進んでいて補修にコストがかかるときは、建て替えで基礎の部分から新しくしてしまうのが効率的です。
既存の住宅によって間取りの変更が制限されるなど、リフォームでやりたいことができないようなケースも、建て替えの方がおすすめだと言えるでしょう。
建て替えと迷った結果、リフォームを選んだお客さまの声
当初、43年前に建てられた鉄筋コンクリート住宅を「壊す」か「残すか」で迷っていたお客さま。そこで、「建て替えとリノベーション、どちらで対応するべきか」についてCRAFTにご相談いただきました。
鉄筋コンクリート造なので建て替えるとなるとかなり高額になること、それぞれのメリットとデメリットをお伝えしたところ、「ご実家の思い出を残せる」リフォームを選択されました。
43年前に建てられた住宅ということもあって「寒さ」と「湿気」に不安を感じていましたが、
- ・断熱材の充填
- ・窓ガラスとサッシの全交換
- ・屋根への遮熱シートの設置
などによって住宅の性能が大きく向上したことで、それらの不安も解消され、快適に過ごせる住まいになりました。
戸建てをフルリフォームした3つの事例
フルリフォームする際にチェックしておきたいのが、実際に住宅をフルリフォームした方の事例です。ここでは、住宅の構造別にフルリフォームの事例を3つ紹介していきます。
事例1. 築-年 お子さまが独立したタイミングでフルリフォーム
世田谷区にある戸建てをフルリフォームした事例です。お子さまが独立したタイミングでご依頼いただきました。
2階にあったルーフバルコニーを取り込み、より奥行きの感じられるリビングに。リビングとオーダーメイドのキッチンは、ご夫婦でゆったりと過ごせる空間になるようゆるやかにゾーニングしています。
曲線の美しいダウンフロアや、2階からロフトに上がるためのスケルトン階段など、こだわりの詰まったデザインもポイントの一つです。
事例2. 築33年 中古で買ったRC戸建てをフルリフォーム
横浜市にある築33年のRC造を購入し、フルリフォームした事例です。
曲線の壁が印象的な物件だったので、リビング・ダイニング間のステップも曲線にしつつ、TVボードも壁の曲線に合わせてオーダーしました。CUCINAでオーダーした木目と大きなカウンター収納が印象的なキッチンや、白で統一したモダンな玄関ホールなども目を引きます。
屋根やベランダの防水やFIX窓を二重にして断熱性能を向上させるなど、住まい全体の性能もアップしています。
事例3. 築44年 ご実家の鉄骨戸建てをフルリフォーム
豊島区にある築45年の鉄骨造の戸建てをフルリフォームした事例です。
もともと倉庫として使っていた1階部分を、子世帯の住居にしました。キッチンや浴室など、生活する上で欠かせない住宅設備を新設し、快適に過ごせるよう断熱工事も実施。
建物の構造上撤去できない柱とブレース(筋交い)がありましたが、リビングとダイニングの間仕切りとして活かせるプランを提案し、グレーに塗装することでインテリアにおけるアクセントとして取り入れています。
〈まとめ〉戸建ては「リフォーム」か「建て替え」かで迷ったらプロに相談しよう
戸建てのリフォームと建て替え、それぞれのメリット・デメリットに触れながら、判断基準などについて紹介してきました。ただ、どちらで対応するべきか判断するのが難しいケースも少なくありません。
戸建てをフルリフォームする最大のメリットは、建て替えに比べて費用を抑えやすい点があげられます。数百万円単位で費用を抑えられるケースも多いので、費用を重視するのであればフルリフォームを検討するべきです。
もしフルリフォームと建て替えのどちらで対応するべきか迷ってしまうようであれば、ぜひCRAFTにご相談ください。
プロの視点で判断し、最適なプランをご提案させていただきます。
<著者>上原 宏介
住宅関連のコンテンツ作成を得意とするライター。専門的な言葉や用語が多くわかりづらくなってしまいがちな建築・リフォーム関連の情報をわかりやすくお伝えしています。さまざまな媒体で建築・リフォーム・不動産関連のコラムを多数執筆中。