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古くなってきた住宅には、「フルリフォーム」と「建て替え」という2種類の方法があります。今回は、フルリフォームと建て替えの違いやそれぞれのメリット・デメリットに触れながら、どちらで対応するべきかの判断基準について解説していきます。
(作成日2024.2.22 更新日2024.9.18)
フルリフォームと建て替えの定義は?
フルリフォームとは?
フルリフォームとは、基礎・構造躯体を残して解体し、住まいをイチからつくるリフォームのこと。フルリノベーション・全面リフォーム・まるごとリフォーム・大規模リフォームと呼ばれることもあります。
大幅な間取り変更、内装や設備のグレードアップ、断熱工事、配管の交換など、大掛かりな改修が可能です。戸建てはさらに、外観・外構の一新や防水工事、耐震工事なども同時にできます。
プランの自由度が高いフルリフォームは、「住まいのお悩みの解消」と「理想の暮らしの実現」を同時に叶えることができます。
建て替えとは?
建て替えとは、現在建っている住まいを基礎から解体・撤去し、更地にしてから新築すること。建物の老朽化が進み、フルリフォームにはコストがかかる場合に、建て替えが選択されるケースが多くあります。
ただし築年数の古い戸建ての中には、現行の建築基準法に準じていない「再建築不可物件」もあり、この場合は建て替えができないためフルリフォームの選択肢しかありません。また、「要セットバック物件」は建て替えはできますが、その際に敷地を後退させる必要があります。
戸建ては状況によって、建て替えられなかったり、プランを制限されるケースがあるため、ご自宅が「再建築不可物件や要セットバック物件に当てはまらないか」を事前に調べておきましょう。
フルリフォームと建て替えの違い
上記を踏まえた上で、「フルリフォーム」と「建て替え」を比較してみましょう。
コストパフォーマンス | 工事期間 | プランの自由度 | |
---|---|---|---|
フルリフォーム | ◎ | ◎ | ○ |
建て替え | △ | △ | ◎ |
フルリフォームは建て替えよりも間取りが制限されるものの、フルリフォームの実績豊富な会社であれば、制約を感じさせないプランを提案してくれます。また、建て替えより費用を抑えられるため、コストフォーマンスも◎。
ただし躯体の劣化が進み、補強工事に費用がかかるケースがあります。新築と変わらないくらいの費用がかかる場合は、建て替えを検討しましょう。
フルリフォームのメリットとデメリット
フルリフォームのメリット
⚫︎建て替えよりも費用を抑えられる
フルリフォームでは、建物の基礎と構造躯体を活かすため、建て替えほど撤去・解体費用がかかりません。そのため、建て替えよりも「費用を抑えやすい」というメリットがあります。とくに構造躯体が頑丈な鉄筋コンクリート造や鉄骨造の住宅なら、建て替えの約1/2の費用でフルリフォームできるケースも少なくありません。その分、内装や設備のグレードにこだわることができます。
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⚫︎間取りもデザインも新築以上に
基本的にはフルリフォームで理想の間取りを実現できます。鉄筋コンクリートの壁式構造や、鉄骨造のブレース構造など、建物によっては制限されることもありますが、CRAFTではプランを工夫し、できる限り理想の間取りを叶えています。また素材感やディテールにもこだわり、「ホテルライク」「シンプルモダン」「リゾートライク」といったお好みのデザインに。新築当時よりもグレードアップできることが、フルリフォームのメリットです。
⚫︎外観・外溝もリフォームできる
戸建ての場合は外観やエントランス、ポーチ、駐車場もリフォームできます。外壁塗装はもちろん、屋根付きガレージやアプローチを新設したケースも。フルリフォームなら、ご近所の方々から「建て替えたの?」と聞かれるほど、これまでとは全く異なるイメージを与えることができます。内側から外側まで一新し、気持ちのよい新生活をスタートできる点も、フルリフォームのメリットです。
⚫︎建物の状態をチェックし、内側から新築に
戸建ては見た目の状態が良くても、内部が劣化しているケースがあります。フルリフォームは構造躯体のみに解体し、建物の状態をくまなくチェック。構造躯体の劣化はもちろん、耐震性や断熱性、水漏れ、配管などの状態を確認し、必要があれば補強工事を行います。表面的なリフォームではなく、内部ももれなくチェックすることで、これからも長く安心して暮らせるようになります。
⚫︎既存の良いところ活かせる
フルリフォームでは「既存のよい部分」を活かすことができます。たとえば、愛着のあるらせん階段やトップライト、建具などを部分的に残しつつ、現代の暮らしにあった間取りとデザインに一新することが可能です。子供たちの思い出が詰まったご自宅、思い入れのあるご実家、こだわって建てられたことがわかる中古住宅などは、建て替えではなくフルリフォームがおすすめです。
フルリフォームのデメリット
⚫︎建て替えに比べると制限される
フルリフォームは間取りの自由度は高いものの、建て替えよりは制限されてしまいます。とくに鉄筋コンクリートの壁式構造や、鉄骨造のブレース構造などは構造壁やブレース(筋交い)に影響されるため、工夫あるプランニングが大切です。構造計算の上、壁を撤去できるケースもありますが、慎重に行う必要があります。
⚫︎劣化が激しいと、補修コストがかかる
構造部分の劣化が著しいほど、リフォーム時に補修コストがかります。あまりにも補修が多すぎると、総費用が建て替えと変わらなくなってしまいます。またプランニング中に理想が膨らみ、いつの間にか予算オーバーしてしまうこともあるため、「コストをかける部分」「コストを抑える部分」とメリハリあるプランニングが大切です。
⚫︎対応できるリフォーム会社が少ない
フルリフォームには深い構造知識と豊富が必要なため、対応できるリフォーム会社が少ないのが現状です。リフォーム会社はたくさんありますが、CRAFTのような「フルリフォーム専門会社」となると、かなり限定されてしまいます。HPのフルリフォーム事例を見たり、実際にフルリフォームされたモデルルームを見学するなどして、設計力・施工力を見極めることが大切です。
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建て替えのメリットとデメリット
建て替えのメリット
●プランの自由度が高い
建て替えは、既存の建物の構造によって制限されることがありません。そのためフルリフォームよりもプランの自由度が高く、「3階建てにしたい」「敷地いっぱいに建物を建てたい」など、幅広いご希望を実現できます。
●資産価値を高められる
耐用年数を過ぎると建物の価値はゼロに近い状態になりますが、建て替えでは住宅を新築するため、建物の資産価値を高めることができます。物件の売却時には有利です。
建て替えのデメリット
●フルリフォームよりもコストがかかる
建て替えは既存の住宅を解体して更地にし、新しい住宅を建てるため、解体費用や基礎工事費用などがかかります。構造によっては「フルリフォームの倍近く」かかることも珍しくありません。
●フルリフォームよりも工期が長い
建て替えは解体期間や基礎工事期間を含めると、住めるようになるまで工期がかかります。仮住まい期間が長く、精神的な負担が長くなる点にも注意が必要です。
●既存のよい部分を残せない
すべてを解体して更地にするため、既存の思い入れある空間も無くなってしまいます。リフォームのように「こだわりの和室を残したい」ということはできません。「よい部分を残しながら一新したい」と考える方には不向きです。
フルリフォームと建て替えのどちらかを迷ったときの判断基準
どちらにもならではのメリット・デメリットがあるフルリフォームと建て替えですが、フルリフォームと建て替えのどちらで対応するべきか迷ったときの判断基準としては、
・予算
・建物の状態
・建物の構造
の、3つです。これら3つの判断基準を踏まえた上で、フルリフォームに向いているケースと建て替えに向いているケースについて、それぞれ解説していきます。
フルリフォームに向いているケース
建て替えは既存の住宅を一度完全に解体してから新しい住宅を建てるので、どうしてもコストがかさみます。とくに頑丈に建てられた鉄筋コンクリート造や鉄骨造の戸建ては、解体にも新築にもかなりのコストがかかります。
そのため、かけられる予算が限られているのであれば、フルリフォームの方がおすすめです。
住宅の状態も判断基準の一つ。基礎部分がそこまで劣化しておらず大規模な補修工事が必要でないのであればフルリフォームが向いていると言えます。
建て替えに向いているケース
予算に余裕があり、住宅の構造による制限を受けずにとことんこだわりたいのであれば建て替えるのがおすすめです。
また、既存の住宅の劣化が進んでいて大規模な補修工事が必要になってしまうようなケースも、フルリフォームで対応するより建て替えで対応する方が適していると言えます。
ご自身で判断できない場合はデザインリフォームCRAFTにご相談ください。ご自宅が建て替えとフルリフォームのどちらがベストかを正直にお伝えさせていただきます。その上で建て替えるべきかどうかを考えてもよいでしょう。
戸建てをフルリフォームした3つの事例
フルリフォームする際にチェックしておきたいのが、実際に住宅をフルリフォームした方の事例です。ここでは、住宅の構造別にフルリフォームの事例を3つ紹介していきます。
事例1. お子さまが独立したタイミングでフルリフォーム
世田谷区にあるご自宅をフルリフォームした事例です。お子さまが独立したタイミングでご依頼いただきました。
2階にあったルーフバルコニーを取り込み、より奥行きの感じられるリビングに。リビングとオーダーメイドのキッチンは、ご夫婦でゆったりと過ごせる空間になるようゆるやかにゾーニングしています。
曲線の美しいダウンフロアや、2階からロフトに上がるためのスケルトン階段など、こだわりの詰まったデザインもポイントの一つです。
事例2. 中古で買った築33年のRC住宅をフルリフォーム
横浜市にある築33年のRC造を購入し、フルリフォームした事例です。
曲線の壁が印象的な物件だったので、リビング・ダイニング間のステップも曲線にしつつ、TVボードも壁の曲線に合わせてオーダーしました。CUCINAでオーダーした木目と大きなカウンター収納が印象的なキッチンや、白で統一したモダンな玄関ホールなども目を引きます。
屋根やベランダの防水やFIX窓を二重にして断熱性能を向上させるなど、住まい全体の性能もアップしています。
事例3. ご実家の鉄骨住宅をフルリフォーム
豊島区にある築45年の鉄骨造の住宅をフルリフォームした事例です。
もともと倉庫として使っていた1階部分を、子世帯の住居にしました。キッチンや浴室など、生活する上で欠かせない住宅設備を新設し、快適に過ごせるよう断熱工事も実施。
建物の構造上撤去できない柱とブレース(筋交い)がありましたが、リビングとダイニングの間仕切りとして活かせるプランを提案し、グレーに塗装することでインテリアにおけるアクセントとして取り入れています。
フルリフォームの費用相場
フルリフォームの費用は既存の状態によるため一概には言えませんが、約30万/㎡はかかります。鉄筋コンクリート(RC)住宅や鉄骨造の「建て替え費用」が5~60万/㎡かかるのに比べると、約1/2の費用に抑えられる点は大きなメリットです。
ただし間取りを大きく変え、内装も設備も大幅にグレードアップするオーダーメードのフルリフォームなら40~50万円/㎡ほどは見ておきましょう。フルリフォーム費用は、リフォーム内容によって幅があります。具体的な費用感を知りたい場合は青山・自由が丘モデルルームの相談会にご参加ください。図面をお持ちいただければ、可能なリフォームプランや概算費用をお伝えします。
〈まとめ〉「フルリフォーム」か「建て替え」かで迷ったらプロに相談しよう
フルリフォームと建て替え、それぞれのメリット・デメリットに触れながら、判断基準などについて紹介してきました。ただ、どちらで対応するべきか判断するのが難しいケースも少なくありません。
もしフルリフォームと建て替えのどちらで対応するべきか迷ってしまうようであれば、ぜひCRAFTにご相談ください。
プロの視点で判断し、最適なプランをご提案させていただきます。
以下の記事では、建て替えとフルリフォームのどちらで対応するべきか迷っている時点でCRAFTにご相談いただき、フルリフォームを選択された方へのインタビューを紹介しているので、こちらもぜひ参考にしてみてください。
お客さまインタビュー「吉村順三の建築を住み継ぐこと」
<著者>上原 宏介
住宅関連のコンテンツ作成を得意とするライター。専門的な言葉や用語が多くわかりづらくなってしまいがちな建築・リフォーム関連の情報をわかりやすくお伝えしています。さまざまな媒体で建築・リフォーム・不動産関連のコラムを多数執筆中。