目次
中古住宅のリノベーションが人気ですが、これまでの「リフォーム」とはどう違うのでしょうか?それぞれの特徴とメリット・デメリット、費用の考え方について解説します。
(作成日2023.3.2 更新日2024.2.2)
リフォームとは? 部分リフォームからスケルトンリフォームまで範囲はさまざま
「リフォーム(Reform)」は、これまでよく使われてきた言葉です。古くなった内装を修繕したり、故障した設備を入れ替えたりすることで、住まいを新しい状態に改良することを意味します。
ごく狭い範囲を施工する「部分リフォーム」から、住まい全体に手を入れる「スケルトンリフォーム」まで、工事の規模はさまざまです。
リノベーションとは? フルリフォーム・スケルトンリフォーム・大規模リフォームと同じこと
近年よく使用されるようになった言葉が「リノベーション(Renovation)」です。内装や設備を入れ替えるという意味ではリフォームと同様ですが、「住む人の価値観やライフスタイルに合わせて中古住宅を一新し、機能性や付加価値の高い空間に再生する」ことを目的としています。
部分ではなく、住まい全体を一新するプランが主流となり、必然的にリノベーション=フルリフォーム・スケルトンリフォーム・大規模リフォームとなることが多いです。
リノベーションとリフォームの違い
リノベーションとリフォームの主な違いは、「工事の規模」と「住宅の性能」の2つです。
工事の規模の違い
リフォームとリノベーションとでは、工事の規模感が大きく異なります。
例えば、「リフォーム」が壁紙の張り替えや便器の交換など比較的小規模なのに対し、「リノベーション」は間取りの変更や配管移動など大規模な工事になります。
構造躯体だけの状態にして大きく作り変える大規模な工事はリノベーション・フルリノベーション・フルリフォーム、スケルトンリフォームとなり、こちらも工事は大規模です。そのため、リフォームよりもリノベーション(フルリノベーション・フルリフォーム、スケルトンリフォーム)の方が費用感も大きくなりがちです。
住宅の性能の違い
劣化した住宅を元の状態に戻す目的で行われる「リフォーム」と住宅を大きく改修する「リノベーション」では、工事後の住宅の性能にも違いがあります。
リフォームでは、劣化した住宅の状態が回復して新築に近い状態にこそなるものの、性能が劇的に高まるわけではありません。
一方リノベーションでは大胆な間取り変更はちろん、断熱材の重鎮やサッシ交換により住宅性能のアップも可能。新築よりも圧倒的に暮らしやすくなります。
リフォームとリノベーション、どちらにするべき?
「リフォームとリノベーションどちらがベストか」は、物件の古さによります。築浅物件(築10年以内)なら既存を活かしながらの部分的なリフォームでもよいかもしれませんが、築古物件(築20年以上)だと劣化が進んでいるため基本はリノベーションで一新するのがおすすめです。
それぞれのメリットデメリットをご紹介していきます。
築浅物件(築10年以内)をリフォームするメリット
工期が短い
築10年以内の築浅物件は、内装や設備の劣化がそれほど進行しておらず、現代のライフスタイルに合った間取りなことが多いです。そのため部分リフォームで済む事が多く、そのぶん工期が短めになります。
中古住宅を購入してから短期間で住み始めることができるため、スケジュールに余裕がない場合にもおすすめです。
工事費用を抑えられる
リフォームの範囲が限定的であれば工期が短くなり、工事費用を抑えることができます。リフォーム費用の内訳に含まれる職人さんの人件費は、作業時間で決まるためです。
完成後をイメージしやすい
間取り変更を伴わない小規模リフォームであれば、部屋の日当たりや空間の印象は大きく変わりません。そのため完成後の暮らしをイメージしやすくなります。
築浅物件(築10年以内)をリフォームするデメリット
住まいを大幅に一新することができない
築浅物件で「既存を活かした小規模なリフォーム」をする場合、ほかの居室を取り込んで空間を広げる、水まわりを移動するといったことはできません。クロスや水回りの交換程度になり、「好みの空間」とまではいかないケースがほとんどです。
中古で買う場合は、物件の選択肢が少ない
東日本不動産流通機構のデータによると、2021年に首都圏の不動産市場に新規登録された中古物件の平均築年数は、中古マンションで27.2年、中古戸建で23.8年でした。築10年以内の物件は少なく、築浅物件にこだわって探すと希望のエリアでは物件を見つけられない可能性もあります。
築古物件(築20年以上)をリノベーションするメリット
フルリノベーションで自分らしい住まいにカスタマイズできる
築20年以上の古い物件なら、フルリノベーションする方が多くなります。フルリノベーションなら、ライフスタイルや価値観に合わせた自由なプランニングが可能。間仕切りのない大空間をつくる、水まわりを移動する、階段を掛けかえる、天井高を上げる、といった間取りの大きな変更がしやすくなります。
中古で買う場合は、好立地で探しやすい
築古物件も選択肢に加えることで選択肢が広がり、立地の良い住宅を見つけやすくなります。住宅は利便性の高い土地から建築されていくため、好立地なエリアほど築年数の古い物件が多くなる傾向があります。
資産価値の目減りが少ない
中古住宅の取引価格は、築年数の経過ともに下落していきます。中古戸建・中古マンションともに、築10年ほどまでは下落率が大きく、その後は緩やかになり、築20年を超えるとほとんど土地代だけの価格に。築古物件は価格が既に下がった状態のため、購入後の資産価値の目減りが少ないです。
築古物件(築20年以上)をリノベーションするデメリット
住み始めるまでに時間がかかる
リノベーションは住まい全体を工事するため、購入してから住み始めるまでに時間が掛かります。リノベーションの内容や住まいの面積にもよりますが、ヒアリングや打ち合わせは2ヶ月ほど、工期は3〜6ヶ月ほどが目安です。
入居までの期間を最小限に抑えるためには、物件探しとリノベーション計画の同時進行がおすすめです。
工事費用が高くなる
リノベーションは住まい全体を一新するため、部分リフォームに比べて工事費用が高くなります。特に水まわりの設備にこだわったり、大幅な間取り変更をする場合は高額になりやすいです。
物件によっては間取り変更に制限がある
リノベーションで自分らしい住まいに生まれ変わらせることができますが、どんな間取りも必ず実現可能というわけではありません。建物の構造上、撤去できない壁があったり、水まわりの大幅な移動が難しかったりするケースもあります。
マンションの場合、たとえ構造上問題がなくても管理規約によって工事の内容に制限が定められていることがあるため、事前の確認が大切です。
断熱性能や耐震性が低い場合がある
築年数の古い物件のなかには、快適性や安全性が高くない建物もあります。断熱補強や耐震工事が必要になり、想定外の費用が掛かってしまうことも。
安心して暮らせるかどうか判断するためには「ホームインスペクション(購入前にリノベーション会社に見てもらう)」「旧耐震基準かどうかを確認する」といった方法があります。
リフォーム・リノベーションの進め方
リフォームやリノベーションの具体的な進め方はそれぞれのリフォーム会社によって異なりますが、CRAFTにご依頼いただいた場合、以下のような流れで進めていくことになります。
1. ご相談
2. 基本プランの作成・見積り
3. 設計契約・詳細打ち合わせ
4. 工事請負契約・着工
5. お引渡し
それぞれの工程の概要と期間の目安については以下のとおりです。
工程 | 概要 | |
---|---|---|
STEP 1 | ご相談 | ・現地調査 ・ヒアリング |
STEP 2 | 基本プランの作成・見積り | ・基本プランの作成 ・概算見積り ・VRの作成 |
STEP 3 | 設計契約・詳細打ち合わせ | ・設計契約の締結 ・詳細の打合せ ・実施設計図の作成 ・予算調整 ・再見積書の提示 |
STEP 4 | 工事請負契約・着工 | ・請負契約の締結 ・本着工 ・中間検査 ・完了検査 |
STEP 5 | お引渡し | ・仕上がりなどの確認 ・設備機器などの取り扱いに関する説明 ・各メーカーの保証書のお渡し ・工事中写真のお渡し |
※STEP1〜3(マンション:約2ヵ月〜 戸建て:約3ヵ月〜)、STEP4〜5(マンション:約3ヵ月〜 戸建て:約4〜5ヵ月)
デザインリノベーションの事例と費用
リノベーションにかかる費用は、住まいの内装や設備、施工面積、既存をどこまで活かすかにより大きく異なってきます。そのため平米単価を出すのはむずかしいのですが、リノベーション会社の施工事例をチェックするのも一つの方法。CRAFTのリノベーション事例から、「リノベーションでできること」「費用感」をつかんでみましょう。
〈リノベーション事例1〉あたたかな木の住まい
リフォーム・リノベーションデザイン実例 #19269
<data>
所在地:東京都 新宿区
家族構成:夫婦+子ども1人
築年数:23年
リフォーム面積:74㎡
工期:3ヶ月
費用:2300万円
南向きの角部屋を購入したLさん。細かく区切られていた間取りは、伸びやかで開放的な空間に。白い木肌のインテリアに柔らかな光が差し込む、やさしい雰囲気の住まいにリノベーションしました。
リビング・ダイニングに隣接していた和室を取り込み、独立型キッチンを対面タイプに変えたことで、広々としたLDKが生まれました。キッチンには移動できないPS(パイプスペース)がありましたが、グレーのタイルを貼り空間のアクセントに。
リビングの床にはオークの挽板をスプーンカットで仕上げたフローリングを採用。際立つ陰影が美しく、足裏からは凸凹の心地よい感触が感じられます。
〈リノベーション事例2〉タワーマンションをシックに
リフォーム・リノベーションデザイン実例 #19176
<data>
所在地:東京都 中央区
家族構成:夫婦+犬2匹
築年数:20年
リフォーム面積:87㎡
工期:3ヶ月
費用:2500万円
お住まいのタワーマンションをリノベーションしたTさん。広さは充分だったものの、間取りがライフスタイルに合っていませんでした。そこで使用していなかった居室を取り込み、25畳のLDKに。閉鎖的だったキッチンを移動して、リビング・ダイニングを見渡せるようにしました。
ダイニングの壁には、タイル貼りのマントルピースとバイオエタノール暖炉を設置。排気設備が不要なため、マンションでも導入できます。
床はウォールナットのフローリング、飾り棚の壁には割肌の石を貼り、シックで落ち着いたインテリアに。リノベーション前からお持ちだったarflexの家具が映えるようにデザインしました。
〈リノベーション事例3〉陰影が美しい大人のくつろぎ空間
<data>
所在地:東京都 江東区
家族構成:夫婦
築年数:15年
リフォーム面積:90㎡
工期:4ヶ月
費用:3,000万円
新築で購入したマンションに15年間お住まいのSさん。ご夫婦でよりゆったりと過ごせるようリノベーションしました。。
使わない部屋を2つ取り込み、キッチンとダイニング、リビングがつながる大空間に。
木や石を中心とした空間にガラスや鉄といった素材が印象的に入り混じりりふぉ、陰影の美しさが際立っています。
元々の白を中心としたオーソドックスな内装からは想像できない、大人のくつろぎ空間に仕上がりました。
〈リノベーション事例4〉異なる質感の木の素材が映えるナチュラルテイストの明るい住宅
<data>
所在地:東京都 渋谷区
家族構成:夫婦+子ども1人
築年数:22年
リフォーム面積:120㎡
工期:4ヶ月
費用:5,500万円
築22年のタワーマンションを購入したIさん。「シンプルモダン」をテーマにリノベーションしました。
元の間取りではキッチンが独立して窮屈な印象だったオープンキッチンにして開放感をアップ。
また、リビングサイドに設けられた小上がりも不要に感じられたため、小上がりを取り込みつつ、キッチンをオープンにして開放的な大空間のLDKに。
明るくてナチュラルなインテリアがお好みだったことから、質感の異なる木をふんだんに使用し、ナチュラル感を演出しています。
屋内配線の電磁波対策やインナーサッシによる暑さ・寒さ対策、家中の水をすべて浄水してくれるセントラル浄水器の導入など、機能性を向上させた点も、こちらの事例における重要なポイントの一つです。
〈リノベーション事例5〉あたたかな木の住まい
<data>
所在地:東京都 港区
家族構成:夫婦+犬1匹
築年数:13年
リフォーム面積:150㎡
工期:4ヶ月
費用:6,400万円
都内のタワーマンションにお住まいのKさん。よりゆったりと過ごせるように、リノベーションしました
もともとは3LDKと部屋数の多い物件でしたが、寝室とコンパクトな書斎だけの間取りに変更。
独立キッチンをオープンにしたこともあり、LDKに面した大きな窓からたくさんの光が差し込む、明るくゆったりくつろげるLDKになりました。
寝室~WTC~洗面室~LDKと邸内を大きく回遊させるようにしたことで、ムダのないスムーズな生活動線も実現しています。
〈まとめ〉住まいにこだわるならやっぱりリノベーションがおすすめ
リフォームとリノベーションの違いをご紹介しました。築年数が古い物件ほど、リノベーション(フルリフォーム・スケルトンリフォーム)で住まい全体を一新するのがおすすめです。
築古物件をリノベーションするメリット
・間取りや設備を自由にカスタマイズできる
・築古物件も選択肢に入れれば好立地の物件を見つけやすい
・資産価値の目減りが少ない
築古物件をリノベーションするデメリット
・住み始めるまでに時間が必要
・工事費用が高めになる
・物件によっては施工内容に制限がある
・耐震性能や断熱性能が低い場合がある
リノベーションはコストも時間もかかるけれど、やはり部分的なリフォームよりも理想の住まいに近づけやすいです。住まいにこだわりのある方は、できればリフォームではなくリノベーションを選んだ方が、満足して暮らせるのではないでしょうか。
CRAFTではオーダーメイドのリノベーションプランを自社設計施工でご提案しています。ぜひお気軽にご相談ください。
<著者>CRAFT 編集部
一級建築士・二級建築士・インテリアコーディネーター・一級建築施工管理技士・二級建築施工管理技士・宅地建物取引士が在籍。さまざまな知識を持つプロフェッショナル集団が、リノベーションや物件購入についてわかりやすく解説します。